F1速報

  • 会員登録
  • ログイン

F1 Topic:過去に苦い経験を積んだイスタンブールで、ふたりのチャンピオンが見せたベテランらしさ

2020年11月27日

 2020年F1第14戦トルコGPでは雨で濡れた難しい路面コンディションのなか、ふたりの王者のベテランらしいいぶし銀のレースを披露した。


 そのひとりはルイス・ハミルトン(メルセデス)で、もうひとりはセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)だ。ハミルトンは8周目に交換したインターミディエイトタイヤでチェッカーフラッグまで走りきって優勝。ベッテルはファイナルラップでチームメイトのシャルル・ルクレールが2番手のセルジオ・ペレス(レーシングポイント)にオーバーテイクを仕掛けて失敗したのに乗じて、4番手からひとつポジションを上げて、表彰台を手にした。


 ふたりが今年のトルコGPで落ち着いたレース運びができたのは、過去に味わった苦い経験が糧になっていたと言ってもいい。


 ハミルトンにとっての苦い経験とは、2007年の中国GPだ。ハミルトンは、トップを走行しながらもタイヤ交換のタイミングを見誤り、インターミディエイトタイヤをベルトが見えるまでひどく摩耗させてしまう。その状態でピットに向かったため、ピットロード途中のカーブを曲がりきれずにコースアウト。グラベルにはまってリタイアとなった。

2007年第16戦中国GP ルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)
2007年第16戦中国GP グラベルにはまってリタイアしたルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)


「あのとき、僕はタイトル争いをしていたように、技術的には十分なレベルにあったと思う。足りなかったのは知識と経験だった」とハミルトンは振り返り、こう続けた。


「当時はまだチームに『ピットインするべきだ』って言える力がなかった。あのリタイアで僕は結果的にタイトルを失ったから、本当にいい勉強になった」


 じつはこの年のトルコGPでもハミルトンはタイヤトラブルに見舞われていた。残り16周でタイヤ表面のゴムが剥離する『チャンキング』という現象によって最終的に右フロントタイヤをバーストさせ、上位争いから一転、5位に終わった。

2007年F1第12戦トルコGP ルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)の右フロントタイヤが“チャンキング”に見舞われ、バーストしてしまった
2007年F1第12戦トルコGP ルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)の右フロントタイヤが“チャンキング”に見舞われ、バーストしてしまった


 その翌年のトルコGPでは周りが2ストップを選択するなか、3ストップで2位を獲得した。


「3ストップを選択したのは、ブリヂストンが昨年のようになってしまう恐れがあったから、エンジニアから安全策を採るよう薦められたんだ。優勝できなかったのは残念だけど、いいレースができたと思う」(ハミルトン)


 この年、ハミルトンは最終戦のファイナルラップでの劇的なオーバーテイクでタイトルを獲得したが、それを可能にしたのは、2007年から2008年にかけてエンジニアとのコミュニケーションを密にしていたからだった。


 その後もハミルトンはエンジニアとのコミュニケーションを大切にし、成長していった。それが一際光ったのが、今回のトルコGPだった。


「インターミディエイトに履き替えた直後はセブ(ベッテルの愛称)にもついていけなくて、どうなってしまうかのかと思ったけど、その後グレイニング(ささくれ摩耗)がひどい状態を過ぎたら、グリップが戻って、『イケる!!』って直観したんだ。だから、チームと話し合いながら、ステイアウトすることにした」(ハミルトン)

2020年F1第14戦トルコGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)が優勝、7度目のタイトルを獲得
2020年F1第14戦トルコGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)が優勝、7度目のタイトルを獲得


 ベッテルもまた、イスタンブール・パーク・サーキットでは、過去に苦い経験を積んでいる。2010年のチームメイトのマーク・ウエーバーとの接触事故だ。トップを走行していたウエーバーに、2番手のベッテルがオーバーテイクを仕掛けサイド・バイ・サイドになった直後、ベッテルのマシンがわずかにウエーバーの方に動き、2台は接触。ベッテルはスピンを喫してリタイア、ウエーバーはレースを続行したものの、3位に終わった。


 この接触でレッドブルのドライバー同士の関係は冷え込み、ポイントのつぶし合いが始まり、タイトル争いがその後混迷する原因を作ってしまう。その原因を作ったウエーバーとの接触事故を起こした場所が、イスタンブール・パーク・サーキットのターン12。それは、今回のトルコGPでルクレールがペレスに仕掛けてミスした、あのコーナーだった。それをベッテルは後方で見ていた。

2010年F1第7戦トルコGP ターン12で接触したレッドブルのセバスチャン・ベッテルとマーク・ウエーバー
2010年F1第7戦トルコGP ターン12で接触したレッドブルのセバスチャン・ベッテルとマーク・ウエーバー


「シャルルと接していると、ときどき彼のなかに、自分がいるように感じることがある」とトルコGPのレース後、ベッテルは語った。相手のなかに自分を感じるというのは、もうひとりの自分を意識することである。これを心理学では『ホムンクルス』(頭の中の小人)と言い、自分の行動をコントロールして危機やトラブルから回避することに役立つと考えられている。


 トルコGPのファイナルラップでペレスのインに飛び込んだルクレールを見て、ベッテルは10年前の自分を思い出したのだろうか。


「イスタンブールは僕にとって、特別な場所。ここでは、いろんなことを学んだ。シャルルとはこれまでいろんなことがあった。でも、彼はいいヤツだし、僕ももう成熟していると思う」


「今回のレースは、本当に厳しかった。しかも、ファイナルラップでああいうことを経験すれば、打ちひしがれるのは当然だろう。でも、彼がこれまでに成し遂げてきたことを考えれば、それが彼の将来に悪い影響を与えるとは思っていない」(ベッテル)


 2007年にF1にデビューしたハミルトンとベッテル。13年という歳月はルーキーだったふたりをこんなにも大きく成長させていた。

2020年F1第14戦トルコGP表彰台 3位セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、優勝ルイス・ハミルトン(メルセデス)、2位セルジオ・ペレス(レーシングポイント)
2020年F1第14戦トルコGP表彰台 3位セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、優勝ルイス・ハミルトン(メルセデス)、2位セルジオ・ペレス(レーシングポイント)

2020年F1第14戦トルコGP 優勝し7度目のタイトルを獲得したルイス・ハミルトン(メルセデス)をセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が祝福
2020年F1第14戦トルコGP 優勝し7度目のタイトルを獲得したルイス・ハミルトン(メルセデス)をセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が祝福



(Masahiro Owari)




レース

5/24(金) フリー走行1回目 20:30〜21:30
フリー走行2回目 24:00〜25:00
5/25(土) フリー走行3回目 19:30〜20:30
予選 23:00〜
5/26(日) 決勝 22:00〜


ドライバーズランキング

※エミリア・ロマーニャGP終了時点
1位マックス・フェルスタッペン161
2位シャルル・ルクレール113
3位セルジオ・ペレス107
4位ランド・ノリス101
5位カルロス・サインツ93
6位オスカー・ピアストリ53
7位ジョージ・ラッセル44
8位ルイス・ハミルトン35
9位フェルナンド・アロンソ33
10位角田裕毅15

チームランキング

※エミリア・ロマーニャGP終了時点
1位オラクル・レッドブル・レーシング268
2位スクーデリア・フェラーリ212
3位マクラーレン・フォーミュラ1チーム154
4位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム79
5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム44
6位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム20
7位マネーグラム・ハースF1チーム7
8位BWTアルピーヌF1チーム1
9位ウイリアムズ・レーシング0
10位ステークF1チーム・キック・ザウバー0

レースカレンダー

2024年F1カレンダー
第8戦モナコGP 5/26
第9戦カナダGP 6/9
第10戦スペインGP 6/23
第11戦オーストリアGP 6/30
第12戦イギリスGP 7/7
  • 最新刊
  • F1速報

    Vol.5 第5戦中国GP & 第6戦マイアミGP