F1新世代マシンの主な変更点。新機能『アクティブ・エアロダイナミクス』と『マニュアル・オーバーライド』が追加
2024年6月7日
FIAは、6月6日、2026年の新F1技術レギュレーションの詳細を発表した。2026年には、新世代のパワーユニット(PU)およびシャシーが導入される。
F1技術ワーキンググループとの協議のもと、F1、既存10チーム、OEMおよびパワーユニットマニュファクチャラーとの協力により、2026年の新技術レギュレーションが策定された。このレギュレーションは、6月28日に世界モータースポーツ評議会から正式な承認を得る見通しとなっている。
2026年の技術レギュレーションには、未来を見据え、パワーユニット、シャシー、空力、安全性、持続可能性において、重要な変更が取り入れられた。
FIA会長モハメド・ビン・スライエムは、「2年前に2026年のパワーユニット・レギュレーションを発表した後、我々は新しいパワーユニットのエネルギー要件に合わせてシャシー・レギュレーションを再定義する機会を得た」と述べた。
「F1のパートナーと協力し、10チームおよびすべての関係者の支援を受けて、このユニークな改訂を実現した。これにより、我々のプレミアチャンピオンシップは世界で起きていることとの関連性をさらに深めることになるだろう」
「(新たな)パワーユニット・レギュレーションにより、すでに記録的な数のPUマニュファクチャラーがこのスポーツへの参入を決めた。そして今、革新的な空力ソリューションを備え、より軽量で機敏なマシンを提供するシャシー・レギュレーションと並行して、レースの向上だけでなく、PUマニュファクチャラー、OEM、および既存の競技者にとっても、より魅力的な選手権を作り出すことを目的とした一連の規則を作成した」
「2026年のF1規則の主要な特徴は、高度で持続可能性の高い技術と安全性である。F1と共に、スポーツのエリートカテゴリーの未来にふさわしいマシンを作り出すことが、我々の目標だった。その目標を達成したと確信している」
FIAシングルシーターテクニカルディレクターのニコラス・トンバジスは「FIAは、この一連の規則により、F1のDNAと完全に一致する新世代のマシンを開発することを目指した。つまり、軽量で極めて速く、機敏でありながら、技術の最前線に立ち続けるマシンである」とコメントしている。
2026年のマシンには、バトル促進のために、新機能が導入される。ひとつは、DRSの代わりに導入される可動式のフロントおよびリヤウイングから成る『アクティブ・エアロダイナミクス』、もうひとつは、後続車が追加の電気エネルギーを使用できる『マニュアル・オーバーライド』だ。
「レース向上のため、エキサイティングな新機能をふたつ導入する」とトンバジス。
「ストレートでのドラッグを非常に低く抑える『アクティブ・エアロダイナミクス』と、前方のマシンに十分近づいた時に、ドライバーにオンデマンドでバッテリーパワーを供給する『マニュアル・オーバーライド』システムだ」
FIAは、各エリアにおいての規則変更について、次のように説明している。
■パワーユニット
・現在使用されているハイブリッドエンジンを基盤として、今よりさらに大きなパワーを生み出す。ICE出力は 550〜560kwから400kwに減少、電気出力(MGU-K/運動エネルギー回生システムによる)は120kwから350kwに増加する。電力が約3倍に増加するため、パフォーマンスは維持され、持続可能性が向上する。
・MGU-H(熱エネルギー回生システム)の廃止と電力拡大により、パワーユニットをシンプル化。これによりF1史上最も市販車との関連性が高いパワーユニットになる。100パーセント持続可能な燃料と相まって、将来の革新に応用可能な先進的なプラットフォームを提供する。
・ブレーキング時に回収できるエネルギー量が2倍になり、1周あたりの回収可能エネルギーは合計8.5MJとなる。
・追い越しの機会を増やすため、『マニュアル・オーバーライド』モードが追加された。先行車のデプロイメントは、290km/hを超えると徐々に低下し、355km/hでゼロに達する。一方、後続車はMGU-Kオーバーライドにより、337km/hまでは350kWと+0.5MJの追加エネルギーを供給される。
■シャシー
・現行車より小型で軽量になるよう設計された。新規則の中心にある『機敏なマシン』のコンセプトに従うよう変更。ホイールベースは最大3600mmから3400mmに短縮され、車幅は2000mmから1900mmに縮小。最大フロア幅は150mm縮小される。
・重量削減は重要な目標であり、2026年モデルの最低重量は768kgとなり、2022年モデルより30kg軽量化される。これはマシンとドライバーの722kgと推定タイヤ質量46kgで構成されている。
・ダウンフォースは30パーセント、ドラッグは55パーセント削減される。
・タイヤのホイールサイズは18インチに維持されるが、前輪の幅は25mm、後輪の幅は30mm縮小される。グリップの損失は最小限に抑えられる。
■エアロダイナミクス
・新しく『アクティブ・エアロダイナミクス』システムが導入される。可動式のフロントおよびリヤウイングを含むこのシステムは、標準のZモードが展開された状態では、より高いコーナリングスピードをもたらす。ストレートでは、ドライバーがXモードに切り替えることができる。これはストレートラインスピードを最大化するために設計された低ドラッグ仕様だ。
・3エレメントからなるアクティブリヤウイングが採用され、下部のビームウイングは廃止、エンドプレートはシンプル化される。
・フロントウイングは現在よりも100mm狭くなり、2エレメントのアクティブフラップが装備される。
・現行車とは異なり、フロントホイールアーチは取り除かれ、最適なウェイクパフォーマンスを達成するため、ホイールボディワークの一部が義務化される。
・サイドポッドの前面に、インウォッシング・ホイール・ウェイクコントロールボードが装備され、ホイール・ウェイクのコントロールをアシストする。
・部分的にフラットなフロアと低パワーのディフューザーが装備され、グラウンドエフェクトを減少させ、極端に硬く、車高を低くするマシンセットアップへの依存を軽減する。
(autosport web)
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