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【中野信治F1コラム/プレ開幕戦】不安が残るレッドブルと一発が速そうなマクラーレン。車体挙動に見る勢力予想
2025年3月10日
2025年開幕戦オーストラリアGP直前に、バーレーン・インターナショナル・サーキットを舞台に行われた3日間のF1プレシーズンテストでは各チームの新車が入念な走りこみを行いました。各マシンの挙動や勢力図について、元F1ドライバーでホンダの若手育成を担当する中野信治氏が独自の視点で振り返ります。
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3日間のプレシーズンテストにおいて総合トップタイムを記録したのは、フェラーリからウイリアムズに移籍したカルロス・サインツでした。新シーズンに向けた変化の現れかもしれないという期待感もありますが、2024年シーズンのコンストラクターズ選手権9位のウイリアムズですから、プロモーションも兼ねて燃料搭載量も軽めの状態でタイムを出しに行ったようにも見えました。
そういったこともあり、プレシーズンテストのタイムがそのまま2025年シーズンの勢力図を示しているかとは言い切れません。とはいえ、クルマのプラットフォーム自体が悪ければ燃料少なめでアタックをしたとしてもいいタイムは出ませんから、ウイリアムズが最速タイムを刻めたという事実は、昨年のマシンからの進化の証明だと感じます。
それにサインツが非常に乗れていましたね。以前から集中力の高まった際のサインツは今季のF1でもトップ3に入るドライビングを披露してきました。ドライバーにとって、チームを移籍した際に求められる能力のなかでも大切なことは、まずは最大限の集中力を発揮することです。環境がすべて変わるなかで求められる集中力は、普段のレースとは比べ物にならないレベルです。
そんな状況下でサインツのいい部分が際立ったようにも見えました。サインツの走りに刺激を受けたチームメイトのアレクサンダー・アルボン、そしてキャリアも速さもあるドライバーがふたり揃ったウイリアムズが、今後どのような活躍を見せてくれるのかは楽しみですね。サインツ加入という刺激を受けて、ウイリアムズのチーム全体の士気が上がり、物事が良い方向へと歩み出す。そういった流れが生まれているように感じたプレシーズンテストでした。
■ハミルトンが総合2番手もピーキーさが残るフェラーリ
移籍組ではルイス・ハミルトン(フェラーリ)が最も注目を集めています。ハミルトンはプレシーズンテストでサインツに続く総合2番手タイムを残してはいますが、走りを見る限りではフェラーリのクルマに手こずっているという印象です。フェラーリの新車『SF-25』は、前年型マシンでも見せた少しピーキーな挙動が残っているように見えました。
当然、フェラーリがどのような走行計画を立ててテストに臨んでいたのかはわかりません。その上でクルマの動きだけを見ると、フェラーリのピーキーさがすんなりと消えているようには思いませんでした。ここからハミルトン自身のドライビングも含めて、アジャストしてクルマを仕上げていくとは思いますが、その入り口は決して楽ではなさそうだという印象です。
■テスト初日は好調見せるもタイムが伸びなかったレッドブル
一方でマックス・フェルスタッペンが総合5番手、リアム・ローソンが総合11番手タイムを刻んだレッドブルについては、なかなか見えにくい部分が多いです。初日のドライバー陣のコメントは高評価で、タイムもまずまずでした。ただ、2日目、3日目を迎えるにつれて『あれ?』と思ってしまうほどタイムが上がってきませんでした。レッドブルのコンストラクターズ奪還は決して楽な道ではないかもしれません。
クルマの挙動がフェルスタッペンが好むオーバーステアなタイプではありませんでしたし、かといって一発の速さがあるようにも見えません。それゆえにレッドブルは困難な状況なのかと思うところですが、ドライバー陣のコメントは決してネガティブではない。彼らのコメントがどこまでが本当なのかは窺い知れないため断言はできませんが、挙動を見る限りではそこまで速いクルマには見せませんでした。
それだけに、『昨年型よりは速いかな?』というのが現時点での印象です。ここからクルマをまとめてくればレッドブルはトップ争いを繰り広げるでしょうし、逆に外してしまった場合は2024年シーズンのコンストラクターズ3位という位置から浮上も叶わず、さらに順位を落としてしまう可能性もゼロではないと思います。
■一発のマクラーレンと高い安定性を見せたメルセデス
では、プレシーズンテストを見て、一番速いクルマはどこだったかと申しますと、一発の速さはマクラーレンです。とはいえ、このマクラーレンもそこまで良い挙動だったわけではなく、『安定性に欠ける部分はあれどタイムは出してきた』という感じです。挙動が特に安定したわけではないのにタイムが出るという点ではフェラーリも一発は出せるクルマです。
対して、落ち着いた挙動だったのがメルセデスでした。2025年は彼らが上位争いに食い込んでくるのでしょう。王道で速いマクラーレン、コースを選びますが速いフェラーリとレッドブルの上位争いに対し、それらを凌ぐ安定性を持ったメルセデスが入ってきてもおかしくはありません。
ロングランはもちろんのこと、車高を下げてもポーパシング(バウンシング/フロア下の空力の変動で車体の上下動が大きくなりフロアが路面に接地する症状)が見られません。ここ数年抱えていた問題を2025年型マシンで解決の方向に持っていくことができたのではないかと感じます。苦手な部分がなくなったメルセデス、特にハミルトンに代わってエースドライバーとなるジョージ・ラッセルは優勝争いに絡んでくると予想しています。そのラッセルの走りに新人アンドレア・キミ・アントネッリがどこまでついて来れるかという点も注目しています。
■角田裕毅とレーシングブルズ、そして中段勢の戦いと期待のルーキーたち
今季は角田裕毅とアイザック・ハジャルがステアリングを握るレーシングブルズのマシンは、兄弟チームのレッドブルに少し似ていて、フロントが素直に入ってくれないかつ、裕毅のドライビングに少し合わない部分があるのかなという印象です。そのため、一発のスピードでは出遅れるかと思いますが、ロングランに関しては決して悪いことはありませんでした。
平均したラップタイムはトップチームには劣りつつも、タイヤのデグラデーション(性能劣化)の影響は極端ではないという印象です。また、ロングランに集中してテストに臨んでいた様子を見るに、クルマがある程度煮詰まっている証拠でもあると思います。
