F1速報

  • 会員登録
  • ログイン

今宮純の決勝インプレッション:ロシアン・ルーレットを逃れた、王者と若手「匠の技」

2016年5月2日

 究極の運だめし、ロシアン・ルーレット。拳銃に一発だけ弾丸が入れられていて、それを引き当てたら一巻の終わり──映画や小説に出てくる話だ。


 第3回ロシアGP、まさに1コーナーはロシアン・ルーレットだった。ニコ・ロズベルグはポールポジションからクリーンなスタートを決めると、しっかりインサイドラインをブロック。後続がスリップストリームを使う前にセンターラインへ転じ、最適ポジションから最適なブレーキングを行った。タイヤロックはなく、とても落ち着いているように見えた。昨年と全然違うぞ、ロズベルグ。まわりがよく見えているポイントリーダーはキモの1コーナーを、きっちり自分のものにした。


 今年は開幕からスタート後の最初のコーナーが鬼門だ。きれいに抜けられれば自分の走りができる。3連勝中のロズベルグは、それを見抜いて実行。後方でロシアの“魚雷”ダニール・クビアトが好スタートを切ったセバスチャン・ベッテルに追突。狭まる2コーナーで気がはやった。これはペナルティ対象になってもしかたない。だが、その直後3コーナーでの二次追突はクビアトだけを責められないのではないか。明らかにベッテルがアクセルを緩めているのがオンボード画面でわかるからだ。しかしエマニュエル・ピロ審査委員は最初の追突を重んじてクビアトに罰を下す。


 ロシアン・ルーレットで不運を引いたのはベッテル。他にもニコ・ヒュルケンベルグとリオ・ハリアントが、たった1000メートルで第4戦を終えることに。彼らだけでなくクビアトもダニエル・リカルドもピットインを強いられ、マーカス・エリクソン、セルジオ・ペレス、エステバン・グティエレスもハズレ……。


 “ビンゴ”を得たのは、そう、10番グリッドからパワーユニット交換作業の末にスタートしたルイス・ハミルトンだ。さらに14番グリッドからのフェルナンド・アロンソと17番手からのケビン・マグヌッセン。1周目に5位、7位、10位まで上がった3人の危機回避プレーは秀逸。国際共同映像では、はっきりとらえていないが、とっさに1コーナー入口でアウトサイドラインに進路を取って回避している。


 この瞬間状況判断力は正しい。とくにハミルトンとアロンソは減速することなく、広いエスケープを使い、加速している。通常であれば「コース外の走行プレー」は審議対象になっても、危機回避するためのアウトサイド走行は、なりにくい。さすがチャンピオンの技だ。これでハミルトンは5台を抜き、アロンソも一気に入賞圏内レースを可能にし、ルノーのマグヌッセンも千載一遇のポイントチャンスを得た。


 今年のロシアGPは1ストップが見え見えだっただけに“アンダーカット”や“オーバーカット”の戦略よりも1コーナーのポジション攻防で、ほとんどすべてが決した。その意味において鮮やかに先頭を奪い、F1完全試合(グランドスラム)を決めたロズベルグのレースは傑出していた。「また楽勝かよ」と言われるかもしれないが、そうではない、無敵状態のときに、無敵の勝ち方を彼はやりきったのだ。43点リードは巨大で、ハミルトンが自力優勝を重ねたとしても、逆転するには7月の第11戦ハンガリーGPまでかかる。頭脳派タイプのニコは計算できているはずだ。


 通算18勝のロズベルグは、キミ・ライコネンとミカ・ハッキネンの20勝に近づき、7連勝はミハエル・シューマッハーやアルベルト・アスカリに並ぶところまできた。メルセデス・チームは昨年から10連勝。1988年マクラーレン・ホンダ11連勝に、あとひとつ。孤高の1950年代フェラーリ14連勝も見えてきた。歴史を塗り変える『開運ロズベルグ』を、いま目撃しているのかもしれない。


ニコ・ロズベルグ



(Text : Jun Imamiya)




レース

6/21(金) フリー走行1回目 結果 / レポート
フリー走行2回目 結果 / レポート
6/22(土) フリー走行3回目 結果 / レポート
予選 結果 / レポート
6/23(日) 決勝 結果 / レポート


ドライバーズランキング

※スペインGP終了時点
1位マックス・フェルスタッペン219
2位ランド・ノリス150
3位シャルル・ルクレール148
4位カルロス・サインツ116
5位セルジオ・ペレス111
6位オスカー・ピアストリ87
7位ジョージ・ラッセル81
8位ルイス・ハミルトン70
9位フェルナンド・アロンソ41
10位角田裕毅19

チームランキング

※スペインGP終了時点
1位オラクル・レッドブル・レーシング330
2位スクーデリア・フェラーリ270
3位マクラーレン・フォーミュラ1チーム237
4位メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チーム151
5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム58
6位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム28
7位BWTアルピーヌF1チーム8
8位マネーグラム・ハースF1チーム7
9位ウイリアムズ・レーシング2
10位ステークF1チーム・キック・ザウバー0

レースカレンダー

2024年F1カレンダー
第10戦スペインGP 6/23
第11戦オーストリアGP 6/30
第12戦イギリスGP 7/7
第13戦ハンガリーGP 7/21
第14戦ベルギーGP 7/28
  • 最新刊
  • F1速報

    Vol.6 第7戦エミリア・ロマーニャGP & 第8戦モナコGP & 第9戦カナダGP号