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2017年F1覆面座談会(3)マクラーレンのお家騒動がホンダの足を引っ張る?

2017年1月10日

 新年恒例の覆面座談会という形でお届けしている毎年恒例の企画。パート3となる今回も、ちょっと毒舌なジャーナリストと、個性的なフォトグラファーがきわどいトークを展開。そのため、彼らの身元を明かすことは難しい。以下に最小限のプロフィールを紹介するのでこれで勘弁してほしい。


A氏:美食と美女には一家言ありの情報通ジェットセッター 
B氏:見た目はラテン系、足とタフさで独自のネタを稼ぐ、プレスセンターの主
C氏:今回初参戦、見た目も心も超体育会系なアート系フォトグラファー


 パート3のテーマは、マクラーレン・ホンダ。F1復帰2年目を終えたホンダの進化と、マクラーレンのお家騒動について辛口に斬っていく。


──マクラーレン・ホンダはF1復帰2年目でようやく結果が出始めたが、ホンダの総責任者が長谷川祐介に代わった影響が大きかった?


A氏「それは間違いない。マクラーレンとの関係性も良くなったしね。とはいえ、16年にそれなりの成績を残せることは、事前にある程度予想がついていた。おそらく、長谷川さんの前任の彼が残っていたとしてもそれなりの成績は挙げられていたはずだよ。マクラーレンとの関係は悪いままだっただろうがね。彼らの本当の問題はシャシーだ。16年の開発も相変わらず停滞していた」

長谷川総責任者と談笑するアロンソ
長谷川総責任者と談笑するアロンソ

C氏「マクラーレンのマシンに対しては、コースサイドで1年間撮影してきて良い意味で印象的なシーンがは無かった。タイヤの温まりが悪くドライバーが苦労しているのは良く分かったが。そういえば、ベルギーではエンジン音が変わっていたな。長谷川さんは『エクゾーストを新しくした』と言っていて、なかなか良いサウンドをしていた」


A氏「そういう質問にもすぐに答える長谷川さんは、我々にウソをつかないし、成績の悪いときでもその理由を説明している。前責任者と比べ、仕事はしやすい相手だね」


C氏「前任の彼も、シーズン後半には話せる相手にはなってきたがね(笑)」

■ロン・デニスのご乱心。チーム内の指揮系統は大混乱

──PUの性能だけでなく、メディアやチームとの関係も改善してきたホンダに対し、マクラーレンのチーム内部は混乱している様子だ。


A氏「そう。長谷川さんの指揮でホンダ側は地道に改善を続けていたんだが、マクラーレン内部の迷走ぶりには拍車がかかっている。ヨースト・カピート(16年9月にマクラーレン・レーシングのCEOに就任)が途中チームに入ってきたけど、彼のパドックでの存在感はゼロに等しかった。なんと、最初は無線の使い方すら分かっていなかったんだ! 結局、チームのあらゆる場所に首を突っ込んで指揮系統を混乱させたロン・デニスと一緒に更迭されてしまった。カピートは何の為にチームに入ったんだか……」


B氏「私は今回のデニス更迭は、デニスとマンスール・オジェ(マクラーレンの共同オーナーでTAGグループの代表)の対立ではなく、じつはジョナサン・ニール(マクラーレンのマネージング・ディレクター)によるクーデターではないかと考えている。あまりにもご乱心なデニスの行動にチーム内が混乱して、チーム内からの『なんとかして、ジョナサン』という声を吸い上げてのものだったと思う。そこでニールがオジェにお願いして、役員会でデニスを失脚させたんじゃないかな。デニス更迭後のアブダビでチームを率先して指揮していたのは、新しくエグゼクティブディレクターに就任したザク・ブラウンではなく、ニールだったからね」


A氏「デニスはもはやマクラーレンのF1チームでの居場所はなかったのに、ホンダのミーティングにも顔を出して、横槍を入れていた。そして、現場監督のエリック・ブーリエ指示すべきことをデニスが行っていた。まさにご乱心というわけだ」

■ホンダのパワーユニットはメルセデスに対抗できるか?

──16年はチーム内の混乱が目立ったようだが、レギュレーションが大きく変わる17年は期待できる?


A氏「パワーユニットに関しては現状で出来ることは最大限トライしていると思うし、問題ないだろう。それよりも、マクラーレンのシャシーの出来にかかっているだろうね。チーム内で権力闘争をしている場合ではない」


──ホンダとしてはトークン制度が廃止されるのため、PUの性能でメルセデスに追いつくチャンスになる。


A氏「技術的には負けてないだろうし、追いつくことは可能だろうね。ただ、マクラーレンにエンジン供給をして勝つだけでは、単なる第2期の二番煎じだという意見もある。実際に、ホンダ内部でも復帰したルノーのようにフルコンストラクターで参戦すべきという声もあるんだが、マクラーレンに供給しなければならない理由があったそうだ」


C氏「それは、過去の栄光を再現せよという声が社内的に大きかったということ?」


A氏「そのようだ。ジャーナリストは、ホンダがマクラーレンに対していろいろと譲歩していることは知っているんだ。それを聞くと情けない気分になる。金銭面も含め、詳しく言うべきではないがね」

マクラーレン・ホンダMP4-31
マクラーレン・ホンダMP4-31

B氏「私の考えでは、パワーユニット単体としてホンダがライバルに追いつくことは簡単じゃないと思っている。トークン制度は廃止されたけど、それ以外のルールは同じ。ということはメルセデスがここまで築いてきたアドバンテージもそのまま生きるということ。それに勝つためには、メルセデスと同じ技術じゃダメだ。ホンダだけが未導入の、TJI(タービュラントジェットイグニション)システムを17年に投入しただけでは勝てない。そもそもだけど、エンジン単体のパワーにおいて、第3期F1活動でもホンダがメルセデスに勝っていた時期はなかったという現実を認めなければ未来はない。シャシーの悪口は、少なくとも、ルノーとフェラーリに勝ってからにしてもらいたいよ」


──そのホンダも、17年の成績次第では2チーム目に供給する可能性もあるようだ。


A氏「ザウバーへ供給する可能性は大いにあるよね」


C氏「その供給先次第で、GP2に参戦している松下信治など、日本人ドライバーがF1に戻ってくる可能性も生まれるね」


B氏「私はザウバーに供給するぐらいなら、無理に2チーム目に出す必要はないと思う。もしザウバーにPUを供給して、ザウバーがマクラーレンより速くなったら、『ほら、問題はPUじゃなく、シャシーだった』と言えるかもしれないけど、それってあまりにレベルが低い話だと思わないか?そんなことを確認するために多額の資金を投じるのはどうかと思う。もし2チーム目に出すのであれば、純粋に結果が望めるチームに絞るべきだ。それが難しいのなら、いまはマクラーレンで結果を出すことに集中すべきだと思う」


 ……16年シーズンに大きく改善したかのように見えたホンダのPUだが、17年にレギュレーションが大きく変わるとはいえ、一気にポジションを上げることは難しそうだ。最終回となるパート4では、その17年にフォーカス。大改革が行われるF1はどうなる?そもそも面白くなるの?という疑問に、辛口に答える。次回もお楽しみに。



(AUTOSPORTweb)


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