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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第1回】転換期を迎えたハース。若手ふたりがチームにもたらす“ポジティブ思考”に期待
2021年3月26日
2021年シーズンで6年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。今年はミック・シューマッハーとニキータ・マゼピンという若い新人ドライバーを揃えたハースだが、テストを終えた時点でのチームの雰囲気は良いという。チームにとっての“過渡期”となる2021年シーズンに向け、ハースはどう戦っていくのか。現場の事情を小松エンジニアがお届けします。
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プレシーズンテスト(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
#9 ニキータ・マゼピン 総合17番手(1分31秒531/C4)
#47 ミック・シューマッハー 総合19番手(1分32秒053/C3)
いよいよ2021年シーズンの開幕が近づいてきました。今年もまだまだ新型コロナウイルスの影響がありますが、なんとか無事にシーズンを通してレースが開開催されることを願っています。去年は新しいサーキットがあったり、通常より寒いコンディションでのレースがあったりと変化があっておもしろかったかと思います。今年も空力のレギュレーション変更、若手ドライバーの参戦や移籍など変化があるのでおもしろいシーズンになればと思っています。
さて、コロナの影響で遅れが出ましたが、先日やっとバーレーンでのプレシーズンテストを行うことができました。ふたりの新しいドライバー、そして新体制となったチームで初めて迎えたテストでしたが、全体としてはとても上手くいったと思っています。今年はイギリス、バンバリーの工場でクルマを組み立てましたが、イギリスではコロナの状況が悪く制約が厳しいため、フェラーリのパワーユニット(PU)関連のメンバーが渡英できませんでした。よって、初めてエンジンをかけたのが、バーレーンに着いてからの走行2日前となりました。このような状況にもうまく対処することができ、予定通りに無事シェイクダウンを終えることができました。
テストでも初日にPU関連の問題があったものの、それ以外はまったく問題なく走ることができ、チームにとってもふたりのドライバーにとってもいいデータがとれました。その面では本当に満足しています。
しかし、では今年のクルマに速さがあるかどうかというと残念ながらそうではありません。シーズン開幕前からこんなことを言ってしまって「ハースは大丈夫なのか?」と思われる方も多いかと思います。実はこの状況は半年前から予測されていたものです。
昨年は2019年の成績の影響で予算が最初から厳しかったのですが、そこにさらにコロナに追い打ちをかけられ、クルマの速さよりもチームの存続を優先させなければならない状況となりました。クルマの開発も止めましたし、今年のクルマの開発もすべてストップせざるを得ませんでした。
やっとチーム存続のメドが立ち、徐々に2021年の開発を再開し始めたのはもうシーズンも押し迫ってきた頃でした。ここまで2021年の開発が遅れるとどうしても競争力のあるクルマは作れません。そして今年からは予算制限があります。もし今年のクルマを改善しようとすると、2022年のクルマの開発に影響が出てしまうので、今は来年に向けてのチーム作りをしていて、実はもう風洞も来年のクルマ用に稼働しています。ですから、過渡期にあたる今年は残念ながらクルマの競争力不足を受け入れて来年以降の準備をするしかないのです。
新しいふたりのドライバーですが、昨年のアブダビで走っていないニキータはチームにとっても未知数で、僕が彼ときちんと電話で話を始めたのも年が明けてからでした。第一印象はとても良かったですし、シート合わせにイギリスに来て初めて会った時も電話で話した印象通りでした。基本的に自分には何が必要かというのがよくわかっていて、ハッキリとしたコミュニケーションもとれますし仕事をしやすいドライバーです。
