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【佐藤琢磨インタビュー】現役を続けることで若手に伝えたい「プロとしての生き方」

2025年10月14日

 インディ500への挑戦を続けながら、2019年からはホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)のプリンシパルに就任し、精力的に若手レーシングドライバーの育成に取り組む佐藤琢磨。そんな琢磨が、フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ(FRECA)に参戦するホンダの育成ドライバー加藤大翔をサポートするべく10月初頭にドイツ・ホッケンハイムに現れた。そこで琢磨に、海外レースを戦う若手ドライバーのサポート状況や自身の活動について聞いた。

──自身も現役ドライバーとして活動しつつ、日本国内外問わず若手育成ドライバーをサポートしていますが、そのうち海外レースのサポートはどれくらいの割合ですか?


「各シリーズで一応50パーセントを目指しています。国内レースに参戦中の選手もいますので、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権(SFライツ)、FIA-F4選手権に加えて、スーパーフォーミュラとスーパーGTも含まれています。さらにHRSでのサポート、FFSA主催のフランスF4やFRECAなど、育成ドライバーの研鑽の場は多岐に渡りますが、可能な限り現地で平等にサポートできるように心掛けています」


「また、自分のインディ500の活動がある関係で、その期間はアメリカ滞在となります。去年のルーティンをみると6月から欧州を軸にしつつ、単発で日本に帰国してスクールを見ながらシーズンが進んでいくという感じでした」


──HRSだけでもかなりの人数の若手ドライバーがF1を目指しているとのことですが、そのなかで光る原石を見付けるのは至難の業ですか?


「難しいですよね。期待値を数値化することはできません。そのため、現状でそのドライバーのパフォーマンスや、それまで得てきた経験値というのを加味しながら、取り組んでいます。レースに対して、あるいはそれに対する姿勢を見て『このドライバーは伸びるだろうな』というドライバーは支援して行きたいと思っています。とはいえ、ラップタイムの速さというところは絶対値なので、そこで一番を取りつつも、そのドライバーの良さを伸ばしていくための環境作りに取り組んでいます」


「特にヨーロッパは、フォーミュラレースへの参戦開始年齢の若年化の波が強いです。そのため、日本から1年でも早く飛び出し、実際に海外のレースを経験して海外でやっていく、という取り組みでは岩佐歩夢が最初の成功例で、それに加藤や佐藤凛太郎が続いています」


「加藤はフランスF4でシリーズチャンピオンを獲得し、FRECAへステップアップしたことは自然な流れでした。今年はFRECAのルーキーとしてはとても頑張っています。ただ目を見張るようなリザルトというところにはまだ手が届いておらず苦労していますが、それも彼自身の成長という意味では凄く大事な経験になってきますので、その辺を僕はすごく気をつけて見ています」


「本人がただ速く走るだけではなく、なぜうまくいかないのかを紐解いて分析できる力が必要で、レースは他のスポーツのように日々練習できる訳ではありません。今はシミュレーターがあるとはいえ、限られた時間のなかで前へ進むためには、ただ走るだけではなく、クルマへの知識だったり、エンジニアとどうコミュニケーションを取り、メカニックを含めてどうチームを動かしていくのかという力も必要とされます。ドライバーは強い求心力を兼ね備えつつ、あるいは身につけながら成長していってほしい。それが自分たちが掲げている育成のテーマです」


「加藤は今、そのど真ん中で頑張っている最中です。彼自身が足りないところはまだまだあるのですが、それに早く気づいてひとつひとつ克服してほしいと思いますし、他のホンダ育成の若手ドライバーもそれぞれが、日々葛藤しながら頑張っている途中です」

FRECAホッケンハイム戦で加藤大翔をサポートする佐藤琢磨

──加藤選手は今季のFRECAにおいて、エンジニアやメカニックとマシンを作り上げていく上で、彼らと密接になるコミュニュケーション能力の大切さを実感し、不慣れな点に直面した際に琢磨さんのサポートのありがたさを痛感しているようですね。


「僕自身がジュニアフォーミュラで苦労しながらF1まで行ったのと同じように、彼にも数多くの経験をしてほしいし、時には痛みも必要だと思っています。ただ無意味に同じ事を繰り返して苦労する必要はないと思っています。そこで助言・サポートというかたちで『こういうやり方もあるよ』という風にヒントを与えています。ただ僕が彼のすべてのレールを引くわけではなく、あくまで彼のやり方を尊重しつつ成長を見守っています」


「実は僕も彼のエンジニアとは直接すごく密に話していて、僕とエンジニアがやろうと思えばいろいろなことができてしまうのですが、あえて僕たちからは提案しません。エンジニアサイドには『こんなこと言ってくるかもよ』と話して準備だけはして貰って、あとは加藤本人に考えさせ、エンジニア達と自分自身でコミュケーションを取りながらマシンを作っていく。その過程を僕は側で見守りながら、必要に応じてサポートするということを今はしています」


「そういう経験は何度も経験していかないと突然にはできません。加藤はおそらく僕が帯同していなくても、ひとりで頑張ると思います。ただ同じ日本人で細いニュアンスは日本語で話せるし、僕がいることで安心感というものあるのではないかと思っています。だからそういう環境を大いに活用してのびのびやって貰いたいですね。この『のびのび』というのは、僕がいることによるプレッシャーを感じつつもパフォーマンスに繋げて貰いたい、という意味を込めています」

佐藤琢磨HRCエグゼクティブアドバイザーと加藤大翔
2025年FRECA第5戦ポール・リカール 佐藤琢磨HRCエグゼクティブアドバイザーと加藤大翔

「モータースポーツにおいて、チーム内のドライバーが毎年どんどん変わっていくのが常です。そんな環境下でドライバーにもしも何か困りごとや不利があった際、チームは最終的にチームの利益を考えるのが常です。だから、そういう時にはチームの立場も理解できますが、僕はドライバーサイドに立ち、時にはチームと戦わなきゃいけないので、そういう意味で現場に足を運ぶ事は大事ですね」


「今はリモートでほとんどのことができます。ただサポートするだけならそれでも良いのですが、もしも何かあった時には実際に現場にいないと実質的なサポートができません。去年も実際に(フランスF4の)シーズンの半分に来てみてそう思いましたし、特にチャンピオンシップに勝つにも、その裏では凄いバトルにもなりました。レーススチュワード(審査委員)と話す際にはありとあらゆる素材を持って行き、実際にペナルティを覆したりと……。このようなことは特にヨーロッパではなかなかやって貰えないようなところですが、僕が実際に経験してきたことでもあるので、そこはサポートをできると思っています」


──加藤選手は来季のことはどうなるか分かりませんと話しましたが、今後の目標とされていることは?


「現状(取材はFRECAホッケンハイム戦)の加藤の状況をお話すると、既に旧型F3マシンのテストを先週に始めていて、ホッケンハイム戦後にはスペインのヘレスに飛んで引き続きテストをします。まだFRECAのシーズンは終了していませんが、やはり次のステップを見据えてFRECAドライバーたちは既に活動を始めていますので、加藤もそういう意味ではできる範囲で次へ向けてやっていければ良いなと思っています」

FRECAホッケンハイム戦で加藤大翔をサポートする佐藤琢磨


(Midori Ikenouchi)


レース

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