ジャック・ビルヌーブのイギリスGPは、ピットストップでのミスによってぶち壊しになってしまったと言えるかもしれない。彼はピットアウトのタイミングを誤り、ピットクルーの足を轢いてしまったのだ。その後、さらにデイビッド・クルサードをパスした際にはノーズを破損したが、度重なるフラストレーションにもかかわらず、レースそのものは楽しかったという。
ビルヌーブは問題のピットストップでおよそ10秒を失い、序盤に順位を争ったクルサードに先行を許しながら、アビー・シケインで彼に大胆なオーバーテイクを仕掛けて見事に抜き返した。しかし、そのアタックは結果的には高くついた。ノーズ交換のため最終的には14位でフィニッシュすることになったのだ。
「オーバーテイクが決まるなんて滅多にないことだから、僕はあれをうまくやりとげたことに満足している」と、微笑むビルヌーブ。「ギリギリまでブレーキを遅らせて、なんとか曲がることができた。だけど、デイビッドを抜いた後でラインがはらみ、フロントウイングの一部を縁石に引っかけて壊してしまった。それで第2スティントは台無しになったよ。次のピットストップでノーズを交換して、ハンドリングは良くなったけど、もうその時点で僕のレースは事実上終わっていた」
信じられないことに、ジャックがレース中にピットでノーズを交換するのは、今年すでにこれが3度目だ。最初はモナコのサン・デボーテでのアクシデント、そしてカナダではレースの1周目に佐藤琢磨と接触している。
ピットストップでのミスも、すでに亀裂が生じているとされるチームとの関係をさらに悪化させる原因になりかねないところだが、皮肉なことに、レースそのものは今年に入ってから彼の最も印象的なレースのひとつになった。幸い足を轢かれた給油係にもケガはなかった。
「もう少しでピット作業が終わるというころに、レッドブルのクルーがピットストップの準備を始めた。僕は一瞬そっちを見た後、自分のロリポップに視線を戻した。そして、ちょうどその瞬間にロリポップが裏返った。それは本当ならギヤを入れろという意味なんだけど、僕はそのロリポップの動きを見たと同時になぜかクラッチを離してしまったんだ」
「もちろん僕はすぐにブレーキを踏んだ。だけど、まさにそのとき、僕のクルマのホイールのひとつが給油係の足の上にあった。彼らはクルマを押してバックさせようとしたけど、僕の足はまだブレーキを踏んだままだった。ドライビングそのものは楽しかったよ。ただ、あんなふうに下位を争っていて、しかもピットストップでミスをしてしまうのは、あんまり愉快なことではないね」
シルバーストンでポイント圏内をうかがうことすらできなかったビルヌーブは、次のドイツとハンガリーのレースではパフォーマンスが改善されることを期待している。
「今年、僕のクルマは高速コースよりも低速コースで速いようだ。次の2レースはイケるはずだよ。ドイツとハンガリーは低速のコーナーばかりだからね」