カナダGP後、ヤルノ・トゥルーリは、ロバート・クビカのクラッシュを目の当たりにし、その後、レースに集中できなかったと語った。彼は、自分はレーシングドライバーだが、その前にひとりの人間なのだと強調している。
27周目のヘアピンへのアプローチで、クビカのBMWザウバーがトゥルーリのトヨタのリヤに軽くヒット、クビカのマシンは舞い上がり、コンクリートウォールに突っ込んだ後、回転しながらコースに舞い戻り、大量のデブリを撒き散らしながら、さかさまに着地した。
「何が起こったのか分からなかった」とレース後に取材陣に語るトゥルーリは、動揺の色を隠せなかった。
「僕はただ自分のラインを守って走っていたんだが、後ろから軽く接触されたのを感じた。接触があったのは確かだと思うけれど、どうしてそうなったのかは分からない」
「その前に彼を見た時には、彼は僕の左側にいた。僕の右リヤにヒットしたということは、彼はその後で逆側にラインを変えたんだろう。もしくは、ミスをしたかだね。次の周にそこを通りかかると、マシンが横転していて、傍にメディカルカーがとまっているのが見えた」
「本当に心配で、彼が無事なのかどうか知りたかった。数周にわたってセーフティーカーの先導下で走ったが、メディカルカーはずっとそこにあった。全く情報が入らず、おまけにタイヤが終わってきてしまった。ドライバーとしては走り続けなければならないが、ああいう状況ではずっと仲間のドライバーのことばかり考えてしまうものだ。仲間があれほどの大クラッシュをしたんだ、いい気持ちはしないよ。何周も何周も、事故のことばかり考えていた。もちろん僕はドライバーだけど、その前に人間なんだ。ショックだったよ」
最後のピットストップの後、トゥルーリは集中力を失い、タイヤバリアに突っ込み、残り12周のところでレースを終えた。しかし、この日起こった出来事を考えると、自分がリタイアに終わったことについて悲しむ気持ちはなかったと言う。
「ひどいレースだった。次から次へと問題が出てきた。最後のピットストップに呼ばれたのは、自分としては予想外のことだった。最後まで走りきれる燃料があると思っていたんだ。びっくりしてしまっていたので、ピットレーンを出た時に、ブレーキングが足りずにタイヤバリアに突っ込んでしまった。でも正直言って、ロバートのことがあまりにショックで、レースのその他のことは気にならないよ」
「彼には早く戻ってきてほしい。そしてこの経験を、このコースをはじめあちこちのストリートサーキットでの今後のレースに役立てなければならない。どこも安全だが、それはロバートが遭ったようなアクシデントさえなければの話だ。このことについては考えないといけないね。いろんなことを予測することはできるし、ドライバーとしても安全向上のために手を尽くしている。でも、このアクシデントを見て、ここにはかなり悪いところがあることが分かった。見てのとおり、ひどい結果になったからね」