コスワース・レーシングは、F1史上最も成功したエンジンであるDFVを再製造すると発表した。
コスワースの創始者、キース・ダックワースが1966年に考案したDFV(Double Four Valveの略)は、エンジンデザインにおいて、画期的な飛躍をなしとげた。ダックワースは、エンジンに関するあらゆる分野を一から検討し、それぞれの挑戦について理想的な解決法となるデザインをした。その結果、ライバルと比較して非常に軽量なだけでなく、最初から素晴らしいパワーとドライバビリティを発揮するエンジンとなった。
しかし、革新的だったのは、パワーユニット自体だけではなかった。DFVは、F1でレースカーの構造の一部となった最初のエンジンだったのだ。それにより、従来エンジンをマシンの中に保持していた構造と枠組みが不要となって、マシン全体が非常に軽量化された。
コスワースはフォードに権限を与えられて、1966年に5基のDFVを開発・供給した。最初のエンジンは、1967年のオランダGPの前にロータスチームに納入され、このGPではジム・クラークが即座に勝利を挙げてみせた。このエンジンはF1でさらに154勝を挙げ、その後、これから派生した様々なエンジンがアメリカのインディカーやチャンプカーのレースで使われた。
最近、コスワース・レーシングが積極的にサポートしているサラブレッド・グランプリ選手権のようなクラシックレースで、このエンジンは新たな人生を与えられている。コスワース・レーシングが、DFVの心臓部のコンポーネントを再製造することにしたのは、現在も続くこのエンジンの需要に応えるためだ。
再製造されるコンポーネントのベースとなるのは、1980年代後半のF3000型のDFVで、ショートストローク、トールサンプのデザインだ。これは、今日、様々なところで最も使用されているスペックである。シリンダーブロックは、サンプ・アッセンブリーとフロントカバーつきで供給され、一方シリンダーヘッドは、バルブシートとガイドつきで供給される。
シリンダーブロック、ヘッド、サンプ、フロントカバーはすべて、春の終わりか初夏ころには入手できるようになる。
エンジンの製造には2つの選択肢が考えられる。まず、DFVエンジンのオーナーは、すでに所有しているエンジンの内部コンポーネント(クランクシャフトやコネクティングロッドなど)を使用して、ピストンをコスワースが新たに製造するものと交換することができる。あるいは、内部コンポーネントを様々な供給源から入手し、交換用のピストンはコスワースから入手するという方法もある。
ブロック・アッセンブリーとシリンダーヘッドの価格はまだ決定していないが、エンジンそれ自体と同じくらい競争力のあるものとなると予想されている。完成したコンポーネントは、2004年5月か6月には入手可能となるはずだ。最終的な価格や出荷日時については、今後明らかになる見込みである。