F1を引退した際には、ドライバーからデスクワークに職を変えるなんてまっぴらだと語っていたエディー・アーバインだが、今では、自分はちゃんとしたチームボスになれると考えている。
モナコGPが開幕してから、アーバインはかなり話題の的になっていた。ジョーダンのオーナーになって間もないアレックス・シュナイダーから、チームを買収するのではないかというのだ。アーバイン自身が金を出すということはなさそうだが、モナコGP恒例の金曜の休日にパドックに現れ、裕福そうなロシア人をつれて様々なチームを訪問して回っていた。
自分の元雇用主だったジョーダンからチームの運営を引き継ぐ意志があるのかどうかを聞かれたアーバインは、はっきりとは答えなかった。しかし、例の調子で、チームボスのなすべきことはドライバー時代に十分見てきたと語った。
「やればできると思うね」とアーバインはBBCラジオ・ファイブ・ライブに対して語った。「ジャン・トッドのような最高の例も見てきたし、フォード自動車のような最悪の例も見てきた。フォードのやり方のマズさを見たことのほうが、ずっと勉強になったと思う。トッドは、すべてのことに素晴らしい配慮をしていたからね。トッドは、かなり理想的な仕事ぶりだった」
「人は自分の過ちからしか学べないものだ。そしてフォードは、どうするのが間違いかということを見せてくれた。ジャガーでフォードのやり方を経験したことで、はるかに目を開かせてもらったよ。だが、どちらの経験も必要だね」
アーバイン自身は、フェラーリとジャガー時代のサラリーに加えて賢明な投資も行っており、金に不自由はしていない。だが、ジョーダンへの支払いの大半を受け持つと見られているのは、ロシア人のゲストの方だ。
アーバインは、ルーツタム・タリコ氏を大勢のパドックの知り合いに紹介したが、やはりターゲットにしているのはジョーダンだけだと見られている。アーバインは、今回モナコに来たのは「実地調査」のためだというが、タリコがシュナイダーにチーム買収を持ちかけることは、非常に有力視されている。シュナイダーは、今季開幕前にジョーダンチームを購入したばかりなのだが。」
grandprix.comによれば、タリコは8億7千万ドルの財産を持っていると見られ、現在はロシアン・スタンダード銀行の頭取を務めているという。しかし、彼はまた“やり手”との評判もあり、ソビエト連邦の崩壊後にチョコレートとアルコールをロシアに輸入して財をなしたという。1998年に、タリコは独自のブランドのウォッカ(ロシアン・スタンダードという名称の)を発売し、これはたちまちロシア国内でのベストセラー・ブランドとなった。その後、タリコは金融業界へと転向して、築いた財産で銀行を買収し、ロシアン・スタンダード銀行と改称した。
アーバインとエディー・ジョーダンは、常にお互いを賞賛し合ってきているが、今回も、F1での役割について聞かれて、ふたりともお互いを高く評価する発言をした。
アーバインは、ジョーダンがシュナイダーにチームを売却したときに、残念に思ったと述べた。「F1にはカラーが必要だし、エディー・ジョーダンがいないのは残念だ。彼は、カラフルなキャラクターのひとりだったからね」
一方、ジョーダンも似たような賛辞を送り、アーバインはお堅いパドックに“ライフスタイル”ともいうべきものを再びもたらしてくれるだろうと述べた。
「F1は、エディー・アーバインのようなキャラクターを必要とする状況になっている」とジョーダンはBBCに対して語った。「F1につきものだった、スタイルやパーティやライフスタイルといったものが、今はまったく欠けているんだ。エディーこそまさに、それを提供できる男だ。F1はもともとの活気や興奮や真の幸福感を失いつつあると思う。マニュファクチャラーはF1を金のかかるフォーミュラにしてしまった。彼らはもっと自制しなくてはならない。プライベートチームとマニュファクチャラーチームの間にははっきりした断絶がある」
「エディー・アーバインは、そのための触媒になりうるだろう。彼が買収によって、チームオーナーとしてF1に戻ってくるなら、私個人としては、観衆の一番前で歓呼を送るよ」