トヨタのF1ルーキー、クリスチアーノ・ダ・マッタは、今週末のブラジルGPでポイントを記録するのが決して容易ではないことをよく承知している。だが、彼はこのインテルラゴスで“障壁を乗り越える”のには慣れているという。
レース小僧だったダ・マッタは、サーキットに潜り込んで彼のヒーローたちのバトルを観戦するためにありとあらゆる手段を試み、サーキットの敷地やF1のパドックを囲むフェンスをよじ登るくらいは彼にとって何でもないことだったのだ。
「サーキットには入れても、F1を間近に見るにはやはりフェンスを破らなければならなかったね」とダ・マッタ。「1993年には僕の父がサポートレースに出ていた。僕らはF1のパドックには入れてもらえなかったけど、どうしてもF1マシンを近くで見てみなくちゃと思った。それで何とかパドックへ忍び込む方法を考え出したのさ」
もちろん、今日のダ・マッタは堂々とその“聖域”に入る許可を与えられている。ブラジル人である彼にとって、インテルラゴスでのレースはすでによく知っているコースを走れるありがたい機会でもある。彼がここで最後にレースをしたのは9年前の1994年だが、それでもこのコースのユニークな性格が、今年のTF103の真のポテンシャルを示すチャンスを与えてくれることを期待している。彼とチームメイトのオリビエ・パニスが駆るマシンは、いまだ十分な信頼性を確立したとは言いがたいものの、ザウバーやルノーといった中団グループのレギュラーと互角に戦うだけのスピードは持っているのだ。
「まだチームとしての経験が不足していて、一部のサーキットでは車がいいのか、よくないのかの見極めがつかないことがあるんだ。だけどインテルラゴスはとてもユニークなサーキットで、F1チームがテストに使っているヨーロッパのコースのどこにも似ていない。確かに言えるのは、昨年トヨタがインテルラゴスではかなりよかったということだけだ。僕自身が9年前にレースをした経験が役に立つかどうかはわからないけど、まったく知らないサーキットよりははるかにマシだと思うよ」
もしもダ・マッタがこの週末にF1初ポイントを記録すれば(またはルーベンス・バリチェロか、もうひとりのルーキー、アントニオ・ピッツォニアがポイントを獲れば)、近年のF1史上最も不思議な記録のひとつが破られることになる。というのも、10年前にアイルトン・セナが優勝して以来、ブラジリアンはこのグランプリで一度も優勝しておらず、それどころか94年にセナが亡くなった後、ブラジル人は1ポイントも獲得していないのだ。
「もしポイントを獲れれば、それがアイルトンが亡くなった後のブラジル人の初ポイントであろうが何だろうが、僕にとってうれしいことには違いないよ」