ミナルディF1チーム代表のポール・ストッダート氏は常にニュースの見出しに登場しているが、モータースポーツの世界にもうひとり、ストッダートという人物がいる。もっと見た目が美しく、顔に髭も生えていない。今年英国F3に参戦するスージー・ストッダートというスコットランド出身女性ドライバーだ。
昨シーズン、スージー・ストッダートは英国フォーミュラ・ルノー・シリーズに参戦していた。同シリーズは、自分の実力を証明しようとするドライバーたちにとって、ステップアップのための踏み石になっている。スージーは、成功したカートでのキャリアの後、直接このカテゴリーに加わり何年も過ごしていた。
「私はとても小さい頃にカートを始めたの。あらゆるランクを通り、その全てで成功してきたわ。レースで勝つまでは上のランクに上がることはしなかったけれど、私はうまくやってグリッドの前方に出られるようになり、表彰台を獲得できたの」と、スージーはこれまでのキャリアについて説明した。
2005年、ストッダートはアラン・ドッキング・レーシングからレースに出場する。このチームはかつて、マーク・ウエーバーやアンディー・プリオール、マルコス・アンブローズ、ハインツ−ハラルド・フレンツェン、ミカ・サロらを送り出してきたチームだ。
「素晴らしいことになりそう」と、スージーは、シルバーストンでクラッシュネット・ラジオに対して語った。
「1月にアラン・ドッキング・レーシングと契約を結んだので、マシンが手に入るのが少し遅れて走行タイムは少し下の方になっているけれど、もちろんテストをしてマシンを開発しているし、見通しは明るいわ」
モータースポーツの世界を見回しても女性ドライバーはあまり多くない。それはなぜだと思うか、スージーに尋ねてみた。
「モータースポーツのトップレベルに女性があまり見あたらないのには、たくさんの理由があると思う。そういうロールモデルがない、というのが大きいでしょう。モータースポーツの世界で成功して、女の子たちにやればできるんだということを示すような、ロールモデルとなる女性がいないのよ。もちろん、私がその第1号になろうと思っているけれど。私の目標は、F1で成功する初のイギリス人女性になることよ」
真のレーシングドライバーらしい発言だ。
「男の子たちの中に入っていって、自分の力を証明し、男の世界の中で、最終的には自分が女の子であることを忘れなくちゃならないと思う」
モータースポーツの世界には少女たちのロールモデルとなる存在がいないと考えているスージーだが、自分にはロールモデルがいたのだという。
「エレン・マッカーサーはヨット競技の世界を切り開いたわ。エレンがヨット競技でしたことを、私はモータースポーツでやりたいの――モータースポーツを女性にとって開かれたものにしたいのよ」と、スージーは語る。
ではピットレーンで“ただの女の子”でいることは普通とどう違うのだろうか。
「もちろん、私はかなりメディアの注目を集めているけれど、それはただ私が女の子だからというわけじゃなくて、私がモータースポーツに新しい地平を開きつつある女の子だからなんだと思いたいわ。ヘルメットを着けてしまえば、自分は他人と違うなどとは考えない。私は長年そうしてきて、私も男の子たちのひとりに過ぎないの。コース上では男の子たちのひとりですらなくて、単にひとりのレーシングドライバーよ」
「このスポーツ全体、特にF1はもっと違った風になれると思う。女性がいていいし、そういう違った要素が今の体制を少し揺さぶってもいいと思うのよ」
彼女は、ミナルディ代表の向こうを張るつもりなのだろうか?