FIAのマックス・モズレー会長は、モナコのプレスランチの席で、“バーニー・エクレストンがFIAでF1のビジネス面を担当するポストに就くかもしれない”と発言して、ジャーナリストたちを驚かせた。
英ガーディアン紙によれば、モズレーは、F1をたったひとりの人間が運営するのは荷が重すぎるのではないかと懸念しており、エクレストンが就任できるような新しいポストの創設を提案したということだ。
モズレーは次のように説明した。「私はやるべきことが山ほどあって手一杯だ。バーニーに加わってもらえれば、現在の状況にとてもうまく対処できるだろう。彼の職務は、統括団体の立場から、特別にF1の問題に対処することだ」
モズレーの認めたところによると、エクレストンはまだそのオファーを受託したわけではないという。エクレストンは、統括団体で力のあるポジションに就くか、それともF1における自身のビジネス上の利益を保持し続けるかで、悩むことになるだろう。もしエクレストンがFIAの役職を受け入れるなら、現在F1のビジネス面を運営している会社の支配権を手放さねばならないはずだ。FIAは数年前の独占禁止法に関連する訴訟で、商業的な利権を手放すことを強いられたが、エクレストンの一連の会社にF1をプロモートする権利を委譲したのだった。
「私は、これがなすべきことなのかどうかを判断しようとしている。しかし、マックスの提案を真剣に検討していることは確かだ」とエクレストンは認めた。「その仕事はある意味でかなり魅力的だと思う。F1のあらゆる要素を扱うというのはね。だが、私はこのスポーツの商業的な面から足を洗わなくてはならなくなるだろう」
「問題は、マックスがFIAでなにもかもこなすのは無理だということだ。彼は自動車産業に関することに、かなりの時間を費やしている。だから、各チームはいつもマックスのやり方に文句を言っているが、私の方が少し扱いやすいと思うかもしれないね……」
モズレーとエクレストンが組むのは、過去にもあったことだ。この2人は、有名な1982年の騒動の際に、当時のFIA会長ジャン−マリー・バレストルに対する反乱を企て、それが元のコンコルド協定の成立につながったのだった。F1と、5つのマニュファクチャラー連合が提案するライバルシリーズとの間で争いが続く中、このパートナーシップの復活はまだ実現していないようだ。
エクレストンは引き続きF1の持ち株会社であるSLECで、4分の1の株を保有している。ただし最近、残りの株を保有する3つのドイツの銀行との訴訟で、発言権を減らされる判決が出た。3銀行は、保有株を売却するのか、F1の将来に発言権を持つために保有を続けるのかはわからないが、もしエクレストンが離脱するなら、厄介な荷物を預かることになってしまうかもしれない。事業を運営するのに最適だと思われた人物が去っていくとわかれば、金融機関側は彼に持ち分を売る決断をすることも考えられる。
エクレストンがFIAに移るなら、マニュファクチャラー連合がF1の商業面を支配する道を開くことにもつながる。マニュファクチャラーは、3銀行の持ち分を購入する話し合いに入っているというウワサもあった。しかしいずれにせよ、エクレストンが、各チームとマニュファクチャラーの対処しなくてはならない相手であるのは変わりないだろう。
モズレーはこう付け加えた。「彼は誰よりもこのビジネスをよく知っている。彼の会社と、さらに3銀行などとの話し合いによって、私たちは彼の後継者を認めなくてはならない。その結果として、私たちは商業面を非常に賢明にとりしきってくれる人物を手に入れ、なおかつ、F1を熟知しつつFIAの立場から物事を行ってくれる人物も手に入れることになるだろう」