「もしQ3に進めたら驚きだよ。なぜなら、僕らは今週、古いエンジンを使うからね。僕は新しいものを持っていないんだ」
これは金曜日のフリー走行後に、フェルナンド・アロンソが地元スペインのテレビ局のインタビューで語った言葉である。そのため、翌日の報道にはこのアロンソのコメントを元に、「ホンダがアロンソのパワーユニットを旧型に戻した」という内容のものもあった。実際、土曜日の予選後にマクラーレンのチームホスピタリティハウスで開かれた「ミート・ザ・チーム」でも、スペイン人記者から「なぜフェルナンドは古いスペックなのか? バトンと何か違うのか?」という質問が長谷川祐介総責任者に飛んだほどである。
アロンソが金曜日から最新スペックを搭載していないことは事実である。しかし、それはアロンソのパワーユニットにアメリカGP後に問題が起きたからというわけでもなく、予定されていたことである。さらに「新しいものを持っていない」という表現も正しくはない。というのも、長谷川総責任者は「土曜日以降も従来スペックの3.0のままで行くか、最新スペックに乗せかえるかどうかは金曜日の夜に決める」と語っていたことでもわかる。
最終的に金曜日に搭載していた従来スペックの3.0のままで予選とレースを戦うことを決めたのは、高地サーキットに合わせた金曜日のパワーユニットのセッティングをそのまま使用できるからである。
では、なぜアロンソはアメリカGPで使用した3.5ではなく、マレーシアGPの土曜日と日曜日に使用した3.0を搭載したのか。それはマイレージの関係だ。
アロンソが最新のスペック3.5を降ろしたのは、第16戦マレーシアGPの金曜日のことである。これは次戦日本GPでペナルティを受けないためでもあった。ただし、その段階で最終戦まではまだ6レースあり、その1基だけで走りきるのは厳しい。そこで、マレーシアGPの土曜日にホンダはアロンソのパワーユニットを3.0のフレッシュエンジンに載せ換えている。その3.0でマレーシアGPを戦い、そして今回メキシコGPに搭載されたのである。