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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第9回】タイヤマネージメントと安定性が生んだ、ニキータとミックの“差”
2021年7月16日
2021年シーズンで6年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。昨年に引き続きオーストリアでは2連戦が行われ、トラブルもなく終えることができたものの、この連戦ではレッドブルリンクのコース特性も相まってニキータ・マゼピンとミック・シューマッハーの“大きな違い”が浮き彫りになった。そんなオーストリアの現場の事情を、小松エンジニアがお届けします。
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2021年F1第8戦シュタイアーマルクGP
#9 ニキータ・マゼピン 予選20番手/決勝18位
#47 ミック・シューマッハー 予選19番手/決勝16位
2021年F1第9戦オーストリアGP
#9 ニキータ・マゼピン 予選20番手/決勝19位
#47 ミック・シューマッハー 予選19番手/決勝18位
ようやく最初の3連戦が終わりました。フランスGP終了後には、僕も含めてエンジニアリングのスタッフは一度イギリスに帰りました。今年は23レースのシーズンで、家を離れる時間がただでさえ長いので、自分だけでなく家で待っている家族にとっても大変です。ですから帰れる余裕があるときはイギリスに帰るようにしています。日曜日の夜のチャーター便には他チームのスタッフも大勢乗っていました。
オーストリア2連戦は結局予報されていた雨も降らずに終わりました。まずシュタイアーマルクGPを振り返ると、予選ではミックにミスがあった一方で、ニキータは3回のアタックを通してタイムを上げていき、ミックとコンマ1秒差で終わることができたので、まあまあよくやってくれたという感じです。
ただミックは予選後にタイムが上がらなかったのは自分のミスだったと認め、常にしっかりとしたフィードバックをくれるので、そういう姿勢はチームのやる気にも繋がります。なかには結果が悪かった時に感情的になって、きちんとしたフィードバックをくれないドライバーもいるので、ドライバーとしてのあるべき姿を見せてくれたと思います。
レースではスタートでミックとニキータの順位が入れ替わったので、ミックとしてはニキータに詰まる形になりましたが、ピットストップ後のハードタイヤでのペースはとてもよかったです。先にタイヤを交換したニキータにすぐに追いついてオーバーテイクし、一時はランス・ストロール(アストンマーティン)やエステバン・オコン(アルピーヌ)と遜色ないペースでした。レースでのタイヤの使い方がうまくなってきたことが現れていて、これがシュタイアーマルクGPで一番よかった点ですね。
一方でニキータがペースを落とした原因のひとつはやはり青旗です。10台のクルマを3、4周でやり過ごさなければならないので、この間に20秒ほどタイムロスをしてしまいました。これはほぼピットストップ1回に相当するロスです。よって最終的にはミックから40秒近く遅れてのフィニッシュでした。ミックとの大きな違いはレースペースで、もし同じようなペースで走れていたら、最後までそれほど青旗には引っかからずに走れたはずです。ペースが遅いとレースの早い段階で青旗に引っかかり、他車を抜かせる度にタイヤの温度も落ちるのでラップタイムも悪くなり、タイムロスをするという悪循環に陥ってしまいます。
それは次のオーストリアGPでも同じでした。タイヤは最もソフト寄りの3セットになりましたが、レース戦略は同じミディアム→ハードの1ストップ。第1スティントの時点でミックとニキータの差は広がり、ニキータはルイス・ハミルトン(メルセデス)、ランド・ノリス(マクラーレン)、バルテリ・ボッタス(メルセデス)の青旗を避けるタイミングとなる27周目ピットストップをして、フリーで走れるところでコースに戻りました。その後は44周目にまた青旗を掲示され、45周目に2度目のピットストップ。この青旗でまた20秒くらいのロスがありタイヤもダメになるので、それだったらピットストップをして新しいタイヤで走ったほうがいいということで2ストップになりました。
序盤にニキータとのギャップを築いたミックは34周目にピットイン。この時点で既にマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、ハミルトン、ボッタスには周回遅れにされていて、アウトラップでノリスに抜かれましたが、その後はしばらく単独で走り、クルマ的には厳しい状況ですが、直近のライバルであるウイリアムズのニコラス・ラティフィと同等のペースでした。ただC3でウイリアムズと互角に戦えたとはいえ、C4タイヤを機能させられずに苦労したので、うまく使えていないタイヤがあるというのも現実です。
現状ではミックの位置がほぼウチのクルマでの限界です。ニキータが青旗を避けるために2度目のピットストップをする直前(44周目)のミックとの差は15秒くらいでした。この段階でニキータに追いついてきたダニエル・リカルド(マクラーレン)がミックに追いついたのは60周目と、青旗にかかるタイミングが大きく違うのです。この違いが、予定どおりの1ストップでレースを完走できたミックと、2度目のピットストップを行いミックより50秒ほど遅れてフィニッシュしたニキータの差になりました。
