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F1 Topic:規則の盲点を突き、新たな『アウトウォッシュ』を生み出すF1エンジニアたち
2019年2月17日
2月14日(木)にフェラーリのプライベートサーキット、フィオラノのテストコースでシェイクダウンを行なったアルファロメオの斬新なフロントウイングが話題となっている。注目されているのは、レギュレーションが変更されたフロントウイングだ。
2019年のフロントウイングは、ウイング上に設置されていたカスケードウイングやそのカスケードウイングに装着されたフィン、さらに翼端板の外側と後端に取り付けられたカナードなどの空力パーツは禁止された。
これらのパーツは、フロントタイヤで発生する乱流を翼端板からタイヤの外側へ向かう気流(アウトウォッシュ)によって浮き飛ばす役割を果たしていた。乱流をなくすことで、タイヤの内側からフロア下に流れる気流が乱流の干渉を受けずに、結果的にダウンフォースが増加させることができるからだ。
しかし、この『アウトウォッシュ』は、後方を走るマシンにとっては巨大な乱気流となるためコーナーで接近できず、コーナーの立ち上がりで置いていかれ、結果的にストレートでオーバーテイクできないという悪影響を招いていた。
そこでFIAは2019年から翼端板周辺に取り付けられていたさまざまな空力パーツを禁止して、『アウトウォッシュ』を制限しようとした。
ところが、今回のレギュレーション変更には盲点があった。それはフロントウイングの全幅が1800mmから2000mmへと200mm伸びたことだ。理由は、翼端板周辺の空力パーツ禁止によって減少するダウンフォースを『アウトウォッシュ』を発生させることなく、補うためだった。
しかも、これまでは翼端板周辺に設置された空力パーツによって、タイヤの内側から外側へ向かって風を当てて『アウトウォッシュ』を発生させていたが、今年は片側100mmずつフロントウイングが広がったために、フロントウイングのフラップによってフロントタイヤがほぼ隠れることとなった。
だが、ここに目をつけたのが、F1の優秀なエアロダイナミシストたちだった。フロントタイヤの直前に位置するフラップの面積を減らすことで、翼端板内側とフロントウイングの間に、新たな『カスケード』の役割を作り出し、その気流をフロントタイヤに当てて、『アウトウォッシュ』を生み出した。それがアルファロメオの斬新なフロントウイングだった。
■トロロッソ・ホンダのフロントウイングも新仕様
このアイディアはアルファロメオだけが採用しているわけではない。2月11日(月)にインターネット上で新車STR14を発表したトロロッソ・ホンダのフロントウイングも、2月13日(水)にイタリア・ミサノで行われたシェイクダウンでは11日に公開された写真とは異なるフロントウイングを装着していた。
異なっていた点は、アルファロメオの斬新なフロントウイング同様、フラップの翼端板寄りの形状だ。アルファロメオのフラップは角度を調整する部分でまったく異なる面積のフラップが取り付けられ、フラップの内側と外側で大きな段差が生じているが、トロロッソは翼端板に近くなるにつれて先細り(テーパー状に)する形状にして、フロントウイング全体で翼端板内側を流れる空気をフロントタイヤ外側へ流す通り道を確保しているように見える。
このアイディアは、何もアルファロメオとトロロッソだけが取り入れているわけではない。16日に発表されたフェラーリも、トロロッソ・ホンダと同様、テーパー型フラップを採用していた。
ただし、すでにシェイクダウンを済ませているメルセデスやレッドブル・ホンダのフロントウイングのフラップは、アルファロメオの段差型でもなく、トロロッソ・ホンダやフェラーリのテーパー型でもなく、内側から外側に向けてほぼ同一の面積の従来型フラップを採用していた。インターネットで新車を公開しているチームの多くも、従来型フラップを採用していた。
しかし、メルセデスやレッドブルといったトップチームが、テストに異なる空力パーツを持ち込むことは珍しいことではない。また、インターネット上で新車を公開したチームの中にも、テストでは異なるフロントウイングを採用してくるところが出てきても不思議はない。
2月18日からスタートするバルセロナ・テストで、各チームがどんな形状のフロントウイングを投入してくるのか、注目したい。
(Masahiro Owari)
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