ロシアGPのパドックで最も熱い話題は、レッドブルの「2016年パワーユニット問題」だった。この問題は、いまだ決着を見ていない。
現時点で可能性が低いものも含めて、レッドブルには4つの選択肢がある。ひとつは、フェラーリの2015年型パワーユニットを搭載するというもの。なぜ今季型なのか、フェラーリ側は「生産体制の問題」としているが、それは表向きの理由で、本音はレッドブルのマシン性能を恐れていることは火を見るより明らか。パワーサーキットであるソチでも、レッドブルのダニエル・リカルドはリタイアするまで4番手を走行しており、戦略が奏効した面があるとは言え、あなどれないライバルであることは間違いない。現在フェラーリは、レッドブルに対して2015年型パワーユニットでさえ、出し渋っているという状況だ。フェラーリがトロロッソに2015年型パワーユニットを供給する話がまとまったという噂もあるが、これも不透明な部分が多い。
ふたつめは、ルノーと復縁すること。ルノーのマネージングディレクター、シリル・アビデブールは「レッドブルとの契約は依然として残っている」と認めているが、フランス人ジャーナリストは「現場レベルでOKだとしても、カルロス・ゴーンがノーと言うだろう」と否定的な見解を示している。
みっつめはホンダ──しかしホンダは2016年に向けてパワーユニットに変更を加える可能性が高く、新しいパワーユニットが完成するのは来年のテスト開始間際になると考えられる。そのような状況を車体とのマッチングを重視するレッドブルが良しとするとは思えず、可能性は低いだろう。
すでに早期に交渉が決裂したメルセデス、そして他の3メーカーも現時点でレッドブルへの供給に対して前向きではない。そこで浮上しているのが4つ目の選択肢、レッドブルのF1からの「撤退」である。しかしレッドブルが撤退すれば、トロロッソも同じ道を歩むことになり、もし来季2チームが消滅するとなれば、F1が被るダメージは計り知れない。バーニー・エクレストンは、どんな手段を講じても、それだけは阻止するはずだ。
すでにエクレストンがレッドブルとルノーの仲を取り持つため、ゴーン氏に接触したという報道もある。また、ロシアGPのパドックでは、エクレストンとフェラーリ・チーム代表のマウリツィオ・アリバベーネが話し合う場面も目撃されている。果たして、エクレストンはレッドブルを救済するために、どんな手を講じているのだろうか。そしてレッドブルの意向だけでは、もはや何も決められない状況ではあるが、レッドブルはどんな道を選ぶのだろうか。
(尾張正博)