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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:ロシア編】トストよ、行方不明の“本当の彼”を探し出せ

2021年10月7日

 2021年に7年ぶりに日本人F1ドライバーが登場した。アルファタウリ・ホンダからF1にデビューした角田裕毅だ。極めて高い評価を受け、大きな期待を担う角田を、海外の関係者はどう見ているのか。今は引退の身だが、モータースポーツ界で長年を過ごし、チームオーナーやコメンテーターを務めた経験もあるというエディ・エディントン(仮名)が、豊富な経験をもとに、忌憚のない意見をぶつける。今回は2021年F1第15戦ロシアGPを見ての感想を語ってもらった。


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 ロシアGPの裕毅についてコメントしてくださいという電話を受けた後、私はまるで『ウォーリーをさがせ!』の絵を血眼になって見ているような気分になった。私はいつも、集中して非常に真面目にF1を観察している。ほんのわずかな出来事も見逃すことはないのだ。その私が、ロシアGPで裕毅が何をしていたのか、さっぱり思い出せない。ひょっとして、いなかったのではないかと思うぐらいだ。


 だが、私は誰よりも勤勉でプロ意識の高い天才だ。その後、自分なりに調査を実施した結果、──「私たちが調べたことを自分が調べたみたいに言わないでください」だって? 編集者は黙って私の話をメモしていればいいんだ──……ええと、私が自分で調査をした結果、なぜ角田に気付かなかったのか、すぐに分かった。あの週末、彼はいなかったのだ!

角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第15戦ロシアGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 もちろん、実際にいたことは知っている。私はばかではないからね。「私たちが知っている彼はいなかった」という意味だ。週末を通してあの子はピエール・ガスリーに完全に圧倒されていた。アルファタウリのふたりはこれまでもラップタイムに大きなギャップがあったが、それにしても1周2秒の差というのは見たことがない。

■“本当の彼”は、王者たちを軽々とオーバーテイクできるドライバーのはずだ

 冗談ではなく、実際2秒の差があった。いいかい、FP1でガスリーは6番手、角田は16番手で、その差はちょうど2秒だった。FP2でガスリーは3番手に上がり、我らが角田は18番手に下がった。ピエールとの差は2.109秒差だった。


 予選Q1ではガスリーが6位、角田が15位。角田は辛うじてQ2に進出したが、ラップタイムはピエールより1.026秒遅かった。Q2ではピエールが12番手で角田が13番手、その差は0.11秒。だが、この時、アルファタウリはガスリーを使い古したインターミディエイトでステイアウトさせて、彼のセッションを台無しにした。一方で裕毅はインターミディエイト2セット目を履いて0.649秒も縮めた。ガスリーがこれだけのタイムを短縮できていたら、彼は6番手でQ3に進んでいただろう。


 決勝で後方を走り続けた角田に、終盤チャンスが訪れた。レースが終わり間近になって雨が降り出したのだ。しかしその時、チームは角田をピットに呼んで、なんとタイヤをソフトに交換した! 録画してあった決勝を見て、それを知った時、私は椅子から転げ落ちそうになった。もちろん、彼は2周後に戻ってきてインターミディエイトに履き替えなければならなかった。そんなこんなで角田は大量に時間をロスしてしまったのだ。ただし、彼はもともと後ろの方を走っていたので、このせいでポジションを落とすことはなかったわけだが。こうして振り返ると、ロシアの週末が彼にとってどれほどひどいものだったのかが分かろうというものだ。

2021年F1第15戦ロシアGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 角田を助けるために何をすればいいのだろうか? 私なら、トルコGPに向けて新しいシャシーを用意する。そして今シーズンいっぱいは、グランプリの合間は毎回日本に帰らせることにする。もしかすると、輝きを失ったのは、ホームシックにかかっているからかもしれないからね。それから、ガールフレンドをひとりでも3人でもいいから作るといい。どれもうまくいかなかったら、デニス・ハウガーの大きな写真に「この男がお前の仕事を狙っている」というキャプションをつけて、スマホの壁紙にするといいだろう。

2021年F1第15戦ロシアGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第15戦ロシアGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 どんな人間にも、うまくいかない時期はある。だが角田は、バーレーンでセバスチャン・ベッテルやフェルナンド・アロンソを、まるでベテランドライバーのようにオーバーテイクしたドライバーだ。その彼はどこへ行ったのか。フランツ・トストがいま最優先でやるべき仕事は、行方不明の彼をできるだけ早く見つけ出すことだ。


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筆者エディ・エディントンについて
 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。


 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。


 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。


 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちのある握手はバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。



(Eddie Eddington)


レース

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