パット・シモンズが開幕戦前夜に予測したとおり、オーストラリアGPでのタイヤ選択においては、大多数のチームやドライバーが同じ結論に達し、同様の戦略を採用することになった。
ブリヂストンがF1における単独タイヤサプライヤーとなったことで、シーズンを通してさまざまなコンパウンドが使用されるものの、各チームのマシンに合わせた独自のタイヤ開発は行われないことになった。さらには、すべてのグランプリにおいて、各ドライバーが1レース中に用意された両コンパウンドを使用することを義務づけられたが、シモンズは、その手法もすぐに統一されてくるだろうと指摘していた。
「レース中に2種類のタイヤを使うことは、それほど大きな変化ではない」と開幕戦前に語ったシモンズ。
「その影響はレースごとに変化するだろうし、ソフトタイヤがそのサーキット、あるいは全般的なコンディションの中で十分に機能するかによって、重要性は変わってくる。他の戦略的要素と同様に、レースを組み立てる上での最適なタイヤの使い方があるはずで、大部分のチームはすぐにその最適なポイントを探し当てるだろう」
レース終了後にブリヂストンが発表した全チームのタイヤ戦略一覧によれば、最初のスティントでソフトタイヤを選択したドライバーはわずか3人、またレース中盤で使用したドライバーはごく少数であり、シモンズの予測に近いものになった。
ルーベンス・バリチェロとフェリペ・マッサはレース序盤にソフトタイヤを使い、後方グリッドからの巻き返しに成功した一方で、3番グリッドからスタートしたニック・ハイドフェルドは、同じくスタート時にソフトタイヤを使用したものの、その戦略は裏目に。早めに行ったピットストップ後に順位を落とすことになってしまった。これについて、ハイドフェルドは次のように語っている。
「始めにソフトタイヤを履くという戦略が、よりリスキーだということは承知していた。でも、最初のピットストップ後に渋滞にはまる危険もあった。それで、こういう結果になってしまった」
一方、グリッド最後方からのスタートとなったマッサは、ポイント獲得を図るために1ストップ作戦を選んだ。これは同時に、レースの半分をソフトタイヤで走らなければならないことを意味したのだが、最後は6位でゴールを迎え、戦略が功を奏する結果となった。
しかし出場車両のほとんどは、よりハードなミディアムタイヤをスタート時に選択し、その後の第2スティントでも同じミディアムタイヤと交換、ソフトタイヤはゴールまでの短いスティントに残す戦略を取った。この作戦の唯一の欠点は、キミ・ライコネンとフェルナンド・アロンソの両者がレース後に明らかにしたように、おおよそのポジションが決まり、ドライバーは車をいたわるよう指示されるため、チームがソフトタイヤの耐久性について多くを学べないということだった。
なお、クリスチャン・アルバース、スコット・スピード、ロバート・クビカなど、割り当てられたタイヤを使い切ることができなかったドライバーも数名いた。またごく僅かながら、レース中盤で耐久性の劣るソフトタイヤを使用したドライバーもいたが、そのうちのアレックス・ブルツはリタイアに、ジェンソン・バトンも下位に終わっている。
2種類のタイヤの見分けを付けるというブリヂストンに与えられた課題については、ソフトタイヤの方に白い印をつけることで落着した。