F1第13戦ハンガリーGP、第14戦ベルギーGPでは表彰台を獲得できなかったマックス・フェルスタッペン。レース無線では公然とチームを批判を繰り広げたことで物議を醸したが、批判の矛先は普段の行動にまで向けられている。F1スイス在住のF1ジャーナリスト、マチアス・ブルナーが2連戦のレース週末を語る。
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F1世界選手権タイトルへの道程は、短距離走ではなくマラソンだ。この春から初夏を迎えるまで、現世界王者のマックス・フェルスタッペンは、4年連続のタイトル獲得に向けて順風満帆と思われていた。開幕から7戦すべての予選でポールポジションを獲り、レースでも5勝をあげていたからだ。
ところが、5月以降は状況が大きく変わってきた。まずはフェラーリが、それに続いてマクラーレンとメルセデスも急速に競争力を高めてきたのだ。フェルスタッペンは言う。「タイトルを防衛するには、さらなる努力が必要だ。僕らよりも他のチームの方が効率良く開発を進めてきている」
ハンガロリンクには大規模なアップグレードが持ち込まれたが、それがもたらした進歩はチームの期待を下回るものだった。そしてハンガリーGPの決勝では、いつもは申し分のない仕事をするレッドブル・レーシングの戦略家たちが、めずらしくミスを犯した。レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコは、彼らの失策についてこう説明している。「新品タイヤの効果を過大評価する一方で、トラックポジションの重要性を過小評価していた。単なる思い違いだった」
マックスは週末全体を通じて不機嫌で、レースの最終盤に起きたルイス・ハミルトンとの接触も彼の憂鬱に輪をかけた。無線で話す彼の口調にはトゲがあり、レースを不本意な5位で終えたあとの会話は、いつになくよそよそしく感じられた。
レース中の無線で公然とチームを批判したことが物議を醸し、フェルスタッペンは次のベルギーで自ら弁明をした。「レッドブル・レーシングでは、互いにとてもオープンな姿勢で仕事をしていることを、世間の人々は理解していない。何がうまく行かなかったときに、それを口に出すことを控えるのは正しい態度とは言えない。このチームの完璧な仕事は、僕らに数多くの勝利をもたらしてきた。けれども、ひどいレースをしてしまった時には、自分に正直にならないといけない。そうしないと何も学べないからだ」
また、マックスの行動にも、批判の矛先が向けられた。ハンガリーGPの週末、レース前夜の午前3時までシムレーシングに参加していたと報じられたのだ。だが、彼はそれを一笑に付した。「まず言っておきたいのは、イモラでも同じようにシムレースをして、日曜のグランプリで勝ったということだ。僕はもうF1で3回もタイトルを獲り、シムレーシングは10年もプレイしている。日曜のレースの前にどんな準備をすべきかはよく承知しているから、心配してもらうには及ばない」
スパ・フランコルシャンは、フェルスタッペンが最も愛するサーキットだ。ただ、彼は今年のレースをポールポジションからスタートできないことを事前に知っていた。エンジンコンポーネントの交換により、グリッドペナルティを受けねばならなかったのだ。その結果、予選では最速だったにもかかわらず、スタートは11番手グリッドからとなった。
2021年、2022年、2023年とベルギーGPを連覇してきたマックスは、レース前にこう語っていた。「できるだけポジションを上げて挽回したい。だけど、もはや僕らのクルマは圧倒的に速いわけではないから、そう簡単にはいかないだろう」
彼は5位でフィニッシュラインを通過したが、正式結果では4位に繰り上がった。トップでチェッカードフラッグを受けたジョージ・ラッセルのメルセデスが、最低重量規定違反で失格となったからである。
レースを振り返って、フェルスタッペンは語っている。「スタート直後は、何とかトラブルに巻き込まれずに切り抜けた。ただ、その後はDRSトレインからなかなか抜け出せなくて苦労したよ。ノリスにアンダーカットを仕掛けて、ひとつ順位を上げられたのは良かったと思う。実際、選手権争いという観点から言えば、ランドより上位でフィニッシュできたのだから、いい一日だった。11番手グリッドからスタートしたことを考えれば、この結果に満足すべきだろうね」
XPB Images
(Mathias Brunner/Translation:Kenji Mizugaki)