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キャデラックF1参戦に沸く北米大陸、冷静な欧州。コルトン・ハータのF2参戦は「アリ」か「ナシ」か?

2025年9月3日

 NTTインディカー・シリーズのスターであり、TWGモータースポーツが運営するアンドレッティ・グローバルでレースを戦うコルトン・ハータは、将来のF1参戦に向けてスーパーライセンスポイント獲得を目指し、来季2026年はFIA F2へ移籍するとのうわさが後を絶たない。2026年のキャデラックF1チーム新規参戦に沸く北米大陸では、当然のように『アメリカ出身ドライバー待望論』が根強く、一方のヨーロッパでは「ハータがこのうわさにどう反応し、その信憑性について何を示唆しているのか」。また「キャデラックF1が可能性を否定しているにもかかわらず、なぜうわさは消えないのか」を対極的な立場から論じている。

■現状はスーパーライセンス取得に4ポイント足りない

 キャデラックは先月末、F1デビューシーズンに向けセルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスという経験豊富なコンビを起用することを決定し、リザーブやテスト、さらにシミュレーターなどの開発業務を担うドライバーのポストは「後日アナウンスすることになる」と明らかにした。


 テネシー州のナッシュビル・スーパースピードウェイで開催された今季のインディカー最終戦を終え、ランキング7位でシーズンを終えたハータは、スーパーライセンスポイントを4ポイント獲得。2024年シーズン2位での30ポイントと、2023年9位の2ポイントに加えたかたちだ。F1スーパーライセンスを取得するには計40ポイントが必要となり、現在36ポイントで4ポイント足りない計算となっている。


 その第17戦ナッシュビルと前後して、ハータのFIA F2移籍を報じた北米の総合モータースポーツサイト『racer.com』は、F1直下の登竜門であるF2では「チャンピオンシップの上位3名に必要な40ポイントが与えられ、上位6名全員が2桁ポイントを獲得する」との条件を説明。さらに注目すべきは、チャンピオンシップの全レースがF1の前座として開催される点であり、今季は24のグランプリ会場のうち14の週末でレースが併催され、さらに“ハイ・デグラデーション”のピレリタイヤも使用されていると続けた。


 そのハータ本人は2015年と2016年にヨーロッパでレースに出場した経験があるものの、F2やF3の経験はなく、改めてインディカーで9度の優勝経験を持つハータをF2に送り込むことで、シリーズに関する知識を深め、チームと緊密に連携する機会を得ることができ、将来スーパーライセンスを取得した場合にレースシートを獲得する準備を整えることができる、とした。


 また同誌は、今季F2に参戦する複数のチームがハータの起用について打診されていると報じ、合意に至ったかどうかは明らかではないものの、アンドレッティはハータのF2移籍を承認する前にインディカーで代役を確保する必要があり、直近にもチーム・ペンスキー離脱を表明したウィル・パワーがその候補のひとりだと報じている。


 キャデラックF1チームを率いるTWGモータースポーツのCEO、ダン・タウリスは、先のレースドライバー発表の際に「アメリカ人ドライバーがF1に参戦できる道を確保することは我々にとって重要であり、今後もその実現に向けて取り組んでいく」と発言。これがハータのうわさを推進する強い原動力となっている。

キャデラックは先月末、F1デビューシーズンに向けセルジオ・ペレス(写真)とバルテリ・ボッタスという経験豊富なコンビを起用
コルトン・ハータは、2025年NTTインディカー・シリーズでランキング7位に終わった
2022年にはマクラーレンF1のリザーブドライバーも勤めていたコルトン・ハータ

 その一方で、イギリスの新進気鋭専門ウェブサイトである『The Race.com』では、来季ハータがF1スーパーライセンスを取得しようとするのは当然の動きだとしつつ、ボッタスとペレスには2027年までの契約があり、彼らを放出する方法(契約解除条項やチームオプションなど)を見つけない限り、レースシートに空きが出るのは早くても2028年になると指摘する。


 マイケル・アンドレッティがチームを率いていた当時、F2参戦の可能性についても議論されていたが、先の8月25日(ドライバー発表の日)にハータをF1に送り込む可能性について問われたタウリスCEOは「彼が来年F2に参戦しないことを確認したい。今日お伝えしているのは、そのことではありません」と、その可能性を明確に否定していた。


 それでもうわさは消えず「勢いを増している」とした同誌は、ダンパー開発や風洞実験など各チームが開発の方向性を持ち、マシンの性能を最大限に引き出す方法を持っているインディカーに対し、変更できる項目も少なく挙動がはるかに固定化されているF2では「チームやマシンを間違えると、適応できない場合に地獄のような1年を過ごすことになる」と指摘する。


 その一例として、ホンダは他のシリーズからトップドライバーを定期的にF2に送り込んでいるが、F2からF1に昇格して成功したドライバーよりも、夢破れてパドックを去ったドライバーの方が多い点を挙げる。


 さらにトヨタも2023年スーパーフォーミュラ王者の宮田莉朋をF2に送り込んだが「世界でもっとも競争の激しいシングルシーターシリーズのひとつ(SF)でチャンピオンを獲得したにもかかわらず、宮田はF2で19位に終わった。別のチームに移籍して2年目を迎えた今でさえ、残り4ラウンドで14位にとどまっている。これは宮田や他の転向ドライバーを軽蔑しているのではなく、むしろその逆だ。このシリーズ(F2)が極めて熾烈であることを浮き彫りにしているだけだ」と評した。


 また、欧州を中心としたサーキット習得の点でも、優秀なドライバーは昨今のシミュレーターで数時間でこの障害を乗り越えるとし、習得曲線がはるかに大きいのはタイヤだが、それもF1とF2では同銘柄でも大きく異なる。


 そしてこの移籍が理にかなわない主な理由のひとつとして、来季F1のFP1に4回出場するだけで、ハータは必要なスーパーライセンスポイントを確保できる点も挙げる。キャデラックは彼のインディカー参戦に合わせて好きなだけFP1に起用できるうえ、すでに今季のインディカーはシーズンが終了したことから、F1シーズンの残り9戦でこの特権を得るべく、既存チームに金銭を支払う必要があるものの、ここで早々に課題をクリアするチャンスもある。


 これらを考慮すると、ハータのF2参戦はキャデラックがこれを本当に支持しているのであれば、キャデラックにとっても奇妙な動きと言え、メリットはF1とは異なるピレリタイヤを習得できることだけ。一方のデメリットは「山ほどある」と断じている。

マシンの性能を最大限に引き出す方法を持っているインディカーに対し、F2では変更できる項目も少なく挙動がはるかに固定化されている
ボッタスとペレスには2027年までの契約があり、レースシートに空きが出るのは早くても2028年になる
来季F1のFP1に4回出場するだけで、ハータは必要なスーパーライセンスポイントを確保できる


(autosport web)


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