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角田裕毅インタビュー(前編):2020年はメンタル面の成長を実感「弱点だった緊張や焦りが解消された」

2020年12月21日

 F1デビューを決めた角田裕毅選手が、日本に帰国してすぐのリモートインタビューに応じた。居住するイギリスは再度のロックダウンが始まり、新型コロナウイルス感染症の変異で他国との行き来にも厳しい制限がかかったばかり。まさに間一髪の帰国だった。


 年明けまでは母国で大好きな和食を堪能しながら、トレーニングにも励むという角田選手。インタビュー前編では、F1昇格が決まるまでのこの1年の戦い、特に2020年シーズンで大活躍する大きな要因となった、『メンタル面の成長』について、詳細に語った。


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──F1デビュー決定、おめでとうございます。
角田:
ありがとうございます。今年はF1参戦に必要なスーパーライセンス取得を目標に、1年間頑張ってきました。シーズン前半は苦しんだものの、後半でなんとかまとめ上げて、選手権3位の結果を出すことができました。今まで応援、サポートしていただいた方々に、本当に感謝です。


──アルファタウリ抜擢の決め手となったのは、何だったと思いますか。
角田:
一発の速さでしょうか。F2予選でポール・トゥ・ウィンを4回取った。そこを特に、ヘルムート・マルコ博士が評価してくれたのかなと思います。もちろんレースでの勝利も考慮してくれたでしょうし、タイヤの持たせ方も重要でした。バーレーン1戦目で、最下位グリッドから6位まで上げた際のオーバーテイク技術も評価してくれたと思います。でもそれ以上に、1周しか持たないタイヤで最速タイムを出す。そこが一番だったのかなと。


──契約の際、どんな気持ちでした?
角田:
いざ目の前に契約書が置かれたときは、手汗がすごく出ました(笑)。汗で滑らないよう、(ペンを)しっかり握って名前を書いたり、最後にマルコさんやクリスチャン・ホーナー代表と握手する際にも、「手汗がすごいよ」って言ったのを、すごく覚えています。


──F1最終戦後に行われたアブダビテストは、どんな感触でしたか。
角田:
最新のF1マシンを運転できて、新鮮な経験でした。ミディアムタイヤでできるだけ距離を稼いで、F1マシンに慣れるのが最大の目的で、それは十分に達成できたと思います。午前中はピットイン、アウトを頻繁に行って、エンジニアとの意思疎通を意識して取りました。午後はロングランで、最後には自分でもタイヤの使い方に納得できる走りができました。


 ソフトタイヤでの予選シミュレーションも何回かやって、5番手という悪くないタイムを出すことができた。ただ1週ごとにモードを変えながら走るという経験はF2までやったことがなく、ステアリングの操作を間違えて、リチャージモードに入れてしまったり、完璧な走りではなかった。それも含めて、いい経験になりました。あとは肉体改造ですね。F1マシンの強大なGに耐えられるよう、特に首の強化トレーニングをしっかりやっていこうと思います。

■ヨーロッパでの戦いで成長を実感したこと

──今年のレース中、これはヤバイなと思った瞬間はありましたか。
角田:
危険だなという意味では、スパのオールージュでしたね。あそこは全開で行けるか行けないかギリギリのコーナーなんですけど、予選でポールポジションを取ったときには、その時だけ全開でした。オーバーステアが軽く出るくらいギリギリで、一歩間違えれば時速300kmでバリアに突っ込んでしまう。そこは避けたいし、勇気がいったし、スリリングなコーナーでしたね。


 バトル面では、バーレーン2戦目レース1の、マゼピンを1コーナーで抜いたときですね。首位を走っている彼が抜かれたくない気持ちだったのは、すごくよくわかる。僕が前にいても、少しはブロックしますし。なので寄せてくるだろうとは、予想していました。でもまさかピットロードの壁ギリギリまで寄せるとは想定外で、あとほんの少しでぶつかって、ポイントが取れなかった。そうなれば、今こうして、この場でお話もできていなかったと思います(苦笑)。その意味であのオーバーテイクは、やばかったですね。


──ヨーロッパに来てからの2年で、自分で成長を実感した最大のことは何でしょう?
角田:
特にこの1年間で大きく成長したと思うのは、メンタル面ですね。ドライビングもタイヤマネージメントは、F3からF2に来たこの1年で改善しました。でもそれ以上に、メンタルが大きかったです。F2に上がった際にメンタルトレーナーをつけてもらって、予選やレースにどんな気持ちで入っていくか、実際にはどうだったか、ダメだったところはどう改善したらいいのか。毎回みっちり話し合いました。


 シーズン前にまず僕の性格や考え方を知るために、テストを受けました。その結果から、僕が先のことを考えがちだというのをトレーナーは把握していた。今年スーパーライセンスを取れなかったらどうしようとか、このレースをしくじったらどうしようとか。その分、緊張も増すし、焦りも出る。そこが僕の弱点でした。


 それを改善するために、ふたりで試行錯誤しながらいろんなことを試していった。シーズン中盤ぐらいには、目の前のことに集中できるようになった。予選直前だったら1コーナーでのブレーキングや、シフトダウンのやり方とか、それだけしか考えない。あるいはフリー走行ではエンジニアから走行プランを渡されるんですけど、そのプランの遂行だけを考えるとか。それができるようになったおかげで、緊張や焦りはずいぶん解消されましたね。


 それから僕は、けっこう熱くなりやすい性格だったんです。アタック中に誰かに邪魔されると、無線でわあわあ叫びがちだった。それは止めた方がいいとチームからも言われていて、実際叫んでる時とそうでない時と、結果も雲泥の差だったんです。一番の例がバーレーンの2連戦で、1戦目はフリー走行で赤旗中断とかアタック中に邪魔されたりで、言わないようにしようと思ってたのに、無線でわあわあ言ってしまった。そしたら予選で焦りが出たんでしょうね、渋滞や赤旗に捕まる前にタイムを出そうとしてスピン、グリッド最下位になってしまった。


 2戦目は完璧な週末にしようと心がけて、その時のフリー走行も何度も邪魔されたりしたんですが、叫ぶのはグッと抑えたんですね。それで次の周にアタックし直すとか、当たり前だけど今までできなかったことが、できるようになった。結果的にまったく違う週末になって、それが選手年3位、スーパーライセンス取得につながった。もちろんまだ改善の余地はありますけど、そこは大きく変わりましたね。
(後編に続く)

アルファタウリで初のF1テストに臨んだ角田裕毅
アルファタウリで初のF1テストに臨んだ角田裕毅



(取材・まとめ 柴田久仁夫)


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