中段勢のうち、プレシーズンテストではウイリアムズとアルピーヌが速さを見せていたと感じています。また、ハースもプレシーズンテストではロングランに徹し、レーシングブルズ同様にクルマを煮詰めてきている印象です。レーシングブルズにとってはこれら3チームとの中段争いを制し、しっかりと毎戦ポイントを持ち帰れるかが今年も焦点となりそうです。
また、ハースについては小松礼雄チーム代表の就任2年目ということで、真価の問われるシーズンだと思います。礼雄さんが率いるハース、そして裕毅の乗るレーシングブルズもいる中段勢の入賞をかけた戦いは、今年も見どころでしょうね。
そして、やはり2025年シーズンはフル参戦1年目となるルーキーが5名参戦するということで、フレッシュな若手たちの走りも楽しみです。5名はそれぞれFIA F2などで結果を残してきましたが、F1はデビューするチームによって、その才能が開花するか、または才能が開花するスピードが速いか、遅いかが大きく変わってしまう世界です。
そのため、一概には言い切れない部分はありますが、それでもアントネッリには注目です。キック・ザウバーからデビューするガブリエル・ボルトレートはFIA F3、FIA F2と2年連続でチャンピオンを獲得してきた良いドライバーですが、プレシーズンテストで見たキック・ザウバーのクルマの動きは厳しいもので、ボルトレートにとっては苦しい1年目となりそうです。
また、フランコ・コラピントがアルピーヌのリザーブドライバーに就任したこともあり、フル参戦前から早くもシート喪失の噂が流れているジャック・ドゥーハンも、チームメイトのピエール・ガスリーが非常に優秀なドライバーなだけに簡単にはいかないとは思います。ただ、プレシーズンテストで好走を見せたアルピーヌのマシンに乗れますし、あまり過度な期待がない状況下で思い切った走りを見せてくれるのではないかと思います。
地元オーストラリアで行われる開幕戦でいい流れを作ることができれば、シート喪失なんて噂も跳ね除けることができると考えています。
■番狂せも大いにあるサバイバルコース、アルバート・パークで迎える開幕戦
さて、まもなく開幕戦オーストラリアGPを迎えます。アルバート・パーク・サーキットは高速のS字区間もありつつ中低速コーナーが多め。それでいて普段は公園内の周回路と駐車場という事情もあり、路面のミュー(摩擦係数)も低く、バンピーなコースです。
そういった事情からクルマの作り方、セットアップ作りが独特で、クルマを選ぶサーキットと言えます。たとえば、脚を硬くして走らなければいけないクルマや車高を下げなければいけないクルマだと苦労するでしょう。
それだけに、プレシーズンテストで高い安定性を見せたメルセデスは速そうだという印象です。ただ、コースからウォールも近いこともあり、アクシデントに伴う番狂せも大いにあるサバイバルコースでもあります。どのマシンが生き残り、そして誰が速さを発揮できるのかを、じっくりと見届けたいと思います。
最後になりましたが、2025年シーズンも引き続きDAZNでF1解説をさせていただきつつ、ホンダの若手育成に携わらせていただきます。ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)では、フォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ(FRECA)に加藤大翔、フランスF4に佐藤凛太郎と、ふたりの若手がヨーロッパでの戦いに挑みます。彼らが活躍してくれないことには、さらに若い後輩たちに繋がらないので、まずはしっかりとヨーロッパでのふたりの戦いに期待しています。
また、2025年度もホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)には、非常に能力が高く、可能性を秘めたドライバーたちがたくさん入校してくれました。彼らの走り、成長も心から楽しみにしています。
【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS鈴鹿)のカートクラスとフォーミュラクラスにおいてエグゼクティブディレクターとして後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24
(Shinji Nakano まとめ:autosport web)
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3/14(金) | フリー走行1回目 | 10:30〜11:30 |
フリー走行2回目 | 14:00〜15:00 | |
3/15(土) | フリー走行3回目 | 10:30〜11:30 |
予選 | 14:00〜 | |
3/16(日) | 決勝 | 13:00〜 |


1位 | マックス・フェルスタッペン | 437 |
2位 | ランド・ノリス | 374 |
3位 | シャルル・ルクレール | 356 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 292 |
5位 | カルロス・サインツ | 290 |
6位 | ジョージ・ラッセル | 245 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 223 |
8位 | セルジオ・ペレス | 152 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 70 |
10位 | ピエール・ガスリー | 42 |

1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 666 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 652 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 589 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 468 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 94 |
6位 | BWTアルピーヌF1チーム | 65 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 58 |
8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 46 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 4 |

