トヨタは、先週へレスで、新しいV8エンジンを初走行させた。公式第3ドライバーのオリビエ・パニスが、3日間に渡るテストで新ユニットの力量をチェックした。トヨタのエンジン責任者であるルカ・マルモリーニと、シャシーのテクニカルディレクターであるマイク・ガスコインが、今回のテストや、2006年用のV8エンジン開発の進行状況、V8がシャシーに与える影響などについて語る。
Q:ルカ、新しいトヨタのV8エンジンには、どれくらい長く取り組んできたのですか?
ルカ・マルモリーニ(以下LM):初めのV8プロトタイプができるまでに、およそ8カ月を要した。エンジンがテストベンチ上で初めて点火されたのは、3月21日だった。いつもならその手のことは覚えていないのだが、ちょうど立春だったし、私たちにとって新しい夜明けでもあったからね!
Q:V10とV8の開発プログラムを並行して進めるのは難しいですか?
LM:私たちには選択の余地はなかったよ。2005年のルールではV10を走らせなくてはならないと決まっているが、2006年3月からは2.4リッターV8でレースをしなくてはならないんだ。もちろん、冬のオフシーズンだけでは新エンジンの開発時間が足りないから、2つのプログラムを並行して進めるしかない。幸いにも、エンジン部門にはそれをするだけのリソースがあるし、エンジニアリングの面からいえば面白いことだ。
Q:来年の開幕に向けて、馬力や回転数の点で、特に達成したい目標がありますか?
LM:V8の回転数を、今年のV8の最高値より少し上まで持って行きたい。パワーの点では、目標は2005年のV10の数値の80%だ。つまり、2006年シーズンの開幕までに、およそ730〜760馬力の値を出したいと思っている。
Q:へレスでのシェイクダウンはどうでしたか?
LM:へレスでの初テストは、非常にうまくいった。興味深い結果だった。テストの最終日に、オリビエ・パニスが1分21秒2のラップタイムを出したんだ。同じマシンのV10バージョンでは1分18秒くらいが普通だ。エンジンを移植したシャシーで200馬力くらい落として慎重に走らせたことを考えると、これはすでにかなり印象的なタイムだよ。オリビエの経験が、非常に役に立つと思う。初日はとてもよかった。エンジンはよく走ったし、副次的な問題をいくつか解決できた。2日目はトラブルがあったが、それも開発の一部だし、3日目にはもっと長い走行を何度か行って作業を進めることができた。
Q:マイク、へレスでは、特別に改造したTF105にV8を搭載して走らせたのですか?
マイク・ガスコイン(以下MG):そうだ。シャシーとエンジンの間にスペーサーを入れて、改造したシャシーを1台用意した。
Q:全体としてデザイン的見地からすると、V8の方がサイズが小さいだけに楽だということはありますか?
MG:よりコンパクトだということは、容積の点で少し自由度が増すということになる。重量配分からいって、どこにエンジンを配置すべきか決めなくてはならないが、ギヤボックスの前か、燃料のためにシャシーの後方に、スペースを増やすことができる。
Q:燃料消費量が低くなることで、燃料タンクのサイズに影響がありますか?
MG:燃費が下がると、もちろん燃料を入れておく場所に余裕が出てくることになるが、本当のところは予選のルール次第だね。燃料を積んで予選を走るのか、積まないで走るのかが問題だ。それによって、作戦もタンクのサイズのようなことも大幅に変わってくるよ。