実際にテストで走ってみて、いい意味で驚いたのは、彼のフィーリングがいいことです。僕はよくドライバーに「クルマのセットアップ(車高やスプリングの硬さなど)のことは考えずに、とにかく感じたことだけを伝えてほしい」と言っているのですが、彼はそういうことが自然とできるドライバーだと思います。より速く走るためには「クルマにどう動いてほしいのか」、また「この場面では自分の運転でどう対処できるのか」ということを正確に伝えてきます。無駄なことは言わず、言わないといけないことだけをきちんと優先順位をつけて箇条書きのように話すので、こちらはとてもやりやすいです。
またミックが走っている時は自分のレースエンジニアと一緒に一生懸命テストを見ていたし、ミックとエンジニアと僕がどういう会話をしているのかも聞いていて、いろいろ質問もしてきます。莫大な資金だけでF1のシートを掴んだと思われるかもしれませんが、どれだけお金があっても才能がないとF1には上がってこれません。彼には天性の速さも伸び代もあると感じました。
もちろん、プレッシャーがかかった時にどうなるのか、どのレベルでいろんなことをこれから吸収していけるのか、運転自体にどれだけ自分のキャパを使うのかなど、まだまだ未知の部分は多いです。しかしチームにもうまく溶け込んでいますし、良いスタートを切ることができました。
■「弱点や修正点だけ教えてほしい」と要求するミック
一方ミックは、ニキータとはまったく違うタイプのドライバーです。彼は父親(ミハエル・シューマッハー)を見て育ち、いろいろなことを教わっているはずなので、“こうやって振る舞わないといけない”というのが自分のなかにたくさんあり、常に自分に高いハードルを設定していると思います。それはそれでいいのですが、高すぎるハードルを設定しても逆によくないですし、また弱みを見せられないという部分がありそうで、その辺りが少し気にかかりました。
たとえば、今回のテストでは初日に油圧系トラブルが起きてギヤボックスを交換することになりました。セッション終了前になんとかもう一度コースに出ることができたのですが、この時ミックは「一生懸命直してくれてありがとう」、「こういうことはつきものだから、レースで起きなくてよかった」と言ってくれましたが、こういうことを言わないといけないと思っているようなところがあります。平たく言えば、優等生を演じすぎて疲れないかなと思ってしまいます。ですから、彼がある意味『不満を言えるような雰囲気・環境』を作るのも大事なんじゃないかと思います。
それに彼は「うまくいった時には褒めてくれなくていい。弱点や修正点だけ教えてほしい」と言うんです。向上心があって良いという見方もできますが、自分のいいところもちゃんと認識して自信を持たないと、短所ばかり気にしていてはどこかで折れてしまいます。
もしかするとこれも父親からの教えなのかもしれませんが、これが通用するのはすべてがうまくいっている時であって、自分がチームメイトに負けたり思うように結果が出ていない時には心配です。何事もバランスが大事だと思うので、短所を直すことと長所を伸ばすことを上手くバランスを取ってやらないといけないなと思っています。この辺りはこれから付き合っていく上で徐々にお互いの理解を深めながらやっていかないといけないです。
このようにニキータとミックは全然違うタイプのドライバーですが、僕はドライバーをふたりともをルーキーにしてよかったと思っています。昨年の第16戦サクヒールGPでロマン(・グロージャン)の代役としてピエトロ(・フィッティパルディ)を乗せた時にもそうだったのですが、彼ら若いドライバーは学ぶことがたくさんあるので、レース順位に関わらず「ここをもっとうまくやりたい」などと自分からいろいろな前向きなことを言ってくれます。
そうすると、「次のレースではこうやってみよう」とどんどん改善策を考えていけるんです。サクヒールGP直後、僕やスタッフたちは明るい雰囲気でしたし、最下位でレースを終えたのにあれほどポジティブな気持ちだったのは初めてでした。
特に今年はレース結果は厳しいものになるので、どんな状況でもよかったこと・悪かったことを両方きちんと見つめて、次のレースにポジティブな気持ちを持って向かうというのが大事になります。ミックとニキータは、これを一緒にやっていくのにいい選択だと思っています。
■2022年に向け「すべてにおけるレベルアップ」を目標に
昨年の最後のコラムでも書きましたが、チームの組織づくりのためには抜本的な改革が必要です。年明け1月4日から新体制で動き始めていますが、まだまだ新体制での実際の働き方を調整している最中です。
シモーネ(・レスタ/テクニカルディレクター)をはじめとする新しいスタッフたちは、F1のなかでも一番大きなフェラーリから一番若くて小さなハースへ移籍してきました。フェラーリとハースでは、組織の規模、物事の考え方や進め方、優先順位のつけ方など異なる事柄が多いので、会議ひとつをとってもお互いのやり方に慣れるまでに時間が必要です。
僕は効率を重視し、一番上の視点から俯瞰的に物事を見て、このチームに何が必要だというのを考えて、そのなかで優先順位をつけていくようにしているのですが、この点もフェラーリでは異なります。フェラーリではいろいろなことが細分化されているので、自分の分野のことだけを考えて、自分のやっていることがどうしてチームに必要なのかと本当に考える機会や習慣が少ないのかもしれません。
ウチは小さなチームなので、自分のやっていることがなぜチームに必要なのかということをひとりひとりがよく考えてほしいんです。どの仕事をしていても、結局僕たちの仕事はレースであって、最終的な目標は勝つことです。購買担当でもシミュレーション担当でも電気担当でも、みんなどこかでレース結果に関わっている。自分が今やっていることがどのようにしてチームに貢献しているかがわかれば、やる気にも繋がりますよね。
今年の目標は『すべてのレベルアップ』です。2022年にいいクルマを作って、セットアップももっと高いレベルでできるようにして、信頼性の問題も解決して、最適な状態で2022年を迎えられるようにきちんとしたチームにしていきたいと思います。
このような状況のなかでチームに対して伝えているのは、ドライバーが良いレーススタートを決めたり、誰かが良い仕事をした時は、その人にはポジティブにプライドを持って家に帰ってほしいということです。たとえば今年は、ピットストップに重点を置いています。この2年間はチームの士気も落ちてしまっていたので、今年は高いレベルでピットストップやろうと決めてひとつのミッションにしました。クルマが最下位でも、ピットストップの作業時間がトップ10に入っていたら、そこで競争できているということですし、メカニックたちが誇りを持って週末を終えられますよね。
ニキータとミックにしても毎レース改善していかないといけないことがたくさん出てくるはずです。クルマ担当のエンジニアたちには、それがひとつでもふたつでも解決できたらポジティブに捉えて次に繋げようと伝えています。
23レースと過去に例をみない長いシーズンになりますが、今年もよろしくお願いいたします。
(Ayao Komatsu)
関連ニュース
11/22(金) | フリー走行1回目 | 結果 / レポート |
フリー走行2回目 | 結果 / レポート | |
11/23(日) | フリー走行3回目 | 結果 / レポート |
予選 | 結果 / レポート | |
11/24(日) | 決勝 | 結果 / レポート |
1位 | マックス・フェルスタッペン | 403 |
2位 | ランド・ノリス | 340 |
3位 | シャルル・ルクレール | 319 |
4位 | オスカー・ピアストリ | 268 |
5位 | カルロス・サインツ | 259 |
6位 | ジョージ・ラッセル | 217 |
7位 | ルイス・ハミルトン | 208 |
8位 | セルジオ・ペレス | 152 |
9位 | フェルナンド・アロンソ | 63 |
10位 | ニコ・ヒュルケンベルグ | 35 |
1位 | マクラーレン・フォーミュラ1チーム | 608 |
2位 | スクーデリア・フェラーリ | 584 |
3位 | オラクル・レッドブル・レーシング | 555 |
4位 | メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム | 425 |
5位 | アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム | 86 |
6位 | マネーグラム・ハースF1チーム | 50 |
7位 | BWTアルピーヌF1チーム | 49 |
8位 | ビザ・キャッシュアップRB F1チーム | 46 |
9位 | ウイリアムズ・レーシング | 17 |
10位 | ステークF1チーム・キック・ザウバー | 0 |
第19戦 | アメリカGP | 10/20 |
第20戦 | メキシコシティGP | 10/27 |
第21戦 | サンパウロGP | 11/3 |
第22戦 | ラスベガスGP | 11/23 |
第23戦 | カタールGP | 12/1 |