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クルーの懸命な作業に報いるハジャーの表彰台獲得。チーム全体に大きな伸び代が見えた2連戦/レーシングブルズコラム

2025年9月15日

 レーシングブルズは2025年F1第15戦オランダGPでアイザック・ハジャーが表彰台を獲得し、大いに湧いた。


 今シーズンを通して中団グループトップを争うポテンシャルを発揮し、自分たちがいい仕事をすることができればどのサーキットでも中団トップを争えるとアラン・パーメイン代表が語ってきたことは本コラムでもご紹介してきたが、オランダGPではまさにその通りの戦いができたと言えた。

 予選Q3で各車がタイムアタックに苦戦するなか、ハジャーが唯一自己ベストを更新する完璧なアタックで4番グリッドを獲得したのが大きかった。決勝は「4番手キープを目標に」という現実的なアプローチで臨み、ハジャー自身はノーミスの手堅いレースをした。実際には22周目にシャルル・ルクレール(フェラーリ)に先にピットインをされた時点で、1.1秒のギャップで走っていたハジャーは翌周カバーしてもアンダーカットされることは確実だった(1.2秒差のフェルナンド・アロンソに角田裕毅はアンダーカットされている)。しかしルイス・ハミルトン(フェラーリ)がクラッシュしてセーフティカーを出したことで、ハジャーの4番手は救われたのだ。


 その後はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の後ろに食らいつき、フェラーリ勢とメルセデス勢の自滅もあってライバルがいなくなり、そして最後にランド・ノリス(マクラーレン)のリタイアで3位表彰台が巡って来た。多分に運にも恵まれたが、その運を掴み獲ることができたのは予選から好走を見せ、決勝でも「その場所」にいたからだ。

アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)
2025年F1第15戦オランダGP表彰式 3位に入賞したアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)

 チーフレースエンジニアのマティア・スピニはこう語る。


「コンペティティブだったのは間違いないが、予想していた以上だったのも確かだ。特に決勝においては非常にいいペースを発揮することができた」


 スピニいわく、オランダGPではふたつの要素が絡み合っての好パフォーマンスと好結果だったという。


「ハンガリーでもそうだったようにコース特性が我々のマシンに合っていたということと、予選でも決勝でもアイザックが非常にいい仕事をしてくれたことのコンビネーションによるものだったと言うべきだろう。アイザックは予選で完璧なアタックラップをまとめ上げたことで4番グリッドスタートを掴み獲って、上位からスタートできたのでトラフィックに悩まされることもなくレースができ、レースペースのよさを結果に繋げることができたんだ」

アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)
2025年F1第15戦オランダGP予選 アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)

 チームにとっては、この表彰台は喜びもひとしおだった。なぜなら、金曜日にはパワーユニット(PU)に2度のセンサートラブルが発生し、1日で2回という異例のパワーユニット交換作業を強いられていたからだ。


 ホンダの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーはこう語る。


「詳しいことは申し上げられないのですが、高電圧系のセンサーに気になる値が見えたので、安全上の観点からマシンを止めてもらいました。FP1とFP2の間に全交換、FP2の後にも全交換で、どちらも予防措置でしたが金曜に2回PU交換をしていましたから、チーム側もホンダ側もクルーにとっては相当なハードワークをやったので、ああいう結果に結びついたのはすごく嬉しい思いでした。アイザックが結果を残してくれたのはすごくありがたかったですし、6号車のクルーたちとも『苦労が報われたね』と話していました。PU関連のトラブルで走行時間を失ってしまったなかで下位に沈んだら申し訳ないところだったのですが、最高の結果を残してくれたので我々としても救われたような気分もあります」


 FP2でほとんど走ることができなかった厳しい状況下だったにもかかわらず、クルーのハードワークに答えたハジャーとチームの絆はさらに強まったはずだ。

アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)
2025年F1第16戦イタリアGP アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)

 続くイタリアGPでも実はトラブルが発生し、予選でQ1敗退に終わったため安全策としてハジャーじゃPUを交換してピットレーンスタートで決勝に臨んだ。そこからハードタイヤで淡々と走り、デグラデーションの小さいレース展開が有利に働いた面もあったものの、終わってみれば10位入賞。ハジャーはまたしてもチームの地元で嬉しいポイントを持ち帰った。


