トヨタ・モータースポーツ有限会社(以下TMG)は、パナソニック・トヨタ・レーシングのチーム代表兼TMG会長である冨田務が、6月末日で引退することを発表した。後任には、現在TMG副会長である山科忠が就任する。
63歳になる冨田務は、2003年からTMGの拠点であるドイツ・ケルンのTMGに駐在してきた。長い海外での職務を終えたトヨタ上級役員の通例通り、シーズンの半ばではあるが日本へと戻り、トヨタのグループ企業において、新たな活躍が期待されている。
冨田務はモータースポーツ以外の活動に関する責任者となる見込みであるが、通例通り取締役会と株主の承認を受けた後正式に発表される予定である。
冨田務はトヨタのモータースポーツ活動の原動力として、1987年以来モータースポーツエンジンの責任者として関わってきた。 その中にはその後世界タイトルを獲得した世界ラリー選手権や、表彰台フィニッシュを果たしたル・マン24時間レースなども含まれる。
彼はまた、北米のシングルシーターレースシリーズに新たに参戦する際の責任者でもあった。この活動では、2002年に、CARTシリーズでのシリーズタイトルを獲得、そして翌2003年には、IRLシリーズにおいて、デビュー年ながらインディ500レースで初勝利を挙げた。
冨田務は1996年にトヨタの取締役に就任し、全てのモータースポーツ活動に関する指揮をとった。そしてF1のパナソニック・トヨタ・レーシング設立における重要な役割を果たした。チーム代表兼TMG会長という立場で、成功の可能性を秘め、希望に燃えるチームであるパナソニック・トヨタ・レーシングの設立に携わった。
冨田務は「2002年からトヨタのフォーミュラ1プロジェクトに関わってきたが、この期間は私のキャリアの中でも、最もチャレンジングでエキサイティングであった。実際にはF1参戦に関する詳細な準備は、我々がデビュー戦のグリッドに着く4年前から始められた。私はトヨタのF1に関わる全ての人々、即ちスポンサーや、F1への挑戦に当たって私を歓迎し、手助けし、力づけてくれたTMGの皆に感謝したい。私は山科忠にこのプロジェクトを発展させ育てつづけてくれるだろうと確信している。私は、ケルンのファクトリーが蓄積し、進歩を続けている技術力と有能なチームメンバーによって、いずれ近いうちにトヨタのF1での初勝利を祝えることを楽しみにしている」と語った。
冨田務の任務は、2006年12月に副会長としてTMGに加わった山科忠が引き継ぐ。
山科忠はまた、トヨタの常務役員としてモータースポーツ部とモータースポーツ推進室の責任者でもあり、彼がTMGへ加わって以来、2007年シーズンへ向けた技術開発はさらに強化された。
山科忠は「冨田会長は、その経歴の中で、トヨタF1活動の草創期を含め、数あるトヨタのモータースポーツ活動に関わってきた。そして、過去20年以上に渡ってトヨタのモータースポーツ活動における中心的な人物であった。私は彼の後任に就くことを誇りに思い、喜んでいる。私は、冨田会長が過去数年に渡って目標としてきた挑戦を、彼と同様に勇気をもって、また精力的に独創性を発揮させることによって継続して行く。それは、世界で最も競争が厳しいモータースポーツであるF1において、何とかして勝てるチームになるためである。冨田会長はトヨタF1の歴史の一部であり、我々は今後も彼とは密に関わっていく」と語った。