FIAのマックス・モズレー会長は、モンツァで集合したメディアを前に話をした。まず説明したのは、撤回された辞任問題についてだった。
モズレー会長が、前回、グランプリ中に公式記者会見を行ったのは、7月のフランスGPの際だった。そのときモズレーは、任期切れより1年早く10月に会長職を辞任するという発表を行ったばかりで、その件について説明を加えたのだった。しかし、その翌週には、この問題に関して、FIA内部やパドックのあちこちから多くのコメントが出された。その結果、モズレーは説得されて辞任を思いとどまり、任期いっぱいか、場合によってはそれ以上、現職に留まることにしたのだった。
「“実行されなかった辞任”に関していえば、私は完全にその気でいたのだ」と、モズレーは、ジャーナリストらに対して語った。「本当に、もうたくさんだと思っていた――マニ−クールで説明したとおりにね。だが、あれからすぐに――実際、1週間後のイギリスGPまでには――FIAのあらゆる方面から、職に留まるようにというプレッシャーを受けることになった。それは、皆がこの私に留まってほしかったからというよりも――私が言うのも変だが――現実的な後継者が存在しないことが明らかになっていたからだろう。誰が職を引き継ぐか、どのように引き継ぐかということに関しては、かなり議論の応酬があったが、FIAのあらゆる方面から、誰も彼もがこう言い始めたんだ。“どうしても職に留まるべきだ。もし望むなら、2005年には辞任してもいいが、それまでは留まるべきだ。辞職するつもりなら、その前に組織をちゃんとしていくべきだ。その仕事全体を扱える人物が誰もいないことは、まったく明白なのだから”とね。実際、それこそが私の不平の種なのだ。ただもう、仕事が多すぎるということがね。朝9時にオフィスに入ると、晩の6時か7時まで、オフィスを離れることができないんだ。誰だって、そんなプレッシャーにさらされて働くことに、自分の全時間を費やしたくはないと、ある時点で思い始めるものだ。その一方で、そのプレッシャーから解放されれば、あまりにも多くのことが手つかずのまま残ってしまう。それはそれで、本当に嫌なんだ。というわけで、私としては、これから起こるべきことは、新しい組織の整備だと思う。2005年までに、その組織が整えられると思う。私が2005年にまた会長になるか、その時点で引退するか、あるいは再編されたFIAの別の職に就くかは、まだわからない。それはもちろん、そのときになれば決まってくることだ。私は、その組織の中で人々が言うことに、耳を傾けるつもりだ。だが、私がいうべき唯一のことは――ある意味でまったく個人的になってしまって申し訳ないが――大勢の、様々な人たちが強く慰留してくれて、私は本当に嬉しい驚きを感じたということだ。その慰留が、(代役が見つからないからではなく)私自身のためならば嬉しい。だが、彼らに慰留されて、私が留まることが義務であることが明白になった。私と辞任の問題に関しては、そんなところだよ」