BARホンダのジェンソン・バトンは、ヨーロッパGPの最終ラップ、コントロールを失ったマクラーレンのキミ・ライコネンに衝突されずに済んで、極めてラッキーだったと認めている。
ちょうどバトンが第1コーナーにターンインしているときだった。1台のシルバーのマシンが彼のリヤウイングすれすれのところを通り過ぎたのを、バトンは一瞬だけ目にした。
ライコネンはレース終盤15周もの間、フラットスポットのできたタイヤに手を焼いていた。その間、タイヤの不調から発生する振動によってサスペンションが甚大なる打撃を受け、ついには破損に至り、マクラーレン車はスピン、ターン1でバリアに激突する結果となった。バトンは以前、似たようなアクシデントに出くわしたことがある。昨年のスパ−フランコルシャンで彼のBAR車のタイヤがバーストし、通りかかったミナルディにクラッシュしたのだ。
「コーナーに進入するまで、キミは視界に入っていなかった」とバトンは打ち明けた。
「(その時)通り過ぎていく彼の姿がミラーに映った」
「ほんの一瞬だけ見えたんだ。次に左のミラーを見た時には、ライコネンはグラベルにいた。巨大なTVスクリーンが目の前にあって、そこでその間一髪の場面を見ることができたよ! かなりぎりぎりだったね。僕に衝突したみたいだった。実際にはぶつかっていないわけだけど。かなりひどい1日だった。でも、最低最悪な1日にもなり得たわけだ。そうだろ?」
BARは2戦出場停止処分明けだったが、バトンにとってはストレスのたまるレースとなった。第1コーナーでウイリアムズのマーク・ウエーバーがマクラーレンのファン‐パブロ・モントーヤにヒットしたことで生じた多重クラッシュをうまくすり抜けたが、その恩恵をこうむることもできなかった。クラッシュを免れ8番手までポジションを上げたものの、グリップ不足のトラブルに見舞われ、チェッカーを受ける際には10番手にまでダウンしていたのだ。
「本当に厳しい1日だった」と、バトンはため息をついた。
「予選13番手から追い上げるのは、決して容易ではなかった。それでも僕らは、ここでいいレースをして順位を上げるんだって、張り切っていたよ」
「スタートを決めて8番手に上がったのに、後続車を寄せつけないようにするので手一杯だった。今日の僕らは、すごく遅かったんだ――。理由は分からない。なぜ他チームにこれほど差をつけられてしまったのかも分からないが、根本的にグリップ不足だった。シケインがまるで可動式のように感じられたよ。おそらくタイヤ選択を間違っていたんだろうが、いずれにしろ、やるべき作業は山積みだ」
「僕らはそれなりに強いと思っていた。テストでのマシンは手応えがあったし、イモラでもそうだった。だが、僕らが空力面で手がけてきた努力すべてが、レース中に望ましいスピードを発揮するためにうまく反映されているとはいえない。すごく変だし、僕らもどうしてなのか本当に分からない。マシンがこんなに遅いはずはないんだ――。本当に妙な状況だよ」