シリーズは後半戦に入り、ヨーロッパ、フランスと2週続けての連戦となる。カナダGPでついにミハエル・シューマッハーがポイントランキングでキミ・ライコネンを抜きトップに踊り出た。コンストラクターズでもフェラーリがマクラーレンを逆転し、5年連続タイトル獲得に向けフェラーリの勢いはカナダGPでさらに増した。
ヨーロッパGPの舞台となるニュルブルクリンクは、低速から高速コーナーまでさまざまなタイプのコーナーが存在し、マシンのトータルパッケージが問われるサーキットだ。本来ならマクラーレンはここで待望の新車MP4/18を投入し、これ以上フェラーリからポイントを離されたくないところだ。しかし、新車のデビューは当初の予定より遅れ、2連戦の後に控えるイギリスGPまで実戦投入は先送りされそうな気配だ。今季2勝を挙げているとはいえ、さすがに旧車ではフェラーリやウイリアムズ、ルノーを相手にするには少々キツイ状況となってきた。マクラーレンとしては、新車がデビューするまでは、少しでも多くのポイントを重ねるというレース運びを強いられるだろう。
マクラーレンの2台よりフェラーリに警戒されるのが、ウイリアムズとルノーだろう。モナコGPのファン-パブロ・モントーヤの勝利、ラルフ・シューマッハーの2戦連続ポール獲得とウイリアムズは上り調子。カナダGP決勝ではラルフがトップをいくミハエルを追い詰め、ようやくFW25は戦闘力を増してきた。しかし今年のウイリアムズはコースによって浮き沈みが激しい。エンジンパワーやトラクションがモノを言うサーキットでは好走をみせるが、空力がカギになるサーキットを苦手としている。バラエティに富んだコーナーが配置されるニュルで、どんなパフォーマンスを見せるのか注目したい。
マクラーレン、ウイリアムズと同じミシュランユーザーのルノーは、非力なエンジンにも関わらず、減速から一気に加速するようなコーナーがあるカナダGPでも、トップチームに引けを取らないパフォーマンスを発揮した。R23は、シャシー、サスペンション、空力も含めたパッケージの良さでパワー不足をカバーしており、特にタイヤに合わせて開発されたという新フロントサスペンションによって、ニュルでもフェラーリを脅かす存在になり得るだろう。
今年のF1は上記のトップ4チームとそれ以下のチームの格差が激しく、上位8台がトラブルを起こさないかぎり、それ以外のチームが入賞圏内に食い込むのが難しい状況になりつつある。トヨタはバージョンアップしたエンジンを、BARも新エンジンを投入したものの、トップ4との間には大きな壁が存在する。カナダGPで今季2度目の入賞を果したトヨタにとってニュルは、ファクトリーから一番近い、言わばホームグランプリ。しかし、絶対的な速さが不足する現在の状況では、上位陣にトラブルが出ないかぎり上位フィニッシュは難しいのかもしれない。同様のことはBARにも言え、こちらは速さに加えて信頼性の確保も必要だ。また、イギリスGPで空力を見直した改良版を投入するジョーダンにとってもそれまでは我慢のレースが続く。
とはいえ、ニュルは雨が多く過去8回の開催で3度ウエットレースとなっている。もし雨になればウエット性能に優れたブリヂストンを履くジョーダン、ザウバー、ミナルディにもチャンスあり。ちなみにヨーロッパGPでマクラーレンのデイビッド・クルサードとザウバーのハインツ-ハラルド・フレンツェンが150戦目、ミナルディのヨス・フェルスタッペンが100戦目のグランプリ出走を迎える。これらベテラン勢の節目のレースでの活躍も期待したい。