レッドブルリンクは1周が短いので、どうしてもウチのクルマのペースでは『青旗→ラップタイムロス&タイヤ温度の低下→ペース悪化』という悪循環に陥りやすいのですが、ミックはそのロスを最小限に抑えたので、結果としてこれだけの差がつきました。レースでのタイヤの使い方と安定性は現状でのふたりの大きな差のひとつです。
もうひとつ違うのは、予選での一発の速さです。オーストリアGPの予選ではミックもニキータもミスをせず、1回目のアタックから徐々にラップタイムを更新していきましたが、最終的にふたりの差はコンマ5秒でした。これがいまのミックとニキータの実力差だと思います。
またオーストリアGPではノリスへのペナルティが話題になりましたが、僕の個人的な意見としては、不要なペナルティだったと思います。そもそもターン4のアウト側がグラベルだというのは全員がわかっていることで、そこでアウト側に行くというのはリスクを負うということです。確実に自分が前に出ていて、押し出されない位置を走れるのであればアウト側でも問題ないけれど、サイド・バイ・サイドか自分が少し後ろにいる状態で、イン側のクルマがアウトまできちんとコースを使って戦っていたら、グラベルに出るかアクセルを緩めて後ろに下がるかしかないのです。最初からアウト側で抜こうとしている人の責任だと思うので、何度か映像を見ましたが、ノリスは何も悪くなかったと考えています。
■スプリント予選レース導入で気になるパーツ交換とスタート練習
次戦イギリスGPでは、スプリント予選レースが導入されます。スペインGP後のコラムにも書きましたが、F1側はグランプリ週末の3日間をより価値のあるものにしたいと考えていて、その一環で新しいフォーマットが決まりました。
週末のフォーマットが変わるので、それに合わせてレースに向けてのミーティングや作業のスケジュールなども変わってきます。通常であればFP1とFP2のデータを踏まえて金曜日の夜に作業をしますが、イギリスGPではそのデータが半分しかない状態で予選に臨むことになります。
これも以前書いたことですが、新人ふたりにとって、FP1でタイヤを2セット使っただけでは、予選でクルマのパフォーマンスを最大限まで引き出すことは難しいです。たとえばウチのクルマがQ3に進めるくらい速ければ、Q1から徐々に攻めていき、Q3で最大限のパフォーマンスを出せるようにすればいいのですが、現状ではQ1で100%の力を発揮しなければならないので、ふたりにとっては余計難しいところです。
オーストリアGPの前にはFIAやF1、チームが出席した会議が行われ、そこでクラッチの磨耗を考慮してパルクフェルメ下でもクラッチを調整できるようにしてほしいという意見がありましたが、結論から言うと規則自体は変わりませんでした。ただデータを踏まえてFIAに要望を出して、FIAが必要だと判断すれば調整が可能です。これまでであればFP3、予選とレースだけで使っていたクラッチを、週末通して、約750km以上も使わなければいけないので僕たちも気を抜けません。
もうひとつ気になるのはスタート練習です。シルバーストンではピット出口でスタート練習ができないので、グリッドで行うことになっています。ただ予選前にスタート練習ができるのはFP1終了後だけなので、スタートに関するクラッチのデータは1回分しか得られないのです。もしクルマに問題があったり、FP1が赤旗終了となった場合はまったくスタート練習ができないので、1回分のデータがあるか、あるいはゼロかという状態でレースを迎えることになります。見ている方にとっては興味深いことになると思いますが、チーム側としては不安なところです。
(Ayao Komatsu)
関連ニュース
1位 | マックス・フェルスタッペン | 403 |
2位 | ランド・ノリス | 340 |
3位 | シャルル・ルクレール | 319 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 268 |
5位 | カルロス・サインツ | 259 |
6位 | ジョージ・ラッセル | 217 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 208 |
8位 | セルジオ・ペレス | 152 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 63 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 35 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 608 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 584 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 555 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 425 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 50 |
7位 | BWTアルピーヌF1チーム | 49 |
8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 46 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
第23戦 | カタールGP | 12/1 |