イギリス人最後のF1チャンピオンとなっているデイモン・ヒルは、その後継者となる可能性が一番高いジェンソン・バトンについて、あまりにも普通で、まだ狂気じみたところが足りないと評した。
ヒルは、英デイリー・ミラー紙に対して次のように述べた。「過去のワールドチャンピオンを見ると、基本的にみんな狂気じみている。僕自身、少しイカレたところがある。だがジェンソンはどうだろう? 彼は落ち着いた気性で、すべてのことに冷静に対処している。僕がドライバーとしての彼に懸念を覚えるとすれば、彼にはまだ狂気じみたところが足りないということだね」
「僕は何としてもチャンピオンを勝ち取りたかったんだ」と、1996年のワールドチャンピオン、ヒルは続けた。「僕ほどに勝ちたいと望むのは、普通じゃないし、特に健康的なことでもない。僕には僕なりの理由があって、それはもちろん、ある意味では僕の父のことなどに関係していた。ジェンソンはというと、あまりにも普通に見える。結婚なんかしようとしているしね」
ヒルのコメントについて聞かれたバトンは、F1ドライバーを職業に選んだというだけでもあまり正気とはいえないだろう、と指摘した。また一方では、狂気がそれほど有効だろうか、と疑問を投げかけた。
「僕が常に正気を失わないということは、弱さじゃなくて強さかもしれないよ」と、バトンは同紙に対して語った。
実際のところバトンには、レースに対する自分のアプローチに疑問を感じるべき理由はほとんどない。かつてはルノーでパフォーマンスの不振に悩んでいたが、転機の年となった2003年シーズンに、将来のスターとしての評価を再び獲得したのだ。
今シーズン、バトンは、もともと彼の能力に疑問を呈していたチームメイト、ジャック・ビルヌーブの尊敬を勝ちえることができた。それだけでなく、ファン−パブロ・モントーヤがマクラーレンに移籍する際には、ウイリアムズチームに復帰するという可能性も浮上してきた。ウイリアムズは、バトンがF1デビューしたときのチームだ。
「僕は進歩したと思う」と、バトンは2003年について語った。「そして、ジャックがあんなふうに言ってくれたことは嬉しかった。チームも進歩した。2004年に向けた暫定型マシンをテストした結果も上々だ。僕らは今年、十分表彰台が狙えそうだし、優勝だって狙えると思うよ」
「もちろん、人は(2005年のウイリアムズ復帰に関して)憶測するだろうね」と、バトンは付け加えた。「ひとつ空きシートがある。でも、僕にとっては何の意味もないよ。僕が心配する余地はない。僕はBARとの契約があるし、それに満足している。BARのためにいい仕事をすることに集中しているんだ。僕にとってもチームにとっても、重要な年だ。大きな飛躍を遂げるのを楽しみにしているんだ」
2004年、バトンは、新たなチームメイトととなる佐藤琢磨と共に、BARでドライブすることになる。