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【F1新車分析】レッドブルRB14:昨年型フェラーリを模倣しつつも独創性は健在

2018年2月22日

 F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。レッドブルRB14のサイドポッドやフロントサスペンションなど気になる部分をピックアップ。 
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・レッドブルよ、お前もか
 これまで発表されたニューマシンは今回のレッドブルも含め、いずれもサイドポッドに大きな変更を加えている。しかも揃いも揃って、フェラーリのSF70Hの模倣と言っていい。


 それほど昨年のフェラーリのモノコックデザインは、ライバルたちに大きな衝撃を与えたということだろう。

2018年レッドブルRB14

 その特徴は2本あるサイドインパクトバーのうちの1本の位置を、下げたことにある。サイドポンツーン基部にあるバーはそのままだが、上部のバーは空気取り入れ口の上端と同じ位置まで下げられた。その結果、ハロの装着によって上がった重心が、ある程度下がる効果は出ているはずだ。


 RB14に関しては、開口部の面積もかなり小さくすることに成功している。開口部が小さくなればなるほど、その下部の空間(青い矢印)を大きく取ることができる。もともとレッドブルマシンの空気取り入れ口はコンパクトなデザインだったが、今回はさらに小さくなった。


 この空間はマシンの空力効率を考える上で、非常に重要な領域である。マシン前方から流れて来た気流が、サイドポッド周りを迂回してリヤへと抜けるポイントとなるからである。


 RB14はサイドポッドのいっそうのコンパクト化と下端の位置を上げたことで、モノコック周りの気流をいっそう滑らかに、そして当初の勢いを大きく損なうことなく、リヤへと流せるようになった。カウル表面からの気流の剥がれが少なければ少ないほど、より多くの整った流れがリヤエンドのディフューザーへと流れ、強大なダウンフォースを生むことになる。


・もはやサイドポンツーンは存在しない?
 昨年型のフェラーリを模倣したかに見えるRB14だが、レッドブルらしい独創性も健在だ。サイドポンツーンがないかと思えるほど、マシン両側の膨らみが小さいのである。

2018年レッドブルRB14とRB13の比較

 普通この部分は、ラジエターが存在を大きく主張している。ところがRB14は写真で見るように、平坦といっていいほどボリュームがない。断面図は、ほとんど三角形。かつてのRB6、あるいは1991年のランボルギーニを思わせる形状になっている。


 マシンリヤへの気流の流れは、ここでも非常に良好であろうことが想像される。昨年のRB13も極限まで空気抵抗を減らすことを目指したマシンだったが、風洞とのデータ整合に失敗して本来の性能を発揮できなかった。しかしエイドリアン・ニューウィはそのコンセプトの実現を、決してあきらめていないようだ。


・類似点と相違点
 それどころかRB14は、RB13の考えをかなり過激に突き詰めている。昨年のレッドブルマシンも、相当にサイドポンツーンは絞り込まれていた。しかし今季型をハースやウイリアムズの新車と比較してみると、後者2台と開口部のデザインは似ているにもかかわらず、その後方の湾曲の仕方はまったく違っている(黄線で表示)。

2018年レッドブルRB14とRB13の比較


ウイリアムズFW41、ハース-VF18

 レッドブルのマシン同士でも、昨年型とニューマシンでは、その違いは顕著である。


・さらに高く
 サイドポッド周りの設計変更だけではあきたらず、レッドブルの開発エンジニアたちは空力性能向上に向けてさらに先へと突き進んだ。


 フロントサスペンションにも大幅な変更を加えたのである。具体的にはアッパーアームのホイール側ピボットを、より高い位置にずらした(青色矢印)。さらに顕著なのは車体側の取り付け位置で(黄色矢印)、エクステンションを使ってかなり高くしている。

 空力的な観点から、ロワーアームはアッパーアームと平行にする必要がある。そのためロワーアームも同様に位置が高くなり、気流はいっそうスムーズに流れるようになっている。


 さらに前年型と比較すると明らかなように(緑色矢印)、ロワーアームの前後のアームが水平になっている。できるだけ乱流を起こさない工夫である。


・乱流を防ぐ衝立
 RB14のサイドポッドの上側開口部(白点線)は、基部(黄色点線)に比べるとかなり後退している。一方去年のRB13は、上下の位置がほぼ一致していた上に、全体的にかなり前に置かれていた。
 さらにサイドポッド前のバージボードと台形は、ほとんど衝立のようにノーズ両脇を囲っている。これは前輪が起こす乱流が、カウルに沿って流れる気流にできるだけ干渉させないためである。
 そのためバージボードは昨年型の2枚から3枚に(白矢印)、ミニウィングは長さが伸びている(黄色矢印)。一方4枚のパネル(白矢印)は、昨年のメルセデスとフェラーリのいいとこ取りのように見える。


 去年のRB13の写真でメカニックのグローブが掴んでいる、サイドポッドと繋がったデフレクターは、ニューマシンでは単純に水平のミニウィングになっている。


・変更は継続中
 まだこの段階では、去年までのような強いレーキ(マシンリヤの車高が上がった姿勢)を継承しているのか、あるいはホイールベースが伸びているのか(昨年のレッドブルは全マシン中最短だった)、不明である。テスト中の写真では、明らかにかなりの傾斜がついているが。
 ハロによる乱流の影響を減らすためか、エアインテークはより丸くなっている。一方でヘルメットのすぐ後ろにあった開口部は消滅した(ルノーエンジンの冷却効率が、かなり向上したということか)。


 エンジンカウルは昨年型は1枚のパーツが全体を覆っていたのに対し、RB14では何枚かに分割されている。2010年のRB6のように、今後何らかの開口部が加えられることも考えられる。


・ポテンシャルはかなり高そう
 今季全マシンに、360度カメラの搭載が義務づけられた(黄色矢印)。その前方には、Sダクトがはっきり見える(赤矢印)。
 昨年はシーズン序盤のもたつきが、2ヶ月の開発の遅れとなって成績に大きく響いたレッドブル。RB14は例年より早くシェイクダウンしたにも関わらず、その完成度は高いように見える。


 とはいえタイトル争いに最後まで絡むためには、去年苦しんだ車体とパワーユニット双方の信頼性不足を、完全に解消することが絶対条件であろう。



この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています



(Translation:Kunio Shibata)


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