「車体側のメカニックは(予選2時間後の)カバーオンまでやって、今日もまた朝(決勝5時間前)からでしたが、PU側のメカニックは(載せ換える)PUを車体側に渡したらその裏ではスペア用のPUを仕立て直さなければならないんです。普通はカバーオンすると帰りますが、今回はチーフメカニックも含めて全員でそこから遅くまで作業をしました。メカニックとしては相当大変でしたので、その作業の後にポイントを獲ってくれたのは我々としても非常に嬉しいです」(折原GM)


 ロードラッグ仕様の専用空力パッケージを持ち込むモンツァでは、昨年まではとてもではないが勝負はできなかった。しかし今年のVCARB 02は空力効率が向上しており、高速サーキットでも充分に戦える。

リアム・ローソン(レーシングブルズ)
2025年F1第16戦イタリアGP リアム・ローソン(レーシングブルズ)

 だがフロントタイヤのグレイニングに課題を抱えるレーシングブルズとしては、モンツァでは上海やカナダなどと同じようにマシンの実力を出し切れない部分もあった。決勝でのタイヤマネージメントを考慮すると、どうしても予選パフォーマンスを犠牲にせざるを得ない。そのなかで2台揃ってQ1でアタックをまとめきれずに下位に沈んでしまったのだ。


 フロアボディ底面を中心に空力効率アップの改良を加えた新型フロアとサイドポッドを持ち込んだが、用意できたのは1台分だけであり、これはリアム・ローソン車に搭載された。


 ローソンは最後尾18番グリッドからソフトでスタートして9周目にピットインし、ガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)とオリバー・ベアマン(ハース)、角田裕毅(レッドブル)をアンダーカットすることに成功。つまりこの時点で実質7番手をボルトレートやベアマンと争っていた。


 9〜10周古いタイヤであったがゆえに25周目のターン1でベアマン、27周目のターン1で角田に抜かれ、そこから立ち上がり重視のライン取りで角田のトウに入ってターン4で再び並びかけたところで接触。このインシデントについては審議対象となっていないが、ターン4手前で角田はローソンに1台分のスペースを残しておらず、これが接触の起因となったことは間違いない。ローソンが逆転の可能性が薄いなかで再び仕掛けたことへの賛否もあるだろうが、角田が言うような「僕とポイントを争っていない」わけではなく、仕掛けること自体には何らルールにもマナーにも反するところはなかった。

角田裕毅(レッドブル)とリアム・ローソン(レーシングブルズ)
2025年F1第16戦イタリアGP 角田裕毅(レッドブル)とリアム・ローソン(レーシングブルズ)のバトル

 いずれにしても、来季のシートを争うなかでポイント獲得が最優先であるはずのふたりが接触して入賞のチャンスを失ったことは、どちらにとっても大きなマイナスだったはずだ。ローソンはオランダGPでもカルロス・サインツ(ウイリアムズ)と当たって入賞のチャンスを逃しているだけに、不完全燃焼の2連戦となってしまった。


 それはレーシングブルズ全体にとっても同じことで、オランダGPでは表彰台を獲得するポテンシャルがありながらダブル入賞ができず、イタリアGPでも結果を最大化できたとは言い難い。この2戦でランキングは7位に浮上し6位アストンマーティンにも1点に迫ったが、チーム全体としてまだまだ伸びしろがあることは間違いない。

リアム・ローソン(レーシングブルズ)
2025年F1第16戦イタリアGP リアム・ローソン(レーシングブルズ)


(Text : Mineoki Yoneya)


レース

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フリー走行2回目 結果 / レポート
9/6(土) フリー走行3回目 結果 / レポート
予選 結果 / レポート
9/7(日) 決勝 結果 / レポート


ドライバーズランキング

※イタリアGP終了時点
1位オスカー・ピアストリ324
2位ランド・ノリス293
3位マックス・フェルスタッペン230
4位ジョージ・ラッセル194
5位シャルル・ルクレール163
6位ルイス・ハミルトン117
7位アレクサンダー・アルボン70
8位アンドレア・キミ・アントネッリ66
9位アイザック・ハジャー38
10位ニコ・ヒュルケンベルグ37

チームランキング

※イタリアGP終了時点
1位マクラーレン・フォーミュラ1チーム617
2位スクーデリア・フェラーリHP280
3位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム260
4位オラクル・レッドブル・レーシング239
5位ウイリアムズ・レーシング86
6位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム62
7位ビザ・キャッシュアップ・レーシングブルズF1チーム61
8位ステークF1チーム・キック・ザウバー55
9位マネーグラム・ハースF1チーム44
10位BWTアルピーヌF1チーム20

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