かつてジョーダンやジャガーといったF1チームでテクニカルディレクターを務めたゲイリー・アンダーソンが、F1の技術にまつわる疑問に答える特別企画。ウイングをなくしてタイヤにカバーをつけたら、どうなるのか? スチールブレーキはオーバーテイク問題の解決策となる? 7つの疑問とゲイリーによる答えを紹介しよう。
Q:もしF1が、最近マクラーレンが公開したMP4-Xコンセプトのようなタイヤに変更したら、マシンの他の部分の気流が乱れなくなりますよね。それによって、どれだけのドラッグが減少して、ダウンフォースが改善されるでしょうか?
F1マシンの乱気流のうち35%相当は、むきだしのタイヤに由来するものだ。カバーを付けてもそれがゼロになるわけではないが、大幅に減少するだろう。ダウンフォースに関して言えば、影響は受けるものの、それほどではない。F1をよく見てみると、全体的なデザインの哲学は、空力的にタイヤとそれ以外の部分の距離をとるようになっている。マクラーレン、レッドブル、フェラーリは、それぞれ異なる角度でこの課題にアプローチしている。オープンホイールにおける気流の処理は、F1マシンを設計する際に投げかけられる最も難しい問題となる。しかし、まったくネガティブな要素というわけではなく、アドバンテージとして利用することもできる。
Q:もしフロントとリヤ両方のウイングが禁止されたら、どうなりますか?
簡単にいえば、見当もつかない。現在のマシンとは違うものになるだろうが、エンジニアは君と真逆の意見を好むだろう。制約の少ないレギュレーションで自由にすることだ。エイドリアン・ニューエイなどはピットレーンの終点にゴールポストを立て、そこをマシンが通過できればOKみたいな規則を好むだろうと確信を持って言える。学んだ知識を捨ててしまうなんてことはできない。もし市販車のマーケットが1960年代後半に退行して、最高のクルマが1ガロン20マイル(およそ1リットルあたり8.4km)しか走れないオースチン・アレグロになったとしたら、私たちは満足できるかな?