ホンダがパワーユニットを供給しているレッドブル、トロロッソの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のレッドブル、トロロッソのコース内外の活躍を批評します。2019年F1最終戦アブダビGPを甘口の視点でジャッジ。
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最終戦アブダビGPで、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンはメルセデスのルイス・ハミルトンに続いて、2位でフィニッシュした。
優勝以外は、みな敗者と言われるレースの世界で、2位という結果に満足していてはいけないが、F1マシンには得意なサーキットとそうでないサーキットがあり、ヤス・マリーナ・サーキットは明らかにメルセデスに有利なコースだった。パワーユニット(PU/エンジン)が導入された2014年以降、アブダビGPでは予選もレースもメルセデスが最速だったからだ。
逆にレッドブルは、2014年から2018年までの5年間での最高位は、予選が2016年のダニエル・リカルドの3番手で、レースが2018年のフェルスタッペンの3位だった。今回のアブダビGPでのレッドブル・ホンダの予選3番手(2番グリッドスタート)と、2位というレース結果は、パワーユニット時代に入ってからの最高位。ホンダの今シーズンの好成績は、レッドブルというトップチームと組んだことだけが理由ではなく、ホンダもしっかりとした進化を見せていたことを忘れてはならない。
それでも、その進化にホンダは決して満足してはいない。アブダビGPではレース中にフェルスタッペンのパワーユニットに「スロットルを開けても、すぐに反応しない」(フェルスタッペン)という症状に見舞われた。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターによれば、
「まだ、調査しないとわかりませんが、PU側のコントロール系(ソフトウェア)の問題だと見ています」というホンダ側のトラブルだった。今シーズン、これまで経験していない問題で、アブダビGPでも土曜日までは出ていなかった問題だった。
この問題はレース中に解決することはなく、無線でラグが出にくいセッティングを何種類か試してもらい、そのうえで適正なセッティングで走行してもらうことで対応した。途中、無線で出された「エンジン11、ポジション8」という指示は、その中のひとつだったと思われる。
その問題は「これが起きなかったとしても、今日は2位が精一杯。アブダビはメルセデスに向いたコース。彼の方がここでは一枚上手だった」と、フェルスタッペンがレース後に語ったように、トラブルと言うには相応しくない小さな不具合のようなものだった。
それでも、レース後、田辺豊治F1テクニカルディレクターは「小さくてもトラブルです」と言い切り、こう続けた。
「今日は前も後ろも離れていたので、この問題がなくても、結果的に順位に影響を及ぼしませんでした。でも、もし接戦だったら、どうなっていたかわからない。そもそも、本来そんなこと(パワーユニットの制御系のトラブル)はあってはならないこと。許せません。大変申し訳ない」
トラブル自体は決してほめられることではない。しかし、トラブルを出すということは、まだそこに改善する余地が残されているということ。昨年もホンダは最終戦でトラブルを出した。しかし、その苦い経験が、オフシーズンにホンダはより一層強くし、今シーズン躍進する原動力となった。アブダビGPでのトラブルを、2020年にさらに大きく飛躍するためのジャンプ台にしてほしい。
(Masahiro Owari)