マクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は開幕戦オーストラリアGPを、ふたつの視点でジャッジ。
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「終わってみれば、去年と同じような結果」とレース後、ホンダの長谷川祐介総責任者は、開幕戦に対して厳しい評価を下した。確かに結果だけを見れば、昨年は11台完走中、2周遅れの11位でフィニッシュ。今年は16台完走中、1周遅れの14位でチェッカーフラッグを受けた。いずれも完走したのはジェンソン・バトンで、トップにラップ遅れにされたうえに、後方集団に沈んだままレースを終えたという点で、似たようなレース結果となってしまった。
しかし、昨年はレース後半は燃費がきつく完走するのが精一杯だったのに対して、今年はスタート直後から中団でライバルたちとしっかりと戦っていたという点で、昨年とは違う。つまり、結果は同じようなレースだったかもしれないが、内容は2015年と2016年ではまったく違っていた。
例えば、スタート直後の1周目から10番手を走行していたフェルナンド・アロンソである。1回目のピットストップ後のアロンソのポジションは15番手だったが、それはアロンソの後方からスタートしたドライバーの中でソフトタイヤを装着してスタートし、まだピットストップしていないドライバーがいたからである。アロンソがグティエレスと接触事故を起こしてリタイアする直前の16周目終了時点での順位は次の通りである。カッコ内はその時点でのピットストップ回数
1位 セバスチャン・ベッテル(1回)
2位 ニコ・ロズベルグ(1回)
3位 キミ・ライコネン(1回)
4位 ダニエル・リカルド(1回)
5位 ルイス・ハミルトン(1回)
6位 マックス・フェルスタッペン(1回)
7位 カルロス・サインツJr.(1回)
8位 フェリペ・マッサ(1回)
9位 バルテリ・ボッタス(0回)
10位 ロマン・グロージャン(0回)
11位 ニコ・ヒュルケンベルグ(1回)
12位 エステバン・グティエレス(0回)
13位 フェルナンド・アロンソ(1回)
14位 セルジオ・ペレス(1回)
15位 ジョリオン・パーマー(1回)
16位 マーカス・エリクソン(1回)
17位 フェリペ・ナッセ(1回)
18位 ジェンソン・バトン(1回)
19位 パスカル・ウェーレイン(1回)
20位 リオ・ハリアント(1回)
21位 ケビン・マグヌッセン(1回)
もし、赤旗が出ていなければ、まだピットストップをしないでアロンソの前を走っていた3人(ボッタス、グロージャン、グティエレス)をアロンソがかわして再び10番手に浮上し、レース中盤はペレス、ボッタスらとポイントを賭けて戦っていただろうと思われる。
スーパーソフトからソフトにタイヤを交換したアウトラップ後のアロンソのラップタイムは1分32秒553(14周目)。同じタイミングでタイヤをスーパーソフトのニュータイヤに変えたリカルドよりも早かった。勝負の世界に「たら・れば」を言うのは禁物だが、もしアロンソがあそこでクラッシュしていなければ、ポイントは十分狙える位置にいた。これは希望的観測ではなく、事実である。
また序盤はソフトタイヤのペースに苦しんだバトンも、レース後半にミディアムを履いてからはポイントを争っていたドライバーたちと同じくらいペースを戻していた。バトンがミディアムに交換したのが30周目で、トロロッソの2人がミディアムに履き替えたのは31周目と32周目とほぼ同じタイミングだった。バトンのピットストップ2周後のラップタイムが1分31秒685で、サインツの2周後は1分32秒709、そしてフェルスタッペンは1分32秒614でピットアウト2周後を走行している。つまり、バトンのペースはダブル入賞を果たしたトロロッソよりも、ミディアムでは速かったことになる。
もちろん、メルボルンではストレートエンドでのスピード不足を露呈してしまったという課題も残ったが、それほど悲観すべき結果でなかったことも確かである。開幕戦を見る限り、ポイント争いを実力で出来るポテンシャルは、今年のマクラーレン・ホンダには備わっていると思う。
(Text : Masahiro Owari)