ここ5年間、何度かピンチヒッターを務めた以外は、レースシートから遠ざかっていたアレックス・ブルツ。もう一度F1でレースをしたいという情熱は、まだ薄れてはおらず、その忍耐がいずれ報われることになるかもしれない。2008年からディレクシブで走ることになるのではとの憶測が高まっているのだ。
オーストリア出身のブルツは、2006年シーズンにはマクラーレンからウイリアムズへ移籍したが、マクラーレンとのつながりはいまだにある。特に顕著なのは、ディレクシブという共通のスポンサーを持っていることだ。モナコに本拠を置く日本企業のディレクシブは、モータースポーツへの関わりを急速に拡大しており、昨シーズンはGP2のドライバーたちを支援し始めた。マクラーレンの「Bチーム」計画とのつながりをウワサされ続けているが、特にマクラーレンの新車MP4-21のサイドポッドにロゴが入ってからは、ますますその憶測が強まっている。
ブルツにもスポンサードを行っているディレクシブは、モータースポーツへの関わりを、F1やGP2だけでなく、F3やフォーミュラ・ニッポンにも拡大しており、将来は新たにF1チームを率いることになるのではとのウワサがささやかれている。ただし、2008年より前にそれが実現する可能性はまだ低い。トップカテゴリーであるF1を統括しているコンコルド協定があと2年で変更されることになっており、少なくとも表面上は、新興のプライベートチームの参入が今より容易になりそうだからだ。そうなれば、ディレクシブのスポンサードとマクラーレンの援助を受ける新チームが、多数の新規参入チームのひとつとなることも考えられる。たとえばプロドライブも、その時点までエントリーを遅らせることを決めているようだ。
芳賀美里氏が率いるディレクシブでは、元ベネトンのPR担当だったジュリア・ブルツがアドバイザーを務めている。ジュリアは、ベネトン時代にブルツと知り合い、現在は妻となっている。ブルツはもともとドライバー候補になると見られていたが、ジュリアが関わっていることでいっそう、選考の際に筆頭にあげられるのではないかという憶測が強まっている。
2008年のF1シーズンが始まるときには34歳になるブルツだが、彼は非常に有能な開発ドライバーであることを証明してきており、それゆえマクラーレンで長年働き、今年からまたウイリアムズで働くことになった。そして、ファン−パブロ・モントーヤの代役として出場した昨年のイモラで、3位を獲得したことから証明されたように、今でも手堅いレースパフォーマンスを発揮することができる。というわけで、GP2やF3やFニッポンからF1へ飛び込んでくる若手ドライバーと組ませるのに、ブルツは理想的な存在となりそうだ。しかし、ブルツは、そのようなことを考える必要が出てくるのはずっと先のことだと述べている。
「(チームがF1参戦を)先延ばしにするのはもっともなことだ」とブルツはオーストリアのクライネ・ツァイトゥング紙に対して語った。
「今は、F1チームの運営には3億ドルかかるけれど、2年たてば、たったの1億ドルですむようになる。それだけでも、待つ価値があるだろうと思うよ」