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ホンダF1甘口コラム 第17戦アブダビGP:レッドブル側に有利となった走行距離によるPUの性能劣化

2020年12月21日

 ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブルの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レッドブル・ホンダの走りを批評します。今回はF1第17戦アブダビGPの週末を甘口の視点でジャッジ。

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 2020年の最終戦となった第17戦アブダビGPを、ホンダは最高の形で締めくくった。

 まず予選で、フェルスタッペンが2020年シーズン初、通算3度目のポールポジションを獲得。1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンが導入された2014年以降、ヤス・マリーナ・サーキットは、メルセデスが全戦でポールポジションを獲得してきたメルセデスの牙城だった。その牙城を最初に崩したのがホンダとなった。

 ホンダがポールポジションを獲得したのは、2019年第20戦ブラジルGP以来、約1年ぶり。

 また、このアブダビGPではフェルスタッペン以外の3台も予選で速さを発揮した。

 じつはアブダビGPはホンダにとって、鬼門のグランプリのひとつだった。それはアブダビGPの舞台であるヤス・マリーナ・サーキットはロングストレートが2本あるだけでなく、最終セクターが市街地コースのようにコーナーが連続するため、ダウンフォースをつけないと速く走ることができない。当然、空気抵抗が増し、パワーユニット(PU/エンジン)の性能差が出やすくなる。

 ホンダがF1に復帰した2015年以降、マクラーレンとの3年間でQ3へ進出したのは2016年のフェルナンド・アロンソの1回だけ。トロロッソとパートナーを組んだ2018年も、2台そろってQ1落ち。トロロッソに加え、レッドブルにもパワーユニットを供給した2019年は、レッドブルは2台ともQ3に進出したが、トロロッソはガスリーが12位、クビアトが14位といずれもQ2どまりと苦しんだ。

 それが2020年のアブダビGPでは、ホンダ製パワーユニットを搭載するレッドブルとアルファタウリがいずれもQ3へ進出し、全4台が予選トップ10入りを果たした。

 レッドブル・ホンダにとって、2020年シーズンの初ポールポジションは、F1にとってもメルセデス製パワーユニット搭載車以外で2020年初となるポールポジションでもあった。アブダビGPでホンダのパワーユニットがメルセデスを凌ぐパワーを披露していたのは、今回のアブダビGPの予選トップ10の顔ぶれを見てもわかる。

 予選トップ10をパワーユニット・マニュファクチャラー別に多いに並べると、ホンダが最多の4台。これにメルセデスが3台で続き、ルノーは2台。最も少ないのはフェラーリの1台だった。

 今回、メルセデスに精彩がなかった要因の一つには、終盤戦で相次いだMGU-Kのトラブルの原因が特定されていなかったため、メルセデスがすべてのメルセデス製パワーユニットに対して、パフォーマンスを少し落として使用していたことが考えられる。

 ただし、それはメルセデス側も「順位が変わる大きなものではない」(アンドリュー・ショブリン/トラックサイドエンジニアリングディレクター)と言っているように、たとえメルセデスが出力を制限していなくとも、アブダビGPでホンダ・パワーがメルセデスを凌駕していた可能性は高い。

 だからといって、ホンダのパワーユニットがメルセデスを上回ったというつもりはない。そもそも2020年はレギュレーションによってパワーユニットはアップデートすることは許されておらず、シーズンを通して開幕戦の仕様を使っていたからだ。

 しかし、エンジンもタイヤと同じように走行距離が延びれば、性能が徐々に劣化していく。つまり、最終戦アブダビGPはどのチームのパワーユニットも最も使い込んだ状態にあった。つまり、仕様は開幕戦と同じであっても、その性能は開幕戦とは異なる状況で各チームが最終戦に臨むことになった。その状況の中で、ホンダのパワーユニットは、フェラーリ、ルノーはもちろん、メルセデスをも上回るパフォーマンスを披露していたと言っていいだろう。

(Masahiro Owari)


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