先週末のモナコGPで1-2フィニッシュを達成したマクラーレン・メルセデスの“チームオーダー”発令の容疑は、昨日行われたFIAの発表により公式に晴らされた。
レース終盤に“スローダウン”を指示されたというルイス・ハミルトンのレース後のコメントに端を発した一連の調査の結果、FIAの報告書は同チームに規則違反の事実はなかったことを明言した。
「ボーダフォン・マクラーレン・メルセデス(以下マクラーレン)とそのドライバーとの無線交信、およびFIAのオブザーバーのレポート、チームから提出されたデータを詳しく調べた結果、2007年モナコGPにおけるマクラーレンの行動は完全に合法であり、何らかの処分を行う必要がないことは明らかである」とFIAはその報告書で述べた。
FIAは次のような前提に基づいてこの結論に至った。
・モナコではセーフティカーが出動しなければ2ストップ戦略が最適であり、セーフティカーが出動した場合は1ストップの方が有利になる可能性もある。
・過去5回のモナコGPのうち、4回はセーフティカーが出動した。
・現在のルールの下では、1ストップか2ストップかの選択は予選最終ピリオドの前に行われなければならない。
・予選終了後に行われたFIAによる車重計測の結果から、マクラーレンがハミルトンの車両に(フェルナンド)アロンソの車両よりも5周分多く燃料を入れていたことは明らかである。
・これによりハミルトンは、彼の最初のスティントの間にセーフティカーが出動した場合には1ストップに切り替えることも可能だった。
・実際にはセーフティカーは出動しなかった。
・モナコにおいてマクラーレンは他のどの車両よりも明らかに速かった。
「どのチームにとっても、第一の目標はチームのドライバーのいずれかを勝たせることである」とFIAの報告書の記述は続いている。
「これが達成可能であれば、彼らはもう1台の車両を確実に2位でフィニッシュさせようとするだろう。アロンソの第1スティントではセーフティカーが出動しなかったが、ハミルトンへの給油が必要となるまでの5周の間にセーフティカーが出動するリスクは小さいながらも確実に存在した。その場合、彼は隊列の後方につかなければならず、40周目前後に給油を行うと予想される完全な(選択的ではないという意味で)1ストップ戦略を採った車両に対してきわめて不利な状況となる。ハミルトンのエクストララップ(注:アロンソより長く走れる周回)の間にセーフティカーが出動した場合、40周目前後にはすでにセーフティカーは退去していると考えられる」
「同様の理由から、ハミルトンは2度目のピットストップでも早めに呼び入れられた。セーフティカーが出動するか否かにかかわらず、これによって彼の2位を確実なものにするためである。ハミルトンの前にいる車両がチームメイトでなければ、マクラーレンはセーフティカーに関するリスクを冒してでもピットストップで順位を逆転することを狙い、燃料が完全になくなるまでハミルトンを走らせたかもしれず、おそらくそうしたはずである。しかし、彼らには自チームの車両を抜かせるために、セーフティカーに関するリスクを冒さなければならない義務はない。実際、そうすることは愚かな判断であっただろう」
「ドライバーが大きなリードを持っているとき、チームがドライバーに対してスローダウンを指示するのは通常よく行われていることである。これはテクニカルトラブルやその他の問題のリスクを最小化するためだ。また、同じチームのドライバー同士が互いに相手に危険を及ぼさないよう指示することも通常の慣行であり、全く妥当なことである。マクラーレンは他の全ての車両に対して大きなアドバンテージを持っていたため、最良のチーム戦略を遂行することができた。彼らはレース結果の意図的な操作と見なされるようなことは何も行っていない」