バルセロナのカタルニアサーキットで、ジャガーレーシングが新車R5を発表した。F1の“ビッグ4”に迫るという目標を実現するために、大きな期待を担って投入されるニューマシンだ。
ジャガーで2年目のシーズンを迎えるマーク・ウエバーと、昨年のF3ユーロシリーズで総合2位の成績を収めた新加入のクリスチャン・クリエンの手によって、新車のベールが取り外された。この発表会には2人のドライバーの他、マネージメントチームの代表者たちも顔を揃えた。ジャガーチームは2003年初めに体制を刷新しており、現在の首脳陣にとっては白紙の状態から手掛けた初めてのニューカーでもある。メディアと招待客を集めて行われたセレモニーでは、マネージングディレクターのデイビッド・ピッチフォース、エンジニアリングディレクターのイアン・ポコック、エアロダイナミクス担当ベン・アガサンゲルー、車両設計担当ロブ・タイラー、車両パフォーマンス担当マーク・ギラン、そしてプレミア・パフォーマンスのCEOトニー・パーネルが壇上に上がった。
「ジャガーR5は、現在の新しいマネージメントチームが編成された後、初めてまったくの白紙からデザインすることができた車だ。そして、昨シーズンの経験をベースにした新しい思想が取り入れられている」とピッチフォース。「この車のデザインはこれまでよりもかなり早い時期にスタートしており、すでに私たちが知り尽くしている旧型車とその数多くの長所を基礎にして作られている」
「昨年の車の問題点をすべて解決したとは言えないが、R5の設計で心がけたことのひとつは、よく理解できていない部分にはむやみに手を加えないということだ。結果としてR4の弱点の一部をそのまま引き継いでしまうとしても、ギャンブルをしてまったく新しい設計にするより、修正できそうな弱点であれば実績のある設計の方が安全だからだ」
アガサンゲルーによれば、R5の設計思想には過去のデザインチームが犯した失敗、すなわち完全な新設計にすることで弱点を根絶しようとする考え方への反省が生かされているという。
「ローリスクかつコンベンショナルな形で仕事を進めることで、昨年のR4からたいへん多くのことを学んだ。また、すべての部署で体制が安定したので、新しいR5の改良に全力を傾けることができた。私にとってもいい勉強になった。昨シーズンを通じて改良に取り組み、よく理解できている車をベースに新車を設計するのはこれが初めてだったからだ。そのおかげで、私たちはあまりリスクを冒さずに設計をリファインし、進化させることができた。過去の失敗の原因は、そういった方法を採らなかったことにある」
また、コスワース・レーシングのテクニカルディレクター、ニック・ヘイズによると、最新のV10パワープラント(今年からレースウイークを1基のエンジンで走りきる耐久性が要求される)もまた、昨年のデザインをベースにした正常進化形だ。
「CR6−V10エンジンは昨年のユニットの発展型であり、90度V10の基本構成を踏襲している。ただし、2004年からは規則によりライフの長いエンジンとする必要があった」とヘイズ。「これまでのエンジンのライフは450〜500kmだったが、今年からおよそ800kmはもたせなければならない。こうした寿命を達成しながら最良のパフォーマンスを引き出すため、CR6の開発には多くの努力が注ぎ込まれた」
「2003年型エンジンのコンポーネントの多くは、レースウイークどころか、決勝レースを走りきるともうほとんどライフには余裕がないものが多かった。したがって、私たちの作業の多くは、できるだけパフォーマンスを損なわずに部品のライフスパンを伸ばすことに費やされた。グリッド上のすべてのエンジンにとって、今年はチャレンジングなシーズンになるだろう」
R5はこの発表会の後、サーキットでの初めての走行を行う。彼らはすでに先週の月曜日に、ベルギーにあるフォードのテストコースで新車のストレートラインテストを済ませている。