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【2025年F1マシン分析/フェラーリSF-25】革命ではないものの変更多数。プルロッド式フロントサスに大きな期待
2025年3月9日
2024年シーズン終盤、マクラーレンとF1コンストラクターズタイトルをめぐって戦ったフェラーリは、最終的に14点差の2位にとどまった。今年勝利を目指すためにフェラーリが仕上げた2025年型『SF-25』は、昨年型からどのように変わり、何が期待できるのか、F1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが分析し、マシン細部の画像も紹介する。
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フェラーリの新車SF-25は、前モデルの進化版として発表された。ただしそこには、多くの違いがみられる。
SF-25のデザインは、現在はアストンマーティンに移ったエンリコ・カルディレが主導した。去年10月にロイック・セラが、テクニカルディレクターとしてメルセデスから着任するずっと以前からのことだ。
かつてミシュランでエンジニアのキャリアを積んできたセラは、「SF-25はほとんどのパーツが新しい」と指摘する。
「同時に、先代の優れた遺伝子を継承している。今季は1000分の1秒の違いが差を生むような、厳しい接戦になるだろう。細部にわたって改善することが、勝利の鍵を握るだろう」

SF-25で最も目立つ変化が、プルロッド形式のフロントサスペンションだ(上の比較写真参照。左が去年までのプッシュロッド。右が今季のプルロッド)。昨年のフェラーリは低速コーナーでは最速だったが、ダウンフォース不足のため高速コーナーではマクラーレンとレッドブルに遅れをとっていた。
■プルロッド式フロントサスペンションを導入した意図
より軽量でコンパクトなプルロッドサスペンションでは、ロッカー、ショックアブソーバー、トーションバーがモノコックの底部に取り付けられているため、車両の重心を下げることができる。
セラはこの解決策のおかげで、「車体の周りの空気がよりきれいに流れ、同時に以前のバージョンでは限界に達していた空力開発のための開発の余地がより大きくなる」と語っている。
さらにショックアブソーバーが圧縮する際の振幅が大きくなることで、低速時にはより柔軟に、高速時には硬くなることが可能だ。その結果、予選を含むあらゆる状況でタイヤをより限界まで使えるようになる。去年のSF-24は、タイヤの温度を上げることに苦労する局面が少なくなかった。それがSF-25ではレースでタイヤを持たせる長所を維持しつつ、この欠陥を修正することを目論んでいる。
驚くべきは、フロントサスのアッパーアームが形成するアンチダイブ角度が、SF-24(上記写真の赤い矢印を比較)やマクラーレンMCL39よりも大幅に小さいことだ。ただしこの角度が大きいほど、ブレーキをかけたときに車体が沈み込む量は少なくなる。一般的にいえば、車体の自然なダイブ傾向に抵抗したい場合、フロントサスの圧力中心の不要な動きを減らすためには、アッパーウィッシュボーンのフロントアームはリヤアームよりも明らかに高い位置に取り付ける。ところがSF-25では、前後アームの車体側取り付け位置にそれほど大きな違いはない。どうやらマラネロのエンジニアたちは、空力プラットフォームを制御する別の方法を見つけたようだ。

■エアインテークはより後方に
ノーズとフロントウイングは、昨年型と非常に似ている。たわみに影響を与えるフラップ構造はスペインGPまで変更されない。その週末に柔軟性に関するより厳しい規則が適用されるためだ。
一方でエアインテークには、新デザインが採用されている。上の比較写真で見られるように、空気取り入れ口は昨年型に比べて大幅に後方に移動している (白い矢印を参照)。この領域の加圧を増幅するためと思われる。
またSF-25には、マクラーレンのMCL39と同様、空気取り入れ口前の領域を覆う三角形のデフレクターが見える(緑の矢印を参照)。さらにフェラーリとマクラーレンの両方に、小さなフィンも付いている(青い矢印)。サイドポンツーンの曲線も特徴的だ。黄色の線を比較するとわかるように、側面はより薄く、よりコンパクトになっている。内部のラジエターも、明らかに小型化していることだろう。
さらにSF-24に比べると、ホイールベース自体も延長されているようだ。そのために開発陣は、前輪を前方に移動させる手法を取っている。その結果、空気取り入れ口と車輪の間にはより多くのスペースが空き、前輪の回転によって生じる乱流をより適切に制御し、フロア下前縁への悪影響を最小限に抑えることができる。
これが期待通りのパフォーマンスを発揮できれば、高速コーナーでの強さを取り戻せるだろう。前輪とコクピット間が広くなったおかげで、前方からの空気の流れはよりエネルギーと精度を持って方向付けられるようになるはずだ。

■革命ではないものの進化を狙う
ミラーの下に新たに取り付けられたデフレクターは(上の濃い青色の矢印)、空気の流れを上向きに(つまりリヤウイングに向かって)導いているように見える。
一方で車体後部ではエンジンカウルの最後端が下降せず、比較的水平のままだが (オレンジ色の矢印)、サイドポンツーンの曲線は、比較的去年型と似ている。
上の画像を見ると、クラッシャブル構造由来の突起がより顕著になり(白い矢印)、一方でバージボードには切り欠きができている(マゼンタ色の矢印)。エアインテークの下の領域は空気の流れにとって非常に重要であり、SF-24よりも顕著な変更が見られる (緑の矢印)。これはおそらくアウトウォッシュ (前輪の回転によって生じる乱気流を追い払うために、空気の流れを外側に逸らす) を目的としているものと思われる。
以上、フェラーリSF-25は革命というよりも進化である。現行の技術規則のもとで争われる最後のシーズンであることを考えると、論理的な判断といえる。しかし、写真でわかるように、昨年のシングルシーターと比較するとその差は顕著だ。そしてSF-24の戦闘力は決して悪くなかった。マクラーレンを凌いで、コンストラクターズ選手権を制する可能性すらあった。しかしシーズン中のアップデートの失敗が、その試みを台無しにしたのだった。
フェラーリははたして、今季もその轍を踏むのか。あるいは?

(翻訳・まとめ 柴田久仁夫 / Kunio Shibata)
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※アブダビGP終了時点
1位 | マックス・フェルスタッペン | 437 |
2位 | ランド・ノリス | 374 |
3位 | シャルル・ルクレール | 356 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 292 |
5位 | カルロス・サインツ | 290 |
6位 | ジョージ・ラッセル | 245 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 223 |
8位 | セルジオ・ペレス | 152 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 70 |
10位 | ピエール・ガスリー | 42 |

※アブダビGP終了時点
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 666 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 652 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 589 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 468 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 94 |
6位 | BWTアルピーヌF1チーム | 65 |
7位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 58 |
8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 46 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 4 |

