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小松礼雄コラム第17回:ハースF1の今年の強みと弱点。2018年に向けた開発過程

2017年12月18日

 ハースF1チームのチーフエンジニアとして今年で2年目を迎える小松礼雄氏。創設2年目の新興チームであるハースはどのようにF1を戦うのか。現場の現役エンジニアが語る、シーズン終盤のリアルF1と舞台裏──F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムの今季最終回をお届けします。

マシンの良い面、悪い面が出た最終戦アブダビGP
勝負どころの3年目。2018年への課題と理想のチーム像


 最終戦アブダビGPは、良い意味でも悪い意味でも2017年シーズンを象徴するような内容でした。

 温度、路面温度が高かったFP1では、それなりのポジションにつけていたのですが、FP2に入り路面温度が下がってくるとタイヤがうまく使えず、我々のマシンのウインドウの狭さを象徴するようなセッションになってしまいました。

 FP1、FP2で学んだことを基にセットアップに修正をかけ、FP3、予選に挑みましたが、路面状態を考えるとケビン(マグヌッセン)が記録したポジション(14番手)が精一杯だったと思います。今のマシン状態では、それ以上の順位を望むのは厳しかったでしょう。

 レースに関しては、マシン特性から予選よりは戦えると思っていました。ケビンは残念ながら1周目にスピンをしてしまい、どうにもできない展開になってしまいましたが、ロマン(グロージャン)は(ランス)ストロールを抜いた後、想像以上にペースが良かったです。

 ペースが良かったので32周目までウルトラソフトのスティントを延ばしたのですが、スーパーソフトを履いた第2スティントのラップタイムも良かったです。結果的に11位に終わり、ポイントは獲れませんでした。いくら決勝のペースが良くても予選順位があのポジション(16番手)では、やはり入賞圏内には何か前で大きなことが起こらない限り届きません。

 仮に予選11番手からスタートしていれば、十分にポイントを獲得できていたはずですから……そういった意味でも今シーズンの大きな反省点のひとつとして、予選でタイヤを使い切れなかったことが挙げられると思います。

 あらためてシーズン全体を振り返ってみると、アップダウンこそありましたけど、昨年よりポイントを獲得したグランプリが増えたことは良かったと考えています。特に開幕9戦で入賞できなかったのはパワーユニット・トラブルが発生したオーストリアGPとロシアGPだけというのは、すごくポジティブな要素です。

 残念ながらラスト2戦は無得点でしたが、それ以外で2戦連続でポイントを獲得できなかったのはイギリス、ハンガリーGPだけで、あとは2レースに1回は入賞圏内でフィニッシュできていました。特にウチは今シーズンの開発をちょっと早くに終えてしまっていたので後半戦はポイントを獲るのが大変でした。

 それでも最後9レースで4レースでポイントを獲れたのは去年に比べて進歩です。特にレースウイーク中のいろいろな出来事に対処する能力やスピードが上がったことは、大きな前進だと感じています。それでももちろん、まだまだ振れすぎて、これから前に行くためにはかなりの進歩を遂げなければなりません。

 個人的な目標であった50ポイントには3ポイント届きませんでしたが、コンストラクターズ5位以下が熾烈な競争を繰り広げていたことを考えると、この結果は相応だと思います。

 ルノーは中盤から後半にかけて効果的なアップデートを投入していましたが、僕らはシーズンのかなり早い段階でマシン開発の主軸を来シーズンに移行しました(2018年への影響を考慮して)ので競争力は落ちていきました。ルノーくらいのチーム力があれば、最後まで現行マシンの開発を続けていてもそれほど翌シーズンへの影響がないと思いますが、僕らのチーム規模ではまだその影響が大きすぎます。

 ですので、今年の後半を犠牲にしてでも早めに2018年に移行したわけですが、その判断が良かったのか悪かったのかは、来シーズンの結果で判断することになります。

 今後の課題としては、イニシャルセットアップの精度をもっと上げたいです。理想としては、FP1を始める前にほぼ最適化されたマシンを持ち込み、レースウイーク中は路面の変化とタイヤの作動温度領域に関する修正をかけるだけにしたいんです。

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