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【インタビュー】レッドブルF1テクニカルディレクター「勝ち続けるにはホンダを選ぶ必要があった」

2018年7月4日

 レッドブルでエイドリアン・ニューウェイの片腕として車体開発部門を統括するピエール・ワシェに、レッドブル・ホンダの可能性について聞いた。  


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2018年F1フランスGP 2019年からの提携が決まったレッドブルとホンダ

──レッドブルとホンダが組むことが、正式に発表されました。
ピエール・ワシェ(以下:ワシェ):
素晴らしい機会が到来したと、ワクワクしてるよ。レッドブルが今後いっそう飛躍するために、自動車メーカーと特別な関係を結ぶことこそ、最も望んでいたわけだからね。ホンダはレッドブル・グループのためだけに、全力を注いでパワーユニットを開発してくれる。われわれにとって、完璧な提携だ。


──とはいえチーム内には、依然として懐疑論も渦巻いていると聴いています。特にあなた方エンジニアたちは、はたしてホンダがルノーと同じ、あるいはそれ以上のパフォーマンスを出せるか疑問に思っていると。
ワシェ:
確かにわれわれはルノーと長年やってきて、頂点を極めてきた。その長い歴史を否定するつもりは、まったくない。彼らは素晴らしいパートナーだった。しかし、ルノーがワークスチームとして再出発して以来、両者の関係が変わってきたことも確かだ。


 レッドブルのDNAは、勝ち続けることだ。その道を歩み続けるのに、今のルノーとの関係では限界がある。選択肢としてはホンダしかなかったし、たとえばフェラーリやメルセデスがパワーユニット供給を承諾してくれたとしても、それは果たして最上のものだと言えるのだろうか。


 ホンダとのパートナーシップこそが取るべき正しい道だったと、今は僕たちエンジニアも納得しているよ。


──ホンダのエンジニアとは、すでに話をしましたか?
ワシェ:
いや、まだしてない。


──ホンダF1テクニカルディレクターの田辺豊治さんとも?
ワシェ:
ほんの挨拶程度だね。本格的な技術ミーティングも、近いうちに入ることになると思うけど。


──これまでのホンダ製パワーユニットの進化の具合を、注視してきたと思うのですが。
ワシェ:
主にカナダでのアップデートだね。それは詳細に分析した。非常に順調なステップだと感じたよ。こんなに順調な進化は、これまでなかったんじゃないかな。


──それは主にGPSデータの分析ですか。
ワシェ:
そうだね。


──しかし信頼性の問題は、依然として不安要素です。
ワシェ:
性能向上を攻めている時には、信頼性の問題も出るものさ。トレードオフの関係なわけだから。でも致命的なものだとは思わないし、全然心配してない。必ず短期間で対策を講じてくると信じてるよ。壊れないけど戦闘力がないよりは、ずっといい。


──しかし純粋なパフォーマンスでも、ルノーにはまだ追いつけていないのでは?
ワシェ:
いや、そうは思わないね。


──そうなんですか。
ワシェ:
詳細はコメントできないが、われわれはそう考えている。

2017年アゼルバイジャンGPに登壇したピエール・ワシェ


──ところで今年から、レッドブルのテクニカル・ディレクターに就任したんですよね。
ワシェ:
その通り。


── 一方でマシンデザインは、エイドリアン・ニューウェイの専任事項ですか。
ワシェ:
肩書きは変わったけれども、私の仕事自体は以前とほぼ同じだ。開発全体を統括する立場だね。


──ニューウェイは、チーフデザイナーですか?
ワシェ:
いや。チーフテクニカルオフィサーだ。これまた開発全体を統括するんだが、よりマシンデザインに特化しているというのかな。われわれ二人で緊密な協力関係を築いてるし、彼との仕事は本当に楽しいよ。そしてニューウェイのようなエンジニアと働けることを、誇りに思っている。


──来季のニューマシン開発に、ニューウェイはどの程度寄与しているのでしょう?
ワシェ:
いずれにしても一人でF1マシンは作れないからね(笑)。ニューウェイを中心としたチームワークということだよ。


──今季のRB14の開発に、ニューウェイは例年以上に関わっているとのことでした。
ワシェ:
その通り。


──来季のRB15は、どうなんでしょう。
ワシェ:
まだ確定してない。今、その計画を立てつつあるところだ。


──ニューウェイはルノーには、移籍しないんですか?
ワシェ:
それはないね。


──あなた自身は?
ワシェ:
もっとないよ(笑)。レッドブルでニューウェイや他の優秀なスタッフと働くことに、十分満足しているからね。それに来季は、ホンダとの新たなチャレンジが始まるわけだし。


──レッドブルとトロロッソの関係ですが、車体開発のデータは共有しませんよね。
ワシェ:
もちろんだ。レギュレーションで禁じられているし。一方でトロロッソはギヤボックスをうちから買っている。正確にはレッドブルテクノロジーという技術会社からね。シミュレーターも、そこの施設を有償で使っている。


──来季ホンダ製PUを搭載することで、車体コンセプトを変える必要が出てくる可能性は?
ワシェ:
どこのパワーユニットを積むかよりも、来季の車体レギュレーションにより影響を受けるだろうね。いずれにしても空力も足回りも、少なからず変更することになると思う。


──ホンダ製PUのコンパクトさは、レッドブルの車体にとって大きな武器になるのでは?
ワシェ:
そこはまだ検討してないから、何とも言えない。そうなるといいけどね。

2018年F1第9戦オーストリアGPで優勝を飾ったマックス・フェルスタッペン
2018年F1第9戦オーストリアGPで優勝を飾ったマックス・フェルスタッペン



(取材・文 柴田久仁夫)


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