ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル・ホンダの走りを批評します。今回はF1第17戦アメリカGPの週末を甘口の視点でジャッジ。
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F1第17戦アメリカGPで、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがポール・トゥ・ウィンを飾った。フェルスタッペンの優勝は第13戦オランダGP以来、4戦ぶり。通算では今シーズン8勝目となった。
この一勝によって、フェルスタッペンはチャンピオンシップ争いで2位のルイス・ハミルトン(メルセデス)との差をさらに6点広げて、12点差とした。ただし、この勝利はそれ以上の意味を持つ大きな勝利となった。
それは、メルセデスの牙城を崩して挙げた一勝だからだ。F1にパワーユニットが導入された2014年以降、サーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われたアメリカGPは、メルセデスが席巻していた。予選は2014年から2019年まで6年間、メルセデスのドライバーがポールポジションを獲得し続け、レースでは2018年のキミ・ライコネン(フェラーリ)以外、メルセデスが表彰台の頂点に立ち続けた。
それが今年のアメリカGPでは初めてメルセデス以外のパワーユニットを搭載したマシンがポールポジションを獲得し、レースでもポール・トゥ・ウィンを飾ったのである。
2014年以降、メルセデスが得意としているサーキットは、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ以外にもいくつかある。ひとつはフランスGPが行われているポール・リカール・サーキットで、復活した2018年とその翌年の2019年もハミルトンがポール・トゥ・ウィンを飾っている。
2つ目はアゼルバイジャンGP(2016年はヨーロッパGP)が行われているバクー・シティ・サーキット。昨年までの4戦中3回でメルセデス勢がポールポジションを獲得し、レースでも3勝を挙げている。
3つ目はロシアGPが行われているソチ・オートドロームだ。予選では2017年にセバスチャン・ベッテルが、2019年にはシャルル・ルクレール(ともにフェラーリ)がポールポジションを獲得したが、レースでもすべてメルセデスが制していた。
ところが、それらのサーキットでの力関係が、今年は変わっている。まずフランスGPはフェルスタッペンがポール・トゥ・ウィン。アゼルバイジャンGPは予選でルクレールがポールポジションを獲得し、レースでは終盤にフェルスタッペンのタイヤがバーストして優勝は逃したものの、レッドブル・ホンダがメルセデスを抑えて力強い走りを披露していた。
今年のロシアGPは雨絡みとなり、力関係がわかりにくい結果となった。予選はランド・ノリス(マクラーレン)が自身初のポールポジションを獲得し、レースでも終盤までトップを快走。最後に強くなりだした雨を利用してハミルトンが逆転優勝を飾った。
そして、迎えたアメリカGPではドライコンディションで行われ、フェルスタッペンが予選でポールポジションを獲得。レースではスタートで少し出遅れ、ハミルトンにトップの座を譲るも、ピットストップ戦略で逆転。ハミルトンの猛追を抑えて、結果的にポール・トゥ・ウィンを飾った。
残り5戦。この中にはもうひとつメルセデスが得意としているサーキットがある。それは最終戦アブダビGPが開催されるヤス・マリーナ・サーキットだ。しかし、今年フランスGP、アゼルバイジャンGP、そしてアメリカGPでレッドブル・ホンダが快勝したことで、アブダビGPはもはやメルセデスの庭ではなくなった。
高地で行われるメキシコGPとブラジルGPで、レッドブル・ホンダが本来の実力を出し切ることができれば、チャンピオンシップに大きく近づくことは間違いない。
(Masahiro Owari)