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【F1第4戦無線レビュー(1)】「どうしてリカルドのラップタイムを言うの?」噛み合わなかったルクレールとエンジニア

2021年5月14日

 2021年F1第4戦スペインGPの決勝。バルセロナ-カタロニア・サーキットはタイヤに厳しいコースであり、序盤から各車タイヤに苦しんでいた。上位を走るフェラーリでは戦略を巡ってチームとドライバーのやり取りがうまく噛み合わないシーンも。そんなスペインGPを、無線とともに振り返る。


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 タイヤに厳しいカタロニア・サーキットだけに、スペインGPは2回ストップ作戦が定石だ。しかし今年は決勝日の気温が低かったこともあって、タイヤの保ちは予想以上にいいと思われた。そのため1回ストップ作戦を視野に入れたチームも多かった。


 しかしアルファロメオのキミ・ライコネン以外の19台すべてがソフトタイヤでスタートすると、序盤から早くもこんなやり取りが聞こえ始めた。


ニキータ・マゼピン:リヤがもういっちゃってる!
ハース:わかった

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第4戦スペインGP ニキータ・マゼピン(ハース)


 ところが7周目に燃圧低下で角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)がコース上にストップ。セーフティカーが4周の間導入されたことで、少しは楽になったはずだった。ところが15周目には、唯一ミディアムタイヤでスタートしたライコネンまでがこう訴えた。


ライコネン:フロントもリヤも苦しい
アルファロメオ:(先行する)ガスリーにコンマ2〜3秒遅れてるぞ

キミ・ライコネン(アルファロメオ)
2021年F1第4戦スペインGP キミ・ライコネン(アルファロメオ)


 上位勢では3番手を走るシャルル・ルクレール(フェラーリ)に、担当エンジニアのハビエル・マルコス・パドロスが「プランBでいこうと思う」と、打診してきた。プランAが1回ストップ、プランBは2回ストップ作戦と思われる。


 スタート直後にバルテリ・ボッタス(メルセデス)を抜き去って3番手に上がったルクレールは、その後のレースペースも決して悪くなかったものの、結局表彰台に上がることはできなかった。「4位が今の精一杯だった」とレース後語っていたルクレールは、レース中に何度も感情をあらわにした。たとえば3番手を快走していた20周目。


フェラーリ:リカルドは24秒5だ
ルクレール:どうしてリカルドのラップタイムを言うわけ? どうしろというの?


 この時点でダニエル・リカルド(マクラーレン)は4番手ボッタスの後方、ルクレールからは8秒前後離れていた上に、エンジニアの伝えたラップタイムも遅く、追い上げているわけではない。ルクレールならずとも、なぜ? と言いたくなる。


 さらに終盤には、こんなやり取りも聞こえてきた。


フェラーリ:22秒7のペースだ
ルクレール:どうでもいい。ほっといてくれ


 55周目のラップタイムを伝えたと思われる。ルクレールはこの3周前にボッタスがピットインしたことで3番手に上がっていたが、ソフトを履いて2秒以上速いペースで猛追してくるボッタスに抜かれるのは時間の問題だった。ルクレールもそれは十分承知していただけに、「わざわざ言われなくても、わかってる」という思いだったのだろう。


 57周目にボッタスにあっさりかわされたルクレールに対し、ピットインの指示が出た。


ルクレール:何なんだ。何が起きたんだ?
フェラーリ:ボックスだ、ボックス
ルクレール:リスキーだろう
フェラーリ:大丈夫。フリーストップだ

シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2021年F1第4戦スペインGP レース終盤、ミディアムタイヤからユーズドのソフトタイヤに交換するシャルル・ルクレール(フェラーリ)


 ルクレールは背後のセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)に抜かれて5番手に落ちることを心配したのだろう。それまで両者は14秒前後しか離れておらず、ピットインすれば順位が逆転するとルクレールは思っていた。


 しかしペレスのタイヤも限界で、ルクレールの1周前にピットイン。それを確認してパドロスは「大丈夫、フリーストップだ」と言ったのだろう。しかし詳しく説明されてないルクレールは、疑心暗鬼だったはず。このふたり、コンビを組んで長いが、今ひとつしっくりきていない印象だ。


 対照的にマクラーレンのリカルドと、担当エンジニアのトム・スタラードのやり取りは、実に微笑ましかった。46周目の2回目のピットインの直前、スタラードがとんでもない失敗をやらかしてしまう。


スタラード:カルロス……いや違ったダニエル、ボックスだ!
リカルド:ボックス、了解!


 スタラードは去年までカルロス・サインツ(現フェラーリ)の担当エンジニアだった。それで思わず、カルロスと呼んでしまったのだろう。リカルドは「おいおい」と思ったかもしれないが、それで集中力が途切れることなくピットに向かい、6位入賞を果たした。チェッカー後、スタラードがすぐに祝福と謝罪の無線を入れた。


スタラード:6位だ、ダニエル、よくやった。素晴らしい仕事だった
リカルド:一歩前進だね。的確な無線のおかげだよ
スタラード:ゴメン、ちょっと取り乱していて、違う名前を呼んでしまったようだ。結果がよくて、本当によかった
リカルド:そうだよ。すべてよかったということさ


 マクラーレン移籍後のリカルドは、予選ではランド・ノリスを凌ぐ速さを見せてきたものの、レースではずっとチームメイトに負けてきた。それが今回初めて8位のノリスを上回る6位でチェッカーを受けたのだった。

ダニエル・リカルド(マクラーレン)
2021年F1第4戦スペインGP ダニエル・リカルド(マクラーレン)


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(2)に続く



(取材・まとめ 柴田久仁夫)


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2位スクーデリア・フェラーリ584
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