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角田裕毅インタビュー(後編):F1デビューする2021年の抱負と故アントワーヌ・ユベールへの思い

2020年12月22日

 2020年の角田裕毅はFIA-F2選手権での最優秀ルーキー、年間最優秀ドライバー賞に加え、F1も含めたあらゆるカテゴリーから選ばれるFIA最優秀新人賞も受賞した。最優秀ルーキー賞の名前にもなっている故アントワーヌ・ユベールの存在が、「欧州での初勝利を呼び込み、自分のドライビングに磨きをかけてくれた」という。


 ロングインタビュー後編では、2021年シーズンに向けての抱負、自身のバックグラウンド、目標とするドライバー、趣味やオフの過ごし方など、リラックスした雰囲気の中で多彩な話題を語った。
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──2021年の目標は?
角田:
ルーキーらしく、少なくともシーズン中盤頃までは自分のドライビングスタイルを貫いて、ミスをしてもいいから限界値を探りながらF1マシンへの理解を深めていきたいです。チームメイトも手強いし、簡単には任せてもらえないと思うので、彼からも多くのことを吸収したいですね。今の自分のドライビングがどこまで通用するのか、何が足りないのか、そこを明確にしていって、中盤、終盤では増やした引き出しで結果を出して行ければと思っています。具体的には、もちろん優勝や表彰台も狙いたいですけど、できるだけ多くのポイントをチームのために取れたらと思います。


──そもそもF1を志したきっかけは?
角田:
カートレースを始めたのが4歳、4輪は16歳から走っていますが、F1を意識したのはF3を戦い始めた去年からですね。それまでは次のステップに進むことしか考えていなくて、F1は遠い世界過ぎました。


──レッドブル育成ドライバーに選ばれた経緯、具体的にどんなサポートを受けたのか教えてください。
角田:
選ばれた経緯は、全日本F4を戦っていた2年目の7月頃に、ホンダからヨーロッパでのF3テストの機会をいただいたのがきっかけです。ただその時はまだレッドブルとは、翌年F3に上げようとか、そんな話はなかったと思います。ハンガロリンクでの3日間のテストには、たまたまレッドブルジュニアのドライバーたちがほぼ全員来ていました。


 そこで一緒に走って、全員を凌ぐタイムを出せた。中でもF3選手権首位だったダン・ティクタムとは、僅差でトップを奪い合う速さを見せられた。自分としても、すごく楽しいテストでした。そのレポートをマルコ博士が読んで、ホンダに僕のことを訊いてきたようです。そこからレッドブルプログラムに入れてもらったのが、始まりでした。


 レッドブルからは金銭面のサポートはもちろんありましたけど、結果を出して応えないと、すぐに脱落してしまう。逆に結果を出せば、F1テストとか、どんどん引き立ててもらえる。とても厳しい世界でした。フェラーリやルノーの育成は金銭面のサポートはほとんどないと聞いてるし、F1までは自分で頑張ってねという感じらしいので、そこはずいぶん違うなと思いました。しっかり結果を出せば、最大限のサポートをしてくれるという意味で、レッドブルドライバーで良かったなと思っています。


──目標とするドライバーは?
角田:
特にいないんですが、いっしょに戦ってみたいのはルイス・ハミルトン、マックス・フェルスタッペン、フェルナンド・アロンソですね。特にハミルトンやアロンソは、僕が7、8歳の時に富士スピードウェイでF1を見て、そんなドライバーといっしょに戦えるのは、嬉しいしかないです。

■レースを戦えるようトレーニングに励む角田裕毅

──2021年シーズンのチームメイト、ピエール・ガスリーは手強いドライバーだと思いますが、こんなところで対抗したい、あるいはここなら勝てるという部分はありますか。
角田:僕もガスリーのことはすごく気になっているんですが、今まで一度も一緒に走ったことがないので、正直よくわかってません。最終戦アブダビGPに帯同して、クビアトとのデータ比較をした時に、ふたりのドライビングの違い、どういうブレーキの踏み方をしてるとかは見ました。僕自身のドライビングとの比較では、まだ未知の部分ばかりですね。


