様々なドライバーが「現在のF1は速すぎる」とコメントしているが、その件に関して、フェラーリのテクニカル・ディレクター、ロス・ブラウンは、近々大きなデザイン変更が行われることになるだろうと述べた。
セパンのレース後のコメントで、ドライバーたちから「もっとマシンのスピードを落とした方がいい」という異例のコメントが聞かれた。このことから、F1の宿命ともいうべき問題に注目が集まっている。この件はしばしば、現在のコンコルド協定という壁に解決を阻まれてきているのだが。
ブラウンは、バーレーンGP前の記者会見で、次のように述べた。「チャーリー・ホワイティングを中心とするテクニカル・ワーキンググループに所属している各チームは、現在のマシンパフォーマンスの分析や、あるべき将来についての分析などを進めようとしている。私たちはそれを組織的な方法で行おうとしており、2006年には、スピードを落とすために、マシンデザインにかなり大きな変更が予定されている」
「スピードが、私たちの予期した以上に向上したかどうかということに関しては、判断が難しい。あるドライバーたちがコメントしていることは知っている。タイヤ戦争下では、スピードがどこまで行くのか、いささか予想が難しいものだが、確かに2006年に向けては、全員が満足できる新しいテクニカルパッケージを見出せるように、みなが努力していると思う」
「それは自然ななりゆきだと思う。というのも、十チームに何百人ものエンジニアがいて、常にマシンのスピードを向上させようと頑張っているのだから、定期的にマシンのスピードを変更する必要がある。ちょくちょくスピードを引き下げてやらなくてはならない」
「それは自然ななりゆきだし、私たちはみな賛成して受け入れている。なぜなら、私たちはみな同じ原理、同じルールの下で働いているからだ。それは誰にとっても同じなのだから、マシンのスピードそのものについては、私たちはあまり興味がない。お互いに相手を倒すことに興味があるだけで、スピードそれ自体は、私たちが真に目標とするものではないのだ。私たちは単に、他のチームよりも技術面で優れた仕事をしようとしているだけだ。それが今より5秒遅いマシンであっても、たいした違いはない」
「(それでも)F1には速いマシンが必要だとは思うし、あまりにも遅すぎるマシンでいいとは思わない。私たちはそれを認識しているし、2008年以降は、新しいエンジン規定が実施される。そのエンジン規定が予想できるかどうか、私たちは注目しているところだ。残念ながら、それはF1の他の要因とも絡んできている。コンコルド協定やその手のことにね」
「だが私見では、最良のパッケージは、かなりエンジンパフォーマンスを落とした上で成り立つのではないかと思う。今では誰もが、900馬力に達する勢いだからだ。この(3リッターの)エンジン規定が実施されたときには、最初は700馬力がやっとだった。だから、もう一度そこに戻って、900馬力を取り戻そうとするプロセスを開始するべきなのだと思う」
ウイリアムズF1のサム・マイケルは、ブラウンと同じ記者会見に出席していたが、エンジン規定の変更だけでなく、マシンの他の部分についても見直しが必要だと述べた。
「90年代後半にタイヤに行われた変更――溝を加え、それからフロントタイヤにさらに溝を加えたこと――それによって、タイヤはご覧の通り溝だらけになった。それは明らかにラップタイムに影響を及ぼした。現在はその違いは注目されていないが」
「もしタイヤ会社がスリックタイヤの開発を許されれば、ラップタイムは間違いなく、また1秒か2秒は上がるだろう。それもまた、考慮すべき点かもしれない。溝にしろ、コンパウンドのレベルに何らかの規制を加えることにしろ、かなり難しい。特に、タイヤ戦争のまっただ中とあってはね。タイヤサプライヤーがひとつだけなら、とても簡単だ。単に硬いコンパウンドを作ればいいんだから。だが、彼らも、私たちと同じような仕事をしているんだ」