まずホンダはレッドブルに70周年記念GPで2基目のパワーユニットを投入した。それは1基目に問題があったからではなく、「シーズンを通してのパワーユニット使用戦略を考慮したうえでの決定」(田辺豊治F1テクニカルディレクター)だった。今年はレギュレーションでパワーユニットはシーズン中にアップデートできない。しかし、パワーユニットには個体差があり、交換すれば、キャリブレーション(調整)が必要となるが、70周年記念GPではこれもスムーズだった。
このホンダのスムーズな仕事が、70周年記念GPでレッドブルのレースに向けた車体のセットアップにも好影響を与えた。初日のフリー走行2回目で、フェルスタッペンは20人中、最も少ない周回数となる15周で終了していた。それでも、ドライバーは「充実した一日だった」とコメントし、田辺TDも「車体もパワーユニットも、いっさい問題ありませんでした。チームもホンダも今回のレースに向けて準備してきました」と語っていた。つまり、レッドブル・ホンダは金曜日の段階でマシンがレースに向けて、決まっていたわけである。
だからこそ、レッドブル・ホンダはレースを見据えて、Q2でハードでアタックした。もし、ホンダのキャリブレーション作業でもたついていたら、車体のセットアップが遅れ、Q2でハードを履くというリスクは取れなかったかもしれない。
レース後、レッドブルのエンジニアリングルームで行われた。ミーティングではクリスチャン・ホーナー代表がスタッフに向かってありがとうといった後、「ホンダもありがとう」と言ったという。すると、その場にいたフェルスタッペンからも「グッジョブ」と称賛されたという。
もちろん、パワーユニット単体の性能ではホンダはまだメルセデスに差をつけられている。しかし、モータースポーツというのは車体とエンジンのそれぞれの性能の単純な足し算ではない。レッドブルの車体の性能を引き出すために、ドライバビリティの高いパワーユニットを提供するかという点で、今年のホンダは昨年よりも大きく前進している。そのことが結果となって現れたのが、70周年記念GPでの優勝だった。
(Masahiro Owari)