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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る】ベテランのような走りに成長を実感。アタックモードでもミスしないことが課題

2021年7月29日

 2021年に7年ぶりに日本人F1ドライバーが登場した。アルファタウリ・ホンダからF1にデビューした角田裕毅だ。極めて高い評価を受け、大きな期待を担う角田を、海外の関係者はどう見ているのか。今は引退の身だが、モータースポーツ界で長年を過ごし、チームオーナーやコメンテーターを務めた経験もあるというエディ・エディントン(仮名)が、豊富な経験をもとに、忌憚のない意見をぶつける。今回は第10戦イギリスGPを振り返る。


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 イギリス人は本当に面白い。サッカーのユーロカップのたびに、絶対に自分の国が優勝すると思い込んで大騒ぎをし、結局は負けて打ちひしがれるのだ。イギリスGPでは、ほとんどのチームが「ただいま!」「ただいま!」と騒いでいた。イギリスに本拠を置くチームが多いからだが、シルバーストンは世界選手権最初のイベントが開催された場所だし、イギリスはそもそもモータースポーツのホームといっていい。関係者全員の気持ちが高まるのも当然だろう。


 角田少年は、去年のF2シルバーストン戦でいい走りをしていたため、イギリスGPに自信を持っていた。「F1でも問題なし」と思っていたのではなかろうか。だが、ルーキードライバーであるのに、チームが週末の出だしから躓いた場合には、大きな成果は望めない。難しい週末の後に1ポイント獲得できたのは、間違いなくポジティブな結果といっていいだろう。

2021年F1第10戦イギリスGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第10戦イギリスGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 FP1では角田もチームメイトのピエール・ガスリーも、トップ10のすぐ下あたりのタイムを出しており、悪くはなさそうだった。角田はガスリーから0.15秒遅れ。「よしよし、どこまでやれるか見せてくれ」と私のなかでも期待が高まったが、チームがセットアップを間違えたせいで、ふたりとも予選で苦戦した。


 そういう状況では経験がものをいう。ガスリーはなんとかQ2に進出したが、裕毅は0.026秒足りなかった。だが彼は、捨て身の走りをすることもなく、スピンもせず、ウォールにもヒットしなかった。翌日に改めて戦おうという冷静さを持っていたのだ。

■闘争心あふれる走りは失わないでほしい

「成長したものだ」と私は喜んだが、土曜のショートレース(ばかなイベントだ)を見た時、彼が闘志を失ってしまったのではないかと、心配になった。裕毅はスタートでキミ・ライコネンとニコラス・ラティフィの後ろに下がり、後にラティフィを抜いたものの、それでもアルファロメオのアントニオ・ジョビナッツィの後ろで16位という結果だったのだ。


 7位から17位まではDRSトレイン状態でつながって走っていたため、追い越しは簡単ではなかったのは確かだ。順位を上げていけたのは、周囲とのマシンパフォーマンス差が圧倒的に大きい場合、たとえば、フェラーリのカルロス・サインツなどに限られた。サインツはジョージ・ラッセルと当たって順位を落とした後、ある程度挽回することができた。

2021年F1第10戦イギリスGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 日曜決勝で、角田はベテランのような走りをしたのでほっとした。1周目を何の波乱もなく終えて、タイヤを30周持たせて走った。今回の第1スティントで最長の距離だ。その後、前のグループに追いつき、ライコネンのスピン、ガスリーのパンク、セルジオ・ペレスの犠牲的行為のおかげで、1点をつかんだ。まぁいいではないか。皆が譲ってくれたのだから、遠慮なくもらっておけ!


 フランツ・トストが角田に何を飲ませているのか知らないが、シルバーストンでの角田は非常に冷静なドライバーだった。今後必要となってくるのは、ミスをすることなく、火花を散らし、闘志を燃やし、アタックモードを維持することだ。ゴリ押しするつもりはないが、念のため付け加えておくと、私は、そのやり方をすぐさま格安で教授できる男を知っている。


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筆者エディ・エディントンについて
 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。


 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。


 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。


 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちのある握手はバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。



(Eddie Eddington)


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