 いっしょに走っていないので、彼のレースでの凄さも目の当たりにしてない。ただ来季少なくとも中盤までは、最初にも言ったようにあまり他のドライバーのことは気にせず、自分の走りに集中しようと思っています。もちろん本物の実力の持ち主だと思うし、彼から多くを学んで、自分の成長に活かすつもりです。最終的に彼を負かせるような、そんなシーズンになれたらいいですね。


──角田くんが今のハミルトンと同じ35歳になる15年後、その時もぜひF1を続けていてほしいですが、その時のF1はどうなっていると思いますか。
角田:
F1のクルマ自体が、どうなっているか。おそらく燃料はバイオ系の、環境に優しいものになってるでしょうね。ドライバーとしては、エンジン音がどんどん静かになっていくのは少し寂しい。でもそこは、仕方ないんでしょうね。もしかしたら、電気F1になってしまうかもしれない。でもそうなった時のファン離れもF1は危惧して対策を講じるでしょうし、何よりF1の速さ自体は変わっていないでしょうね。内燃機関は残して、電気エネルギーの比率を増やすとか、いろいろ変わっていくと思います。


 2030年までF1に残れてるとしたら、この世界で実力を示して、何度か優勝もしてるんだと思います。自分としては2035年ぐらいまで、乗り続けたいですね。ハミルトンがシューマッハに並ぶ7回目のタイトルを取りましたし、それを抜けたらいいですね。


──日本人のファンに、自分のどんなところを注目してもらいたいですか。
角田:
自分の強みは攻めるドライビングだと思うし、見て迫力のあるドライビングには自信があります。これからF1をご覧になる方には、F1にしかない速さ、見たことのないコーナリングの速さとかを堪能してもらえれば嬉しいです。まだまだ厳しい状況が続いていますが、来年の日本GPがぜひ予定通り開催されて、そこで僕の走り、中でもオーバーテイクや、ブレーキングをギリギリまで遅らせる技術を、直接ご覧になって、体感していただければと思います。


──オフの時はどんなふうに、気持ちの切り替えをしてるんですか。今ハマっていることとか、ありますか。
角田:
日本に帰ってきて、久しぶりの日本食を堪能しているところです。と同時に、初めてF1マシンに乗った時に首への負担があまりに大きかったので、レースをちゃんと戦えるよう、とにかくトレーニングに励んでいます。それ以外ではオンラインゲームが好きで、レース関係や学校時代の友人とゲームしてますね。イギリスがロックダウンで外出できない時も、友達と話しながらゲームに興じて、楽しみながらロックダウンを切り抜けることができました。アウトドアも好きで、こういう状況じゃなかったらウェイクボードやゴルフも楽しみたかったです。


──今年様々な賞をもらったことへの気持ちを聞かせてください。
角田:
F2新人賞のアントワーヌ・ユベール賞は、特に感慨深いというか。僕がF4を走ってる時に、彼はGP3/F3でチャンピオンになって、一度はいっしょに走ってみたいと思っていたドライバーでした。僕もF3でその場にいたベルギーで亡くなってしまった時には、本当に衝撃を受けました。


 彼の最初から最後まで攻めるスタイルは、僕も憧れていました。なので自分のドライビングに一度取り込んでみようと、ベルギー翌週のモンツァで試してみたんですね。そのおかげもあって、ヨーロッパに来て初めて勝つことができた。彼のスタイルが、僕に合ってるんだなというのもわかった。彼がヒントを与えてくれたというか、僕のドライビングに磨きをかけてくれた存在でした。本当に感謝しています。いっしょに戦うという願いは叶いませんでしたけど、この賞を彼からもらったのは本当にありがたいし、大切にしたいです。


 FIAの新人賞は、正直取れると思っていませんでした。驚きでしかなかった。この賞の対象にはF1のルーキーも含まれるし、世界的な大きな範囲の中でルーキートップになるのは簡単なことじゃない。そこで選んでいただいたのは、驚きでした。ヨーロッパに来て2年目という短い時間の中での受賞は光栄ですし、来年以降の励みになります。

帰国後に行われた角田裕毅のリモート会見
帰国後に行われた角田裕毅のリモート会見



(取材・まとめ 柴田久仁夫)


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