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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る/前半戦レビュー】10点満点で6点。後半戦に成長し、首脳陣の期待に応える必要あり

2021年8月24日

 2021年に7年ぶりに日本人F1ドライバーが登場した。アルファタウリ・ホンダからF1にデビューした角田裕毅だ。極めて高い評価を受け、大きな期待を担う角田を、海外の関係者はどう見ているのか。今は引退の身だが、モータースポーツ界で長年を過ごし、チームオーナーやコメンテーターを務めた経験もあるというエディ・エディントン(仮名)が、豊富な経験をもとに、忌憚のない意見をぶつける。今回は第11戦までの前半戦の総括をお願いした。


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 私は口数が多い人間ではないし、衝動的な行動も取らない、冷静な一匹狼だ。冗談を言ったと思ったね? とんでもない、これは本当の話だ。いつもばかなことばかり言っている人間と思われているだろうが、それは本心をライバルに悟らせないために、入念に作りこんできたキャラにすぎない。本当の私は、思慮深く、心優しくて、礼儀正しい人間だ。自分の意見が人の役に立つのであれば、喜んで話をする。この夏はギリシャ人から格安で購入した高級クルーザーで快適に過ごしていたが、角田の前半戦について意見を求められたので、答えることにした。


 グランプリの週末の展開は知らずにリザルト表だけを見る人々は、角田はいい仕事をしたと考えるだろう。5回入賞し、ランス・ストロール、ウイリアムズ勢、アルファロメオ勢、ハース勢の上にいるからだ。F3とF2をそれぞれ1年だけ走ってF1に昇格したルーキーとしては、なかなかいい仕事をしているように見える。

2021年F1第11戦ハンガリーGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第11戦ハンガリーGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 だが、あなたがF1に精通しており、隅々まで細かい事に注目し、すべてのセッションを分析するなら、違った見方ができるだろう。ドライバーの力を評価する方法として有効なのは、チームメイトと比較することだ。最初の11戦で角田は18点を獲得した。だが、ピエール・ガスリーは8回入賞し、50点を稼いでいる。そのうち1回は表彰台だ。予選では毎戦ガスリーが勝ち、レースペースも優れている。つまり、ガスリーを見れば、アルファタウリのマシンには、角田がここまで出してきた結果よりも良い結果を達成できるだけの力があったのだと判断せざるを得ない。


 厳しい言い方だということは分かっている。だが、これが数字が示す現実だ。もっと意地悪くなろうと思えば、裕毅がフリープラクティスや予選序盤で不必要なクラッシュをしでかし、それによって本来より低いグリッドポジションしかつかめず、その結果、決勝日のチャンスも失った、という話を詳しく語ることもできる。

■トスト代表は気長に見守っているが……

 世界一、若手ドライバーのことに詳しい私は、角田がバーレーンでやってのけたことを、毎戦再現するのは不可能であると分かっていた。開幕戦で彼はいい仕事をした。だが、バーレーンではF3時代にもF2時代にも走ったことがあったし、直前にはアルファタウリでテストをした。つまり、いわば彼にとって勝手知ったる場所だったからうまくいったのだ。メルボルンでシーズンが開幕していたら、ああはいかなかっただろう。


 ドライバーをF1に昇格させるためには、デビュー前にジュニアフォーミュラである程度の年月を過ごさせる必要があると思う。速さがあり、素晴らしい予選ラップを走り、目の覚めるようなオーバーテイクを成功させる力があるドライバーかもしれない。しかし経験が浅いと、小さいミス、大きなミスを犯す可能性がある。そうするとたくさんのチャンスを失うのだ。フランツ・トストが角田に対して忍耐強く接していることは意外ではないが、怒りっぽいヘルムート・マルコがまだ短気を起こしていないことには驚いている。これ以上あの子がミスをしたら、怒りのあまり頭が爆発するのではないかと思うが。

2021年F1第3戦ポルトガルGP 角田裕毅とフランツ・トスト代表(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第3戦ポルトガルGP 角田裕毅とフランツ・トスト代表(アルファタウリ・ホンダ)

 総合評価を下すとすると? 私ならF1デビューシーズン前半戦の角田に10点満点で6点の評価を与える。後半戦にはもっと安定したパフォーマンスを見せて、ミスを減らして、ポイントを稼いでほしいところだ。それができなければ、シーズン全体での評価はもっと下げざるを得ないだろう。

角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第11戦ハンガリーGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

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筆者エディ・エディントンについて
 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。


 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。


 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。


 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちのある握手はバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。



(Eddie Eddington)


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