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解説:コクピット保護デバイス採用否決の理由と今後の見通し

2016年7月30日

 FIAのレースディレクター、チャーリー・ホワイティングによると、コクピット保護デバイス「ハロ」の導入が延期された主な理由は視界に関する懸念であり、今後はドライバー全員がこのデバイスをテストできるように計画中だという。


 木曜日に開かれた会合でストラテジーグループは、このデバイスには来年から全面的にF1に導入するには、まだ未完成な部分が多いとして、来季からの採用を否決した。しかし、ホワイティングはこれについて、「さらに2019年以降へ先送りされることは絶対にない」と述べた。


 また、このデバイスを実際にコース上で試したのは、いまのところフェラーリとレッドブルだけで、それもほんの数周にすぎない。その点を考慮して、ストラテジーグループは、正式導入を決める前にドライバー全員にこのデバイスを経験させる必要があるという点で合意した。


 ホワイティングは、今季終了までの全グランプリの週末で、このデバイスをテストする計画を立てることを求め、そのどこかの段階において、各チームがデバイスを装着したクルマで、ひとつのプラクティスセッション全体を走れるようにしたいと語っている。


「すでにルールは用意され、テストも行われてきた。ストラテジーグループとしては、まだドライバーの大半があのデバイスを経験していないことが唯一の気掛かりとなって、同意しきれなかったようだ。それは確かにそうかもしれない。このデバイスを適切な形で導入するには、彼らのインプット(意見や感想)が必要だ」 


「私たちは、スパとモンツァで複数のクルマにデバイスを装着して走らせるという案について、各チームに打診していた。だが、それは導入を2018年まで遅らせることが決まる前の話だった。今後はすべてのサーキットで、そしてすべてのチームがシーズン中のどこかの時点でデバイスを経験できるように、もっと先を見渡した計画を立てたい。また、今年中にすべてのドライバーが、ひとつのフリープラクティス全体を通じてこのデバイスを試せるようにすることを、明確に決めておきたいとも思っている」


「そうしたテストで使われるのは、すべて同じ形状の標準バージョンのハロだ。ただし、それらはダミーであり、実際に製作されるハロそのものではない。すでに図面はチームに提供されているので、実物がどのくらいの大きさで、どのようにマウントすべきか、チームは正確に知っている。ダミーの製作は各チームに任されることになるだろう」

2016年シルバーストンテスト ピエール・ガスリー(レッドブル)がハロをテスト
2016年シルバーストンテスト ピエール・ガスリー(レッドブル)がハロをテスト

 レッドブルのリザーブドライバーで、GP2の選手権リーダーでもあるピエール・ガスリーは、先日シルバーストンで行われたインシーズンテストで、このデバイスを装着したマシンを走らせた。ホワイティングによると、ガスリーの感想は「視界は良好とは言えない」というものだった。


「けれども、彼はたった2周しかしていない。私としては、どのクルマにも装着されるようになれば、ドライバーたちはすぐに慣れてしまうものと予想している」と、ホワイティングは言う。


 これまでのフリープラクティスセッションで、もっと積極的にデバイスのテストができたのではないかとの質問に、彼はこう答えた。「実際にレースをするクルマに、プラクティスだけとはいえ、デバイスの装着を強く求めるのは難しいところがあった。マシンの技術的な問題もあった。たとえば、レッドブルは連続して走れるのは2周までだと言っていた。エンジンとギアボックスの冷却用エアインテークに気流が入りにくくなり、連続走行をするとそれらの温度に影響が出るからだ」
 また、ホワイティングは、現時点での最有力候補は「ハロ」だが、実際に採用される保護デバイスは、ハロとレッドブルが開発したエアロスクリーンの折衷案になる可能性を示唆した。


「現状ではハロだ。ただ、今後何らかの形で、前方から飛来するものへの保護能力を高める必要がある。たとえば、エアロスクリーンのデザインが見直されて、その難点のひとつであるフリーヘッドボリュームが適切なものになれば、そちらを採用する可能性もある。いずれにせよ、私の想像するところでは、欠点を修正していったエアロスクリーンとハロは、結果的によく似たものになると思う」


 ホワイティングによれば、ハロの最大の長所は大きな物体からドライバーを保護できることだが、研究の結果、比較的小さな物体になると17%しか止めることができないことがわかったという。


 この弱点への対策が不十分ではないかとの質問に、彼は次のように答えた。「ホイールは止められるし、大きな物体は止められる。そして、他のクルマにコクピット付近をヒットされた場合や、マシン上面からのタイヤバリアとの接触といった状況でもドライバーを保護できる。にもかかわらず、誰もが100%ドライバーに当たってしまうような小さな物体の問題ばかりを取り上げ、それがハロの導入の妨げになっている」


 いっぽう、フォース・インディアのボブ・ファーンリーは、次のような反対意見を述べている。
「私たちが問題視しているのは、まだ前方から飛来するデブリの83%に対し、ハロは効力がないという点だ。個人的な意見として、17%という数字は十分とは思えない。それに加えて、ほんの2〜3周のインスタレーションラップを走っただけとはいえ、ドライバーが視界の問題を懸念しているという事実もある」


「そうした要素を考えると、フォース・インディアとしてはハロの導入は受け入れられない」



(Translation:Kenji Mizugaki)

この記事は国内独占契約により英 AUTOSPORT.com 提供の情報をもとに作成しています


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