【レースの焦点】果てしないサバイバル戦を制したリカルドとエンジニアの底力/F1第6戦モナコGP
2018年5月29日
でも、それだけではなかった。MGU-Kが働かないということは、ブレーキング時のエネルギー回収による第二のエンジンブレーキのような制動も働かず、小さなブレーキディスクに頼らなくてはならない。
「リヤブレーキがすごく過熱するから、ブレーキバランスを6〜7%もフロントに寄せなければならなかった。普通ならレース中に変更するブレーキバランス1〜2%程度だから、ものすごく大きな違いだ」
早めにアクセルを閉じてブレーキを守ることが必要だった。加速でロスするぶん、パワーが影響しないコーナーでは2番手のセバスチャン・ベッテルを引き離さなければならないが、タイヤに余計な負担をかけてはならない──。手元に残った強みは、車体性能とタイヤ性能の持続性だけだったから。
果てしなく精神を消耗する、長いレース。それでもトラブル発生から15周ほど経過すると、ドライバーとエンジニアの底力が顕著に表れ始めた。
「(ウルトラソフトでステイアウトしている)マックスのペースをアップデートしてくれると役に立つんだけど」とドライバーがたずねると、「(1分)18秒9をキープしてる。43周走った段階で」とエンジニアが答える。そこから、ドライバーは燃料や路面変化による影響を考慮して、タイヤを維持できるペースを計算する。
「ベッテルは1秒後方、ハミルトンはその3秒後方。(キミ)ライコネンはそこからさらに3秒後方」
大きな傷を承知のうえで、まるで健全なレースのようにレニーが伝える。“レースの展開を読み取る”ことがリカルドのレースクラフトであることを熟知しているからだ。
残り10周。「ゴールまで、これが最後の周回遅れになるはず」と、レニーが伝える。不確定要素がひとつ減った。
残り7周のバーチャルセーフティカー(VSC)は、リカルドよりも2番手ベッテルのペースを乱した。
残り3周。「こうした方が……」と提案しかけたレニーを珍しく遮って、リカルドが「分かってるよ、バディ」と答えた。
チェッカーフラッグを受けたリカルドが、高々と拳を掲げた。ステアリングを持ち替えながら、すべてのオフィシャルポストに“やったよ!”と喜びを伝える。フラッグマーシャルが色とりどりに勝者を讃え、撤去班が拍手を送り、ポスト長はセーフティカーが入らなかったレースに誇りを感じる。
“抜けないモナコ”は、多くのドライバーにとって退屈なレースだったかもしれない。ショー的ではなかったかもしれない。でも、ボランティアで集うオフィシャルたちの目標は常に、公国の小さなコースでレースを成立させること。伝統のグランプリに不可欠な彼らの努力が、時にはセーフティカーを寄せつけない。
「トラブルを拡大させずに1ラップを通過するたび、それは僕にとって小さな勝利だった」とリカルドが表現した。トラブル発生から50周の間、小さな勝利が重ねられた結果の、大切な勝利。
「We won Monaco!」には、語り尽くせないたくさんの意味が込められている。
XPB Images
(Masako Imamiya)
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1位 | マックス・フェルスタッペン | 110 |
2位 | セルジオ・ペレス | 85 |
3位 | シャルル・ルクレール | 76 |
4位 | カルロス・サインツ | 69 |
5位 | ランド・ノリス | 58 |
6位 | オスカー・ピアストリ | 38 |
7位 | ジョージ・ラッセル | 33 |
8位 | フェルナンド・アロンソ | 31 |
9位 | ルイス・ハミルトン | 19 |
10位 | ランス・ストロール | 9 |
1位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 195 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 151 |
3位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 96 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 52 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 40 |
6位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 7 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 5 |
8位 | ウイリアムズ・レーシング | 0 |
9位 | BWTアルピーヌF1チーム | 0 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第5戦 | 中国GP | 4/21 |
第6戦 | マイアミGP | 5/5 |
第7戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5/19 |
第8戦 | モナコGP | 5/26 |
第9戦 | カナダGP | 